【週末は女子プロレス♯92】憧れの仲里依紗に会いたくて…会津から上京も女子レスラーに 遠藤有栖の人生を変えた瞬間

東京女子プロレスの遠藤有栖は、2013年9月に武藤敬司が旗揚げしたWRESTLE-1(W-1)の公式サポーター・アイドルグループCheer●1(チアワン/●はハートマーク)のメンバーからプロレスラーに転向した。

プロレス挑戦の経緯を明かした遠藤有栖【写真:新井宏】
プロレス挑戦の経緯を明かした遠藤有栖【写真:新井宏】

“筋肉アイドル”才木玲佳の試合で受けた衝撃

 東京女子プロレスの遠藤有栖は、2013年9月に武藤敬司が旗揚げしたWRESTLE-1(W-1)の公式サポーター・アイドルグループCheer●1(チアワン/●はハートマーク)のメンバーからプロレスラーに転向した。

 大好きな俳優・仲里依紗に一目会いたくて地元・会津若松から上京。そのためにどうしたらいいかと、まずは小劇場で舞台の経験を積んでいくのだが、プロレスファンの父に連れられW-1の会場に何度も足を運ぶ。するとプロレスはもちろんのこと、チアワンのダンスパフォーマンスにも目を奪われた。そのときは自分もやってみたいとの感情にはならなかったものの、「父が勝手に応募してしまい(笑)」オーディションを受けることに。そして、3度目のオーディションで合格。卒業の才木玲佳らと入れ替わる形で、5期メンバーとしてチアワンの一員となった。

「まさか自分がリングの上に立つなんて思ってもいなかったのでビックリしましたね。私、試合前にリングで踊ってるわあって、自分自身に驚いていました」

 チアワンの活動とともに、プロレス、W-1を応援する気持ちも大きくなっていく。ところが、20年2月末にW-1が活動休止を発表。4・1後楽園が最後の開催となった。

「休止と聞いて言葉がなかったです。それってチアワンも終わるってことだよなと思ったら勝手に涙が出てきて。これからどうしようっていうのもそうだし、もうプロレスには携われないのかなって……」

 プロレスをリングから応援するようになってちょうど1年。たった1年では未練がありすぎる。そんな頃、“筋肉アイドル”才木の試合映像を見て、衝撃を受けた。チアワンの先輩が、リングで闘い輝きを放っている。

「闘ってる女子ってかっこいいなと思って、才木さんへの思いが憧れに代わってしまったんです」

 マネジャーの助言もあり、プロレスへの挑戦を決意した遠藤。選んだ団体は、欠場前の才木が活躍していた東京女子だった。コロナ禍の中、デビューに向けてのトレーニングが始まった。

 身体を動かすことが好きで、さまざまなスポーツにトライ、バスケットボールは9年間続け運動には自信があった。ところが、プロレスで初めて“肉体的挫折”を味わう。「痛いのは承知のつもりだったんですけど、ここまで痛いのかと……」。21年1月4日の後楽園ホール大会でデビューを果たすも、体力のなさを痛感した。それでも試合をこなし続け、1年後の22年1月4日にタッグマッチながら自力初勝利をゲットした。「長い道のりでした」と当時を振り返る遠藤。しかし、ここから先が早かった。

 昨年、遠藤はさまざまな経験を次々と重ねていった。デビュー戦の相手でもある鈴芽とのタッグチーム、でいじーもんきーでタイトル初挑戦(4・9後楽園で坂崎ユカ&瑞希組のプリンセスタッグ王座)。5月にはエキシビションながらも才木のラストマッチで相手をつとめた。また、10月には夢だった地元凱旋試合を実現させた。

「あっという間の1年でした。いままでにない速さで時が過ぎていくし、夢もどんどんかなえられていく。初勝利までが長かったけど、そのあとがギュッと凝縮されていましたね」

 タッグ王座奪取こそならなかったが、東京女子の新世代台頭を実感させる試合になった。才木とのリングでの遭遇は、諦めていたところでかなえられた夢だった。実際、引退試合とは思えないほどの「すごい才木玲佳」を肌で感じられた。また、鶴ヶ城や磐梯山など地元の名所を技名に使用するくらい地元愛が強い彼女に、会津若松市から観光大使に任命もされた。が、ひとつ心残りがある。それはまだシングルでの勝利がないことだった。が、今年に入ってから待望の瞬間がやってくる。タッグトーナメントでフォールを奪われた宮本もかへのリベンジを果たし、2・11後楽園で歓喜のシングル初勝利を手にしたのである。

「シングル初勝利までにデビューから2年もかかったじゃないですか。これってけっこうくじけそうにもなって、何度も地元に帰っちゃったんですよね(苦笑)。そのたびに、家族とかばあちゃんの顔を見て元気をもらってました。そのおかげもあって初勝利ができて、いまでは勝てなかった頃の自分にメチャメチャ言いたいんですよ。諦めずに自分を信じて頑張れば、絶対に努力は報われるからねって」

「東京女子は私のパワースポットです」と言い切る遠藤有栖【写真提供:東京女子プロレス】
「東京女子は私のパワースポットです」と言い切る遠藤有栖【写真提供:東京女子プロレス】

3月18日には鈴芽とデビュー戦以来2度目の一騎打ち

 そして迎える3月18日には、東京女子が東京・有明コロシアムに初進出。このビッグマッチで、遠藤は第1試合に出場予定。鈴芽とデビュー戦以来2度目の一騎打ちで、でいじーもんきーのパートナー対決でもある。

 東京女子のビッグマッチでは、タッグパートナー同士のシングルがメインを飾るケースが非常に多い。今大会でも、坂崎vs瑞希(プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合)のマジカルシュガーラビッツ対決がメインで、渡辺未詩vs辰巳リカの白昼夢対決もインターナショナルプリンセス王座を懸けたタイトルマッチで行われる。もともと第1試合とは大会の流れを左右する重要なポジションで、パートナー対決が複数組まれているからこそ、第1試合の重要性がさらに高いと言っていいだろう。3大タッグパートナー対決でどれが一番エモいのか、比較対象になるはずだ。

「そうですね。鈴芽さんとはタイトルマッチだったりタッグトーナメントだったり、負けてるのはいつも私なんですよ。私のせいで2人が悔しい思いをしてしまうと落ち込んだりするんですけど、それでも鈴芽さんは前向きな言葉をかけてくれて、そこに救われてた自分もいるんです。それでこれからも頑張ろうと思えたし、こないだやっとシングルで初勝利を挙げて、自分自身にもやっと自信がつきました。なので、波に乗った状態で鈴芽さんとシングルできると思うんですよね。これはもう、強くなったぞというのを見せつけたいです。最高の試合にします!」

 鈴芽とのシングルは、ためにためた満を持してのカードと言っていいのだろう。2年2か月ぶり2度目の一騎打ちが将来、東京女子ビッグマッチのメインイベントに昇華する。そんな夢を抱きながら今回のオープニングマッチを見るのもいいだろう。

 それにしても、東京女子には遠藤と同世代のレスラーが多く在籍している。遠藤、鈴芽、宮本、3・18でアジャコングとシングルで闘うSKE48の荒井優希もそうだ。

「そうですよね。ホントにクラスメートみたいな感じです。個性もそれぞれ違うので、闘ったり組んだりして、一緒に高め合ってるなって思います」

 切磋琢磨する“98年組”。それに加え、東京女子ではこのところ新人が続々デビュー。遠藤らは先輩レスラーを追いかけるのと同時に、今後は追われる立場にもなる。うかうかしていたらあっという間に追い抜かれてしまいかねない。すでに初勝利を挙げた新人もいるだけに、遠藤は危機感をおぼえている。

「こないだ(2・25大田区産業プラザ)HIMAWARIさんとシングルして、こんなに強いのかって焦っちゃいました。また頑張らなきゃって、あらためて思いましたね。追われる立場なんて、時が進むの早くないですか!?」

 そう感じるくらい、東京女子のリングは動いている。「東京女子は私のパワースポットです」と言い切る遠藤。昨年に引き続き、今年もまた猛スピードの1年になるのではないか。

 遠藤有栖の今後の成長と活躍に期待したい。

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