桜の標準木、なぜ靖国神社に? 観測始めは1966年、東京管区気象台に聞くルーツ
日に日に暖かくなってきたこの頃。固く閉じていた桜のつぼみも膨らみ始めてきた。桜の開花は各地の気象台が観測する「標準木」の桜が開花した時点で「開花発表」をしているが、標準木や開花の基準はどのようなものなのだろうか。靖国神社(東京都千代田区)にある標準木を観測し、東京の桜の開花を知らせている東京管区気象台(東京都港区)の担当者に聞いた。
東京の開花は全国最速となる3月15日の予想
日に日に暖かくなってきたこの頃。固く閉じていた桜のつぼみも膨らみ始めてきた。桜の開花は各地の気象台が観測する「標準木」の桜が開花した時点で「開花発表」をしているが、標準木や開花の基準はどのようなものなのだろうか。靖国神社(東京都千代田区)にある標準木を観測し、東京の桜の開花を知らせている東京管区気象台(東京都港区)の担当者に聞いた。(取材・文=西村綾乃)
国内には標準木と呼ばれる桜の木が、全国各地に点在。標準木に付いた蕾が5~6輪咲いたことが確認された日が、その年の「開花日」とされている。
「標準木は58か所に設けられています。『ソメイヨシノ』に限ると、最南端は鹿児島、最北端は北海道の札幌にあります。東京では、靖国神社の標準木の前で開花をお伝えしています。標準木は桜の開花を観測すること、また地球温暖化などの監視や100年単位での気候解析などにも活用されています」
靖国神社での開花発表は、東京の春の風物詩だ。標準木は全国各地の気象台や測候所の構内などに設けられていることが多いが、東京はずっと靖国神社だったのだろうか。
「靖国神社の桜を標準木として観測し始めたのは1966年ごろから。元々、靖国神社の近くにあった気象庁の中に標準木がありましたが、64年に庁舎移転したことから、気象庁構内で標準木を確保することができなくなったことが理由です。詳しい資料は残っていないのですが、周辺で標準木に適した場所を探したのではないかと考えられています」
オオシマザクラ、ヤマザクラ、早咲きのカワヅザクラなど、国内にはたくさんの桜が育成されている。標準木はソメイヨシノ一種類だけなのだろうか。
「桜の観測は、原則として『ソメイヨシノ』になりますが、生育が難しい地域では代替種目で観測しています。観測している全国58か所のうち、沖縄県内のすべての観測地点(沖縄、南大東島、宮古島、石垣島)及び鹿児島県の名瀬は『ヒカンザクラ』、北海道の一部(稚内、網走、旭川、釧路、帯広)は『エゾヤマザクラ』を観測しています」
寿命での代替えや、災害などで定められている標準木を変更しなくてはいけない場合は、どのように対応するのだろうか。
「標準木が病気になったり、塩害や暴風による倒木など不測の事態に備えて、副標準木が選定されています。新たな木を標準木の候補とする場合、同じ木で長期間観測できることや、なるべく自然の状態で育成されていること、付近一帯の現象を代表していることなどの条件があり、複数本の標準木との比較観測を3年以上行うことになっています。ほかにも気象官署(庁舎)から、水平距離(概ね5キロメートル未満)、官署(庁舎)の標高(概ねプラスマイナス、50メートル以内)などの条件もあります」
現在、東京の桜の開花を知らせる標準木は、やや老木化しているという認識があるそうだが、すぐに変更することは考えてはいないという。8日に行った撮影では、数個のつぼみの先が緑色に変化していた。
気象情報会社「ウェザーニュース」が8日に発表した桜の開花予想では、東京の開花は全国最速となる3月15日の予想。2020年と2021年の最早記録(3月14日)に並ぶような開花の早さとなる見込みだ。全国各地の開花も平年より早い見込み。高温傾向で万回も早いことが予想されている。