小学生向け計算ドリルが“異例の大ヒット” ビジネスパーソンをも惹きつける理由とは?
小学生向けの参考書が異例のヒットとなっている。計算ドリル『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社)だ。わずか発売4か月で30万部を突破した。小学生だけでなく、ビジネスパーソンら大人も購入しているという同書は、なぜここまで売れているのか。担当編集者に話を聞いた。
担当編集者・吉田瑞希さんにヒット背景を聞く
小学生向けの参考書が異例のヒットとなっている。計算ドリル『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社)だ。わずか発売4か月で30万部を突破した。小学生だけでなく、ビジネスパーソンら大人も購入しているという同書は、なぜここまで売れているのか。担当編集者に話を聞いた。(取材・文=中村智弘)
本が売れない時代、5万部売れればヒットと言われるが、同書は発売から1か月もたたないうちに5万部を突破。そこから売れ続け、発売4か月で32万部に到達した。著書は東京大卒のプロ算数講師の小杉拓也さん。これまで、何冊もの参考書を手掛けてきたが、今回の売れ行きには、ただただ驚いているという。
同書はタイトルの通り、きちんと取り組めば1日で、2ケタ(19×19まで)の掛け算が瞬時に答えられるようになるという。最初は簡単な足し算から始まり、スモールステップを積み重ね、最終的に2ケタの掛け算ができる構成となっている。脳トレの要素もあり、大人の興味を惹き、幅広い世代に広がった。担当編集者の吉田瑞希さんはこう話す。
「はじめは学習参考書の棚に置かれていたのですが、営業部が『幅広い層に受け入れられるのでは』と話題書のコーナーにも戦略的に展開してくれたんです。書店さんもそれを後押してくれた。最初はメディアに注目されず、インフルエンサーが紹介してくれたわけでもない。“書店発のヒット”なんです」
吉田さんが参考書を手掛けるのは今回が初めて。まずは書店に通い、参考書コーナーを観察。親子がどのように参考書を買うかを研究した。子どもが「これ欲しい」と言って本を差し出したとき、母親が特に中身を確認せずに、「じゃあ、買うね」と言って購入した光景が印象に残ったという。
「なるべく子どもが手に取りやすいようにカバーを工夫しました。子どもが喜べるように『自慢できちゃう!』や『かっこいい!』などの文言を入れたんです。タイトルは少し長かったのですが、一目見てわかりやすいのがいいと思い、これにしました」
読者からは「試したら本当に1日でできた」「自己肯定感が高まった」などの声が届いている。中には、小学生の孫がいる高齢の世代もいて、「孫にプレゼントしたい」「自分が教えたい」「ボケ防止になる」などと連絡がくることもあるという。
「私が特にうれしかったのは、小学生のお子さんがいるお母さんからの声ですね。日中に買って、お子さんがすぐに計算をできるようになったらしいんです。お子さんもものすごく喜んで、お父さんが帰ってきたら、ドヤ顔して教えてあげていたそうです」
計算ドリルとしての要素だけでなく、家族のコミュニケーションを促してくれる本にもなっているようだ。