猪木さんのお別れの会 武藤敬司の引退試合を終え「昭和 平成のプロレス」に一区切り

猪木さんのお別れの会、武藤敬司氏の引退試合の余波はいまだに続いているが、昭和、平成のプロレスにいったん区切りがついたことは間違いない。

オカダ・カズチカ相手に奮闘した清宮海斗だったが【写真:柴田惣一】
オカダ・カズチカ相手に奮闘した清宮海斗だったが【写真:柴田惣一】

柴田惣一のプロレスワンダーランド 毎週金曜日午後8時更新【連載vol.136】

 猪木さんのお別れの会、武藤敬司氏の引退試合の余波はいまだに続いているが、昭和、平成のプロレスにいったん区切りがついたことは間違いない。

 それにしても、まだ3月だというのに、今年のマット界には大きな衝撃が走っている。新日本プロレスの勢いがいよいよ止まらない。

 武藤氏の引退試合2・21東京ドーム大会で、ノアのGHCヘビー、ジュニアのシングル両王者が、新日本のIWGP同王者にともに敗れ去った。ノンタイトル戦とはいえ、両団体のチャンピオン同士の一騎打ちでズバリと結果が出たのだから、ノアファンの心中やいかに、である。

 徐々にコロナ禍での声出し禁止も緩和されている中、なかなか声援、ヤジを取り戻せないでいるファンもいるかも知れないが、あ然ぼう然だろう。

 GHCヘビー級・清宮海斗の相手オカダ・カズチカは、プロレス大賞MVPを5回獲得している今やプロレス界の顔。“チャレンジマッチ”という声もあったが、清宮もノアの王者である。どんな言い訳も通用しない。

 ジュニア戦争が活発なノアのジュニア王者・AMAKUSAも、新日本の高橋ヒロムに敗退。こちらもノアにしてみれば残念の極みに違いない。

 ベルトはそのままノアにあるが、王座の威厳が傷ついたことは否定できない。長年、ノアを応援してきたファンの切歯扼腕(せっしやくわん)ぶりは想像に難くない。

 ノアと並んで新日本を追いかける全日本プロレスも事情は同じだ。ジャンボ鶴田さん、天龍源一郎氏の鶴龍、三沢光晴さん、川田利明、小橋建太氏、田上明氏の四天王が覇を競い合ってきた3冠王座を、新日本の永田裕志に明け渡してしまった。

 かつてはミスターIWGPと称せられた永田だが、今の新日本では最前線に立っているとは正直、言い難い。ここ最近の全日本をけん引していた宮原健斗の苦杯に、全日本のファンは「まさか……」と声を失っただろう。

新日本の独走にストップをかけるべき2団体の苦杯。ここはカンフル剤として反撃のきっかけとするしかない。

 ノアでは清宮に「お前、もう休めよ」と声を上げたのが、全日本からフリーとなり、ノアに乗り込んできたジェイク・リーだった。3・19神奈川・横浜武道館大会でのGHC戦となった。

 元3冠王者がGHC王座の危機に復興の名乗りを上げたのだから、緊急事態そのもの。ノアマットに上陸し、190センチを超える巨体の破壊力で席巻しているジェイク。イケメン軍も結成した。これまでのノアマットにはいなかったタイプの選手であり、崩れ去ったGHC王座の権威を取り戻す救世主に相応しいかも知れない。

 もちろんどん底まで落ちた清宮が復活の一歩を踏み出すことも期待したい。まだ若く、芯の強さも持ち合わせている。まだまだこれからの選手。ここで終わる器ではないハズ。オカダと同体格のジェイク相手に、ノアの意地を見せ、勇姿を披露してほしい。

 全日本では3・21東京・大田区総合体育館大会で石川修司が奪還に臨む。「全盛期」を掲げ、大型でパワフル、豪快な必殺技の数々。「プロレスラーらしいプロレスラー」と称される“進撃の大巨人”石川の奮闘に注目が集まっている。

 新日本に追いつくのは、なかなか大変な現状だが、最初の一歩を踏み出さないと始まらない。バラエティーに富んだ陣容のノア、迫力ある大型選手が揃う全日本。それぞれ名勝負を生んだ闘いの歴史もある。「ショック療法だと思って、これからも応援する」という根強いファンもいる。ノア3・19横浜決戦、全日本3・21大田区決戦を見届けたい。

次のページへ (2/2) 【写真】3冠ベルトを腰に巻いた永田裕志の勇姿
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