自動車盗難、検挙率「45.6%」の衝撃 岸田首相が対策強化「政府として考えたい」 歴史的一歩か
ついに国が動くのか。なかなか減らない自動車盗難の防止について、3日に開かれた参議院の決算委員会で歴史的な一歩が刻まれた。車両盗難の防止対策の強化を求めた国民民主党の浜口誠議員に対し、岸田首相が「具体的にどういった体制を取るべきなのか、政府として考えたい」と明言。罰則の強化を含め、自動車盗難防止に本腰を入れる意向を示した。昨年12月、浜口議員と関係省庁を回った車両盗難厳罰化推進の会は「かなり大きな一歩」とこれを歓迎している。
被害者多数…年間5700件を超える自動車盗難が発生
ついに国が動くのか。なかなか減らない自動車盗難の防止について、3日に開かれた参議院の決算委員会で歴史的な一歩が刻まれた。車両盗難の防止対策の強化を求めた国民民主党の浜口誠議員に対し、岸田首相が「具体的にどういった体制を取るべきなのか、政府として考えたい」と明言。罰則の強化を含め、自動車盗難防止に本腰を入れる意向を示した。昨年12月、浜口議員と関係省庁を回った車両盗難厳罰化推進の会は「かなり大きな一歩」とこれを歓迎している。
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元トヨタ自動車社員の浜口議員は、車両盗難の現状について、資料を使って丁寧に報告した。
「年間で5700件を超える自動車盗難が発生しております。また、300万円を超える高い車の盗難も増えております。全体の3分1が300万を超えている。ここ数年、その比率も2倍以上に増えている。こういう実態です。また、検挙率も殺人とか強盗とか9割を超える検挙率になっていますが、自動車盗難は45.6%と大変検挙率が低い」
そして、「よくある盗難のパターンは、盗難された車が県をまたいで移動させられて、違法なヤードに持ち込まれて、そこで数日のうちに解体されて、部品が売買されたり、不正に輸出されるケースが多い。実際に警察のみなさんが初動でしっかり対応する、捜査体制の強化は大前提ですけど、それだけでは不十分なんですね。違法なヤードをしっかり取り締まっていく。盗難された車が流通されないように阻止していく。不正に輸出されないようにちゃんと防止していく。さらには盗難された車の車体番号、エンジン番号といった情報を速やかに共有化していく。そして海外に持ち出された盗難車を速やかに日本に戻す回復支援。そして盗難防止につながるような装置の開発、こういったことを総合的に対策を講じていかなければ自動車盗難は減りません」と訴えた。
さらに、「実際に自動車盗難に遭った当事者のみなさんから聞いていると、盗難された車の件で警察が駆け付けてくれて、すぐに動いてくれるのかと思ったら、盗難されたご本人に対して『基本的に出てこないので諦めてください』。こういうことを警察の方から言われて大変ショックだったと。あとGPS機能がついていて、そのGPSを追っていけば盗難された車がどこにあるか分かるんですけど、その情報を提供したにもかかわらず、『すぐには動けません』と言われて、ご本人が自らその情報をもとに盗難車があるヤードを見つけて、その前まで行ったんですけど、ヤードの中は入れないので警察も手が出せない。こういった実態があるんです。こういうところをしっかり取り組んでいかないと自動車盗難はこれ以上減っていかないと思います。総理ぜひ、関係省庁に自動車盗難の防止対策の強化、指示をしていただけませんか?」と岸田首相に見解を求めた。
岸田首相は、「まず現状、法務大臣や国家公安委員長から答弁させていただいた通り、自動車盗難について関係機関が連携し、盗難防止対策を推進するとともに被疑者の早期検挙を図るなど厳正な対処に努めていると承知をしておりますが、今、具体的な例のご指摘がありました。そして海外に流出した際の対応、それについてもご指摘がありました。そういったご指摘を踏まえると、う~ん…、より幅広い関係省庁が連携していくことの必要性も感じます」と、思案した様子で受け止めた。
そして資料から目を離し、自身の言葉で続ける。「もとより、関係省庁において緊密に連携を図っているところではありますが、現実に対応する際にどう範囲の関係省庁が連携していくことが必要であるかなど、現実をしっかり踏まえた対応が求められるんだと思います。そういった観点から政府の関係省庁の連携のあり方についても考えながら、さらには官民一体となった、この自動車盗難対策について取り組んでいく、こういった必要性は感じます。具体的にどういった体制を取るべきなのか、政府として考えたいと思います」。浜口議員の主張に理解を示し、今後国として対応を協議していく姿勢を見せた。
盗難の多い車種の公表 現行5車種→20車種を求める
自動車盗難についての浜口議員と閣僚とのやり取りは、時間にして約12分に及んだ。
罰則強化については、浜口議員が「現行の窃盗罪については10年以下の懲役、または50万円以下の罰金というのが罰則なのですが、これをさらに厳罰化してほしい」と問いただした。斎藤健法相は、再犯では罰則が強化されることを前提に「現行法においても相応に重い処罰が可能であります」と説明したが、一方で、「悪質な自動車窃盗に対して厳正な処罰が必要なことはご指摘の通りであります」とうなずいた。
また、浜口議員は「自動車盗難の情報公開が少ないです。盗難の多い車種は5車種ぐらいしか公表されておりません。もっと20車種ぐらいしっかり情報を出して、『あ、こういう車が狙われやすいんだ』ということを国民のみなさんが知っていただければ、より防犯意識も高まって、対策強化につながっていくと思っています」と求めた。これに対し、谷公一国家公安委員長は「盗難の多い車の名前の公表については、防犯上の効果など総合的に勘案し、より効果的な情報提供となるよう車の数を増やすことも含め、その在り方を検討してまいりたい」と検討することを明かした。
浜口議員は昨年12月、車両盗難厳罰化推進の会と協力し、自動車盗難の厳罰化を求める要望書と署名を6省庁に提出。一部では玉木雄一郎代表も同席した。自動車盗難は県や国をまたぐこともあり、警察庁や法務省、外務省以外にも、税関の管理は財務省、ふ頭の保全は国交省、GPSなどのセキュリティー対策強化は経産省と、担当省庁が分かれることが課題の一つだった。
岸田首相の答弁を受けた浜口議員は「関係省庁が多岐にわたっていますので、ぜひ総理のほうからしっかりやるように今一度、指示を出していただくことを重ねて求めていきたいと思います」と強調した。
車両盗難厳罰化推進の会代表のKUN AE86さんはENCOUNTの取材に、「質問して首相が答えたのは大きいと思います。かなり大きな一歩。各省庁にまたがるので国が動かないとできない。これで本当に動いてくれればありがたい」と岸田首相の答弁を評価した。「今も盗難が増えているので、ぜひ早く対策をしてほしい。厳罰化と、今一番考えられる対策はヤードだと思う」と指摘し、悪質な犯罪の撲滅を願った。