“無差別級”の頂点に挑むジュニアの王者・高橋ヒロムの熱い想いと、思い出す29年前の名勝負
「レスリングどんたく2023」(5月3日、福岡国際センター)で、IWGPジュニアヘビー級王者として、同世界ヘビー級王者・SANADAに挑戦する高橋ヒロムの勢いが止まらない。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.141】
「レスリングどんたく2023」(5月3日、福岡国際センター)で、IWGPジュニアヘビー級王者として、同世界ヘビー級王者・SANADAに挑戦する高橋ヒロムの勢いが止まらない。
ヒロムは4・8両国決戦でオカダ・カズチカからIWGP世界ヘビー級王座を奪ったSANADAに、いの一番にかみついている。「新しい景色を見せた」SANADAと祝福するJust 5 Guysの面々の間に割って入り「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(L.I.J)を抜けて正解でしたね。俺に挑戦させてください」と新王者に迫った。
ヒロムとSANADAはL.I.Jの盟友だったが、SANADAはJust 5 Guysに加入することで活路を見出した。ヒロムは「ともに過ごした日々は濃かった。距離感が心地よい人だった。もっと話したかった」と、L.I.Jでの交流を振り返っている。
SANADAの決断を尊重するがゆえに、ヒロムはSANADAから出された条件「金丸義信とのジュニア王座防衛戦」(4・27広島サンプラザホール)を承諾し、5・3決戦でのヘビー級王座戦を確定させた。
ジュニア王者とヘビー級王者の対戦といえば、獣神サンダー・ライガーと橋本真也の激突(1994年2月24日、東京・日本武道館)が思い出される。鍛え上げられた上半身をむき出しにしたライガーが、パワーでもヘビー級王者に一歩も引かないファイトを展開。橋本の重いキックを耐え抜き、ライガーボムで叩きつけ、雪崩式フランケンシュタイナーで翻弄し、ジャーマンスープレックスで投げ捨てた。タイトル戦ではなかったが、盛り上がる「無差別級決戦」に、会場は興奮のるつぼ。ジュニア戦士のレベルの高さを披露し、日本プロレス史に語り継がれる好勝負だった。
ヒロムもSANADAもテクニックで相手を転がすファイトスタイル。パワー殺法を得意としていたライガーと橋本の一戦とは、ひと味違った戦い模様になるはず。2人の頭脳戦、相手を絡め取る戦略の仕掛け合い…もはやワクワクが止まらない。
ヒロムは、もちねこのぬいぐるみを抱いて入場してきたり、スケッチブックにイラストや言葉を書き込み持参したり、テーピングに様々な思いを記したり、自らデザインしたサイケデリックなコスチューム同様、独特のアピールでファンを楽しませている。
ライガーに勝るとも劣らないほどジュニアの闘いに誇りを持っており、3月1日には「ジュニア夢の祭典ALL STAR Jr. FESTIVAL 2023」(後楽園ホール)開催に尽力。多くの団体から50人を超えるジュニア戦士が集い、それこそジュニア界の新しい景色を見せてくれた。
「ジュニア最高!」とヒロムはもちろん、プラチナチケットをゲットし後楽園ホールに詰め掛けた観客、配信で見届けた世界中のファンを熱狂させた。そして夢の続き、米国始め世界各地でジュニアの祭典のゴングが期待されている。
人気も高く、アイコンにヒロムの写真を使うファンや、愛犬に「ヒロム」と名付けてかわいがる人、赤ちゃんが生まれたら「広夢」とつけると決めている新婚夫婦もいる。
また超常現象やアニメ好きとしても知られ、自らも作品を発表するなど多彩な才能を誇っている。
「ジュニア王者としてヘビー級のベルトを巻く」ことを追い求めてきたヒロムの悲願が達成されるのか。もはや待ちきれない。