【週末は女子プロレス♯95】大事故で意識不明も経験、高校中退→ファッション業界→プロレスラー 異色経歴YuuRIの覚悟
ファッションが好きでその道に飛び込んだ少女がふとしたきっかけでプロレスと出会い、プロレスラーになった。彼女の名前はYuuRI(ユウリ)。現在はガンバレ☆プロレスに所属し闘っているが、女子部門「ガンジョ」の主力選手であるまなせゆうなの長期欠場が決まり存続の危機に立たされた。しかし、長谷川美子と決起しガンジョ継続を懇願。2人の熱意が実り、本稿掲載の4月1日、横浜ラジアントホールにてガンジョ再スタートの大会が開催される。ここでYuuRIと長谷川は初のシングルマッチ、しかもメインイベントでプロレスへの熱い思いを表現するつもりだ。さらに4月9日にはデビュー団体でもある古巣JUST TAP OUTに参戦し、稲葉ともかが保持するクイーン・オブ・JTO王座に初挑戦。この流れには本人も「きてる」と実感。デビューから3年目、勝負の年になりそうだ。
デビューから3年目で迎えた“勝負の年”
ファッションが好きでその道に飛び込んだ少女がふとしたきっかけでプロレスと出会い、プロレスラーになった。彼女の名前はYuuRI(ユウリ)。現在はガンバレ☆プロレスに所属し闘っているが、女子部門「ガンジョ」の主力選手であるまなせゆうなの長期欠場が決まり存続の危機に立たされた。しかし、長谷川美子と決起しガンジョ継続を懇願。2人の熱意が実り、本稿掲載の4月1日、横浜ラジアントホールにてガンジョ再スタートの大会が開催される。ここでYuuRIと長谷川は初のシングルマッチ、しかもメインイベントでプロレスへの熱い思いを表現するつもりだ。さらに4月9日にはデビュー団体でもある古巣JUST TAP OUTに参戦し、稲葉ともかが保持するクイーン・オブ・JTO王座に初挑戦。この流れには本人も「きてる」と実感。デビューから3年目、勝負の年になりそうだ。
親の反対を押し切って高校を中退、ファッション業界で働き始めた彼女。好きになったものをとことん追求するタイプなのだろう。プロレス好きになったのは知人から「面白いから見てみろよ」と勧められたのがきっかけだった。友人の解説付きで見たのが、新日本プロレスで行われたリコシェvsウィル・オスプレイのシングルマッチ。聖地を熱狂させ世界を震撼させた大空中戦が、プロレスをまったく知らない女性の運命まで変えたのだ。
以来、知人の解説とともにさまざまな試合映像を見まくった。ファンデビュー1か月後の2019年10月14日、新日本の両国大会で生観戦デビュー。メインのオカダ・カズチカvsSANADAはもちろん、内藤哲也の醸し出すムードに心を奪われた。
「ホントにカッコいいなと思いました。動画で引かれた選手は生で見ても輝きが違うなって。と同時に、動画では体感できない生のすごさに圧倒されましたね。動画では見られない汗のしぶきや会場の一体感に心震えて、プロレスって楽しい、動画もいいけど生に限るなって。そこから友人に連れて行ってもらうことなく自分で行くくらいになりました。グッズとかもガンガン買うくらいの“プ女子”になりましたね(笑)」
もともと強くなりたいとの願望があり、ダイエット目的もありキックボクシングをやっていた。家にあるサンドバッグを蹴る動画を配信していたところ、なんとTAKAみちのくから連絡がきたから驚いた。
「『いい蹴りしてますね、プロレスやりませんか?』って。あのTAKAみちのく選手が見てくださってて声をかけてくれたんですよ。こんなチャンス断ったら終わりだと思って、次の日からさっそく練習に行きました」
彼女は17歳のとき、交通事故に遭ったという。5日間意識不明の大事故だったが、奇跡的に回復。これをきっかけに、「人っていつ死ぬか分からない。だったら好きなことをやった方がいい」との思いが強くなった。中退した高校も自分で働いて学費を捻出、通信で卒業資格を取得した。そして入門からわずか3か月後の20年11月11日、後楽園ホールでデビュー。リングネームはYuuRIだ。
「いろいろ悩みました。ファッションで活動していた頃のhidetamuuuuuu(ひでたむ)でいくか、本名にしようか。考えた末にイチからスタートする意味でも親からつけてもらった大好きな本名を採用しようと思いました。リングに立ったら私の名前を呼んでほしいとの思いもあるし、uの字を小文字にしたのはひでたむの名残も入れたかったからです」
本音ではもっと準備期間がほしかったと言うものの、デビュー戦にはたくさんの友人が会場に駆けつけてくれた。その友人たちに「プロレスって面白いと思わせたい」という責任感にまでかられていた。試合には敗れたが、帰り際に「元気もらえた!」「自分も頑張ろうと思った!」と声をかけられたことがたまらなくうれしかった。初プロレスの友人たちからは「勝つところが見たい」と言われ、リピーターになってくれた。何も知らなかった自分がプロレスに魅了され、もらった元気をこんどは与える立場になる。身近な人だけでなく、もっと多くの人たちに喜んでもらえたら。そんな思いを抱いたデビュー戦だった。
YuuRIが目指す恩返し「ガンプロにベルトを持ってきたい」
「デビュー戦を機に視野が広がりました」と言うYuuRI。JTOで闘いながら、他団体への興味も広がっていった。21年9月に退団したのも、プロレスの視野を広げるためだった。
「団体によってさまざまなカラーがありますよね。いろんな団体を見ていくうちに自分はまだまだ視野が狭かったんだなと思って。たとえばDDTさんの豊かなエンタメ性もいいなと思い、系列の団体も見るようになったんですね。なかでも刺さったのが、ガンバレ☆プロレスでした」
独特の熱気に圧倒され女子部もあったことから、YuuRIはガンプロ参戦を決意。21年9月4日、板橋大会に登場し電撃入団、まなせゆうなの胸を借りた。
「絶対忘れることないなってくらいの会場の一体感がすごかったです。ガンプロはファンも熱い。あとからそのとき写真をみて、自分プロレス楽しんでる、ガンプロ来てよかったんだって実感しました」
ガンプロ入団以降、さまざまな団体のリングでも闘うようになった。なかでもまなせに誘われタッグリーグ戦にエントリーしたMarvelousはターニングポイントになったという。
「あのリーグ戦で成長、自分の殻を破るいいきっかけになったと思います。突然指名されて驚きましたけど、まなせさんには本当に感謝しています」
さらに昨年11月19日にはHARUKAZEを破りガンプロでの自力初勝利を獲得。これが大きな自信につながったとYuuRIは言う。
「いままで負け続けていたHARUKAZEさんに勝てて、そこから他団体さんや先輩相手でも勝てるようになりました。すごく自信になったし、勢い来てるなって自分ですごく感じてます」
ところが、まなせがヒザの負傷から長期欠場を決断。ガンジョが存続の危機に立たされた。そこで立ち上がったのが長谷川とYuuRI。2月6日の会見でガンジョ続行、まなせの帰ってくる場所を守ると宣言したのだ。そして4・1横浜で、長谷川とYuuRIはメインイベントのリングに立つ。
「いままで先輩たちが作り上げてきたガンジョ。まなせさんはガンプロの太陽のような存在で、みんなを熱くともしてくれていました。そんなまなせさんがいないからガンジョが終わるなんてことにしてはいけない。自分たちで新しいストーリーを作っていかなければいけないと思います。太陽と言わずとも、長谷川さんと一緒に自分がガンプロの星となって輝かせていきたい。まなせさんが安心して帰ってこれる新しいガンジョを作りたい。それが自分からまなせさんへの恩返しじゃないかなって思ってます」
一緒に動き出した長谷川も、YuuRI同様にキャリアは浅い。が、熱い思いで闘うのがガンバレ☆プロレスの魂だ。
「ガンプロ初メインで責任が大きいですが、長谷川さんとは魂と魂のぶつかり合いをしてお互いの気持ちを確かめ合いたいです。もちろん勝ちたいし、勝つ自信はあります。が、勝ち負け以上にこれからガンジョを引っ張っていく、一緒に頑張っていくんだという気持ちを見せたいですね」
そして古巣JTOの4・9新木場1st RINGで稲葉ともかのクイーン・オブ・JTO王座に初挑戦。これもまたドラマチックな展開だ。
「私が所属していた頃は、あのベルトはまだなかったんです。ガンプロ入ってからベルトができて、気になってました。(王者の稲葉)ともかさんもスターダムのゴッズアイに入ったりとかして、活躍は気になってたんですよ。雰囲気も変わってキラキラしてるし、私が見てた頃のともかさんじゃないですよね。すごく成長して強くなってるのはそばから見ても分かります。ガンプロの自分を見てくれてるか分からないですけど、久しぶりに自分を感じてもらいたいし、古巣のベルトを取ったらすごいと思います。ガンプロにベルトを持ってきたいですね」
ガンプロ、JTOとも男女混合のプロレス団体。YuuRIはクイーン・オブ・JTOとともに、ガンプロのベルト(スピリット・オブ・ガンバレ世界無差別級王座)も取りにいきたいと思っている。まなせがヘビー級の男子レスラー、ハートリー・ジャクソンに挑むもなしえなかった夢(現王者は渡瀬瑞基)。それをかなえれば最高の恩返しになるだろう。
「自分に波がきてるという直感も含め、いま成長してるという感覚をちゃんと確信に換えたいなと思います。それを形で表すのがベルト。ガンプロは男女無差別だし、2冠を取るくらいの気持ちでいきますよ!」