故崔洋一監督は「すぐれた演出家」「牽引力があった」 元スタッフが語る素顔と思い

崔洋一(さい・よういち)監督がメガホンをとり、俳優の藤竜也が主演した不朽の名作『友よ、静かに瞑れ』(1985年公開)の4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】が<角川映画UHDプロジェクト>の一環として発売された。同作の撮影に参加した浜田毅さん(当時撮影)、成田裕介さん(同助監督)が昨年11月に亡くなった崔監督(享年73)への追悼を込めて東京都内で撮影当時の思い出や崔監督の素顔について語った。

藤竜也が出演した『友よ、静かに瞑れ』のワンシーン【写真:(C)KADOKAWA 1985】
藤竜也が出演した『友よ、静かに瞑れ』のワンシーン【写真:(C)KADOKAWA 1985】

40年前の辺野古基地周辺はのんびりムード、商店街が全面協力

 崔洋一(さい・よういち)監督がメガホンをとり、俳優の藤竜也が主演した不朽の名作『友よ、静かに瞑れ』(1985年公開)の4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】が<角川映画UHDプロジェクト>の一環として発売された。同作の撮影に参加した浜田毅さん(当時撮影)、成田裕介さん(同助監督)が昨年11月に亡くなった崔監督(享年73)への追悼を込めて東京都内で撮影当時の思い出や崔監督の素顔について語った。

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『友よ、静かに瞑れ』はハードボイルド小説の巨匠・北方謙三の原作を、『月はどっちに出ている』『血と骨』の崔監督が映画化。警察に勾留された友人を助けるため沖縄を訪れる主人公を藤が演じ、倍賞美津子、室田日出男、林隆三、原田芳雄らベテラン勢が脇を固めた。UHD初収録となるメーキング映像は藤の撮影に密着しており、崔監督の姿も映っている。医療ミスを起こした医師の新藤剛(藤)は、沖縄・多満里地区でホテル・フリーインを経営する大学時代の旧友・坂口(林)を訪ねる。しかし地元では下山建設の下山(佐藤慶)と刑事の徳田(室田)らが共謀しヤクザを使って住民の立ち退きを進めていた。ヤクザと戦う新藤は下山建設幹部の高畠(原田)とついに決闘することに……。

 ほぼ40年前に撮影したこの作品の感想を聞くと「33歳か34歳ぐらいでしたが、我ながらよく撮れていると思います」(浜田さん)、「崔監督は人が一生懸命やっていると鼻で笑うことがあって、演出でも自分と違う意見を出すと『それは近い将来、成田組でおやりになったら?』と言われてムカついたり(笑)。当時の記憶がよみがえってきました」(成田さん)と懐かしそうに語った。今回発売された4Kデジタル修復版については「コントラストのハイとローのメリハリがついた。公開当時はさんざん『暗い』と言われたからこのグレーディングは非常に良い」(浜田さん)と視聴ポイントを明かした。

 原作の舞台は東北だが、映画では沖縄に変更された。その経緯について浜田さんは「沖縄で撮ると言いだしたのは崔監督。監督と脚本の丸山昇一、ラインプロデューサーと俺の4人で沖縄にロケハンに行き、海洋博公園から北部をまわって辺野古にたどり着いて『ここだ!』と皆が叫びました。4時間くらい夜の海岸で話し合ってすごく楽しかったですね。今と違って街には誰も出てこなくて、台風が来るから窓が小さく家の中は暗いイメージ。その雰囲気がすごくいいなと思って。辺野古の家には屋上があって足場を組んでライトを乗せるのもOKしてくれたのですごい分量の夜間撮影ができました」と明かした。

 成田さんも「商店街の組合長が間に入って交渉してくれました。米海兵隊駐屯地のキャンプ・シュワブの司令官も知っていて車両の撮影にも協力してくれました。いま辺野古は大変な基地になっていますが、当時は通信基地だったのでのんびりしていました」と振り返った。

 崔監督の素顔について聞くと浜田さんは「崔監督とは辺野古の海で4時間語り合ったことで作品に対する共通の思いができました。気が弱いところがあったからあえて強面でいたのかなって気はしますが、すぐれた演出家だと思います。一緒に組んだ『Aサインデイズ』、『マークスの山』、『刑務所の中』、『血と骨』などを見ても優秀な監督だったと思います。作品のジャンルも多岐にわたっています。『マークスの山』では北岳に100人登らせて撮るんだって言いだして、できるのかと思っていたらそれをやってしまう。付き合うこっちも大変ですけど、困難を乗り越えていく力を持っていましたね」。

 成田さんは「撮影中に『成田! これでいいよな?』と聞いてくるんで、『いいです』と答えるとすごく気持ちよさそうにニヤーッって笑うんです。やっぱり牽引力がありましたね。自分も監督になって大変なのはチームで作品の空気感を作っていくこと。作品ごとに作っていく空気感が微妙に違いますが、崔さんはそれをすぐに感じ取って企画を実現させてきた。そういう点は長けた人でしたね」としみじみ語った。

『友よ、静かに瞑れ』の4Kデジタル修復版は、2026年に50周年を迎える角川映画をUHDでリリースする「角川映画UHDプロジェクト」の1つ。オリジナル・35mmネガフィルムから引き出された精細な映像やクリアな音声を史上最高品位のフォーマットで提供する。当時の色味を正しく再現すべく撮影監督監修のグレーディングを敢行。当時のタイミングデータ、過去のマスター、上映用フィルムなどを参照し、本来の色彩設計の復元を目指したニューマスターを作成した。その過程でカメラマン・関係者らの確認・調整なども実施した。本作では浜田毅撮影監督がグレーディングを監修。UHDには、HDRグレーディングを施した16bitニューマスターを使用した。HDR技術により、これまでの映像よりも幅広い輝度や色域で表現できるため、明るいシーンはより鮮やかに、暗いシーンはより艷やかにダイナミックかつ繊細な映像が実現された。

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