長州力に「天下を取り損ねた男」と揶揄された永田裕志が史上初の快挙「オレのレスラー人生は間違っていなかった」

史上最強のグランドスラムを達成した“青義軍”永田裕志が、3冠王座V1戦(3月21日、東京・大田区総合体育館)で晴れ姿を披露する。

敬礼ポーズを決める永田裕志【写真:柴田惣一】
敬礼ポーズを決める永田裕志【写真:柴田惣一】

柴田惣一のプロレスワンダーランド 毎週金曜日午後8時更新【連載vol.137】

 史上最強のグランドスラムを達成した“青義軍”永田裕志が、3冠王座V1戦(3月21日、東京・大田区総合体育館)で晴れ姿を披露する。

 ここ数年、全日本プロレスをけん引してきた宮原健斗を下し、第69代3冠王者となった永田。新日本プロレスのIWGP、ノアのGHC、そして全日本の3冠とヘビー級タイトルをすべて手に入れた。シングル3大王座のグランドスラマーは佐々木健介、高山善廣、武藤敬司、小島聡といるが、永田は3団体のシングルリーグ戦(G1クライマックス、チャンピオン・カーニバル、グローバル・リーグ)も制しており、史上初の快挙である。

 加えて3大タッグ王座も腰に巻いており、メジャー3団体の主要ベルトを総なめにした不滅のスーパー・グランドスラム男として、日本プロレス史に刻まれることになった。

 しかも、永田は1992年の入門以来、新日本一筋。他団体の王座挑戦の機会も限られてきた上での偉業となる。「これまでの方たちとは一味違う重みがあるはず」と胸を張る。新日本で良いときも悪いときも、踏ん張ってきたが「あきらめずにいれば、多少、遅れても天下を握れる」と夢を追い続けてきた甲斐があったというものだ。

 第三世代の同志・小島がシングル&タッグのグランドスラムを2022年にやってのけたことで刺激も受けた。先に引退した先輩・武藤敬司氏も21年に達成したことで「俺だって、まだまだいける」と自信とパワーをもらったのも事実だ。

 新日本の「プロレス界の盟主の座」が揺らいだ00年代にエースとなった永田は、長州力に「天下を取り損ねた男」と揶揄(やゆ)されていた。「ミスターIWGP」と呼ばれたものの「長州さんに天下を取り損ねた、と切り捨てられたけどね」と自嘲していたが、もはや誰にも何も言わせない。

 31年目を迎えた己のレスラー人生に誇りを持っている。「正直、新日本を辞めようと思ったこともある。でも、新日本にプライドを持ってここまでやってきた。オレのレスラー人生は間違っていなかった。ゼアッ!」とキッパリ言い切り、胸を張る。

 ただし、初防衛戦の相手、石川修司の意気込みも凄まじい限り。3冠王座が他団体の所属選手、しかもジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんのBI時代からライバル抗争を繰り広げてきた新日本の選手に奪われたのだから、奪還に燃えている。

 石川といえば、いかにも全日本らしいスーパーヘビー級の巨体を誇っている。馬場さん、ジャンボ鶴田さんら、全日本マットを彩ってきた名レスラーたちの勇姿を思い浮かべる人も多いはず。あふれるパワーと豪快な技は、すべてが規格外。自らを「全盛期」と言うように、コンディションも良い。

 とはいえ、今の永田に死角は見当たらない。ウイークポイントを的確に捕らえて、じわじわと力を削いでいく、いつもの手はずをすでに整えた。とっくに石川の弱点を見抜いているようだ。

 石川の巨体を崩して3冠V1をやり遂げる。締め上げる際には、得意の白目を披露するかも知れない。三冠王の白目は冴え渡ることだろう。勝利の敬礼ポーズもいつにも増してバッチリ決めるつもりだ。

 新日本戦士でありながら、全日本の頂点に立ち、全日本を引っ張っていく。スーパー・グランドスラマーは、青き使命感に燃えている。

次のページへ (2/2) 【写真】アジアタッグ・ベルトを腰に白目Tシャツを披露する永田裕志
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