オーディション経て名作に出演 グループ解散で再起の浜浦彩乃「9年前の衝撃を超えたい」

アイドルグループ・こぶしファクトリーの元メンバーで俳優の浜浦彩乃が、ミュージカル『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』に出演する。かつてハロプロの先輩たちも演じ、9年ぶりに上演されるこの作品で、浜浦はオーディションで役を勝ち取った。初日は4月15日(東京・サンシャイン劇場)。稽古中の彼女に、本番への心意気と俳優業に懸ける気持ちを聞いた。

ミュージカル『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』に出演する浜浦彩乃【写真:ENCOUNT編集部】
ミュージカル『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』に出演する浜浦彩乃【写真:ENCOUNT編集部】

こぶしファクトリーの元メンバー、浜浦彩乃

 アイドルグループ・こぶしファクトリーの元メンバーで俳優の浜浦彩乃が、ミュージカル『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』に出演する。かつてハロプロの先輩たちも演じ、9年ぶりに上演されるこの作品で、浜浦はオーディションで役を勝ち取った。初日は4月15日(東京・サンシャイン劇場)。稽古中の彼女に、本番への心意気と俳優業に懸ける気持ちを聞いた。(取材、文=大宮高史)

「オーディション会場で歌や芝居ができる子をたくさん見てしまったので、負けず嫌いな私なのにあまり自信がなくなってしまって……(笑)。でも、結果をいただいて選ばれたからには、スノウを志望してくれた方々の分まで、『私でよかった』と評価していただけるものを見せないとですね」

『新約LILIUM』は、吸血鬼の種族『ヴァンプ』の少女が暮らすサナトリウムを舞台にした幻想的な作品。ヴァンプを主人公にした劇作家の末満健一氏によるミュージカル『TRUMP』シリーズの1作で、2014年の初演時はモーニング娘。とスマイレージ(現アンジュルム)のメンバーにより上演された。ダブル主演の鞘師里保(リリー役)と和田彩花(スノウ役)を中心に、若いキャストの熱演と急展開する脚本、TRUMPシリーズの他の作品とも絡み合った伏線が大きな反響を呼び、今でもファンが多い。

「3年前の春にこぶしファクトリーが解散してから、舞台では天真爛漫な役やおバカな役もいただいてきたのですが、あえて元気いっぱいな私のイメージと正反対のスノウに挑みたいなと決めました。初演で(当時スマイレージの)和田さんが演じてらっしゃった時から、はかなげで消えてしまいそうなイメージの少女なので、まず、雰囲気作りがすごく大切です。個性の強いキャラクターが多い中で、『セリフまわしの表現だけで印象に残る役作りをしなければ』と稽古している日々です」

 キャストの大半が10代だった前回と異なり、オーディションで集まった俳優陣は経歴もさまざまで、初日までの約1か月でゼロから舞台を作っていく。スタッフとキャスト一同で、TRUMPシリーズの美麗な世界観と、ファンの期待に応えようとボルテージが上がっているところだいう。

「9年前に初演を観た時はとにかく衝撃的だった記憶しかなくて。それから改めてTRUMPシリーズを研究して、物語の深さを理解できるようになったので、シーンの解釈ひとつにも昔より深く考え込むようになりました。初演の皆さんは10代ならではの全力の舞台で、あのメンバーだから出せる無邪気さや一体感があったと思いますが、私たちもそれぞれの役作りをアウトプットし合っていくうちにチーム感ができてきて。そこに末満さんの演出指導が入ると、皆オーダーに応えなきゃと食らいついていくので、稽古場の温度が本当に上がっていく感覚すらあります」

 こぶしファクトリー時代も歌、ダンスのスキルを高めていたが、今はミュージカルゆえの歌唱法をキャスト同士で高め合っている。

「オーディションでは上手く歌うよりも、ボイトレの先生に言われた気持ちを歌に乗せることを意識しました。ミュージカル色が強いというか、セリフも歌に乗せて進行していくシーンが多いですね。ファルス役の大森未来衣ちゃんと稽古で仲良くなって、本舞台でも接点のある役なので、少年役を演じる彼女のためにも稽古場で盛んにフィードバックし合っています」

 ドラマや映画好きで、作品に影響されやすいタイプだという。11歳でハロプロエッグに入り、少しずつ幼い頃からの夢だった演技の道に近づいてきた。

「好きな作品には没頭しがちで、格好よく描かれている職業の人になりたいとすぐ思っちゃうような子どもでした。そういったキラキラを見せてくれる俳優になることが大きな夢だったんですが、それにはまず芸能のお仕事を一から経験しなければとも思い、ハロプロ好きな母の影響もあって、ハロプロエッグに応募して選んでいただきました。それからこぶしファクトリーとして、音楽活動だけでなく舞台にも出させていただきましたが、演技のお仕事を通じて自分と違う人の人生になりきるってすごく楽しいと思えます。このお仕事ならではですし、役で演じる人物の人生を考えるのも好きなんです」

 役の人物になりきる楽しさは、ハロプロメンバーに演じた舞台でより実感するようになったという。

「こぶしファクトリーとBEYOOOOONDSのメンバーで演じた『リボーン~13人の魂は神様の夢を見る~』(19年)という舞台で、生まれてすぐ死んでしまった女の子から、生まれ変わって手塚治虫さんになったりと、1人で何役も演じるような経験をしました。命や人生についてすごく考えさせられた舞台です。これをきっかけにお芝居そのものの楽しさだけでなく、役を生きるというか、擬似的に違う人生を生きる面白さが加わったかなと思います」

 憧れの脚本家は坂元裕二氏。『東京ラブストーリー』『カルテット』『花束みたいな恋をした』などを手掛けたヒットメーカーだ。「坂元さんの作品って、言葉選びのセンスがすごくオシャレで好きなんです。私もいつかこういうセリフをいただければなって思いますし、出演されている方々も憧れですね」と言葉に力を込める。そして、『新約LILIUM』の稽古と並行して、長崎・対馬を舞台にした社会派映画『TSUSHIMA』にもオーディションを経て出演。初めて特殊メークに挑む映画のロケも始まっている。多彩な役に没頭してなりきること自体がモチベーションになっている彼女は、人気作品の再演という重荷もエネルギーにしてしまう。

「(舞台作品は)初演が全てではないですし、別物として見ていただけるくらい表現に磨きをかけていかなければと思いますが、プレッシャーにかえって後押ししてもらっていますね。やっぱり、負けず嫌いなので、今年15周年でもあるTRUMPシリーズのファンの皆さんの期待に応えつつ、9年前の衝撃を超える舞台をお見せします!」

 まだ22歳。俳優として飛躍するべく、浜浦の気力はみなぎっている。

□浜浦彩乃(はまうら・あやの) 2000年4月26日、埼玉県生まれ。11年にハロプロエッグに加入し、15年にこぶしファクトリーとしてメジャーデビュー。20年3月の同グループ解散後は、俳優として舞台を中心に活動中。今年4月~5月に東京・大阪で上演の『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』にはスノウ役で出演。

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