【早慶上理】東京理科大がお得なワケ 早慶より安い学費、目立つ東大大学院への進学者…就職は絶好調

私立トップの大学グループ群として人気の高い「早慶上理」。受験産業からは別格の「早慶」、それに次ぐ「SMART」(上智、明治、青山学院、立教、東京理科)と呼ばれることもあるが、理系人気の波に乗って東京理科大の動向が注目されている。

“秘境感”漂う東京理科大の野田キャンパス【写真:ENCOUNT編集部】
“秘境感”漂う東京理科大の野田キャンパス【写真:ENCOUNT編集部】

野田キャンパスは“秘境” 飲み会は学内で 教員と学生の距離縮まる

 私立トップの大学グループ群として人気の高い「早慶上理」。受験産業からは別格の「早慶」、それに次ぐ「SMART」(上智、明治、青山学院、立教、東京理科)と呼ばれることもあるが、理系人気の波に乗って東京理科大の動向が注目されている。

 東京理科大は7学部32学科を擁する理工系総合大学として私学随一の規模を誇っている。7研究科30専攻を擁する大学院や最先端の研究を展開する研究機関が連携し、組織にとらわれない横断的な教育研究フィールドを提供。2031年の創立150周年に向けて大学再編も進めており、23年度には理学と工学の教育及び研究分野の活性化を図るため、理工学部を「創域理工学部」に名称変更することも決まっている。

 同大学教員は「予備校業界や中高一貫校からは『早慶上理』と一括りにされますが、実際、指定校推薦や総合型選抜をのぞくと理科大が第一志望だった生徒はほとんどいません。国立や早慶を落ちてくる子が多い」と明かすが、大学通信が22年度に実施した「全国の高等学校の進路指導教諭“オススメの大学”に関するアンケート調査」で理科大は「教育力が高い大学」で3年連続私大1位、「研究力が高い大学」では16年から7年連続で私大1位に輝くなど高い評価を得ている。

 早慶の理工学部を落ちて滑り止めの東京理科大に進学する生徒の多さは度々指摘されるが、実はその選択には親にとってメリットがあるという。それは「学費が安い」ことだ。慶応理工と早大理工(基幹、創造、先進)が4年間で約700万円かかるのに比べ、東京理科大は550~580万円前後。親の負担は少しは軽くなりそうだ。

 一方、理科大HPによると、22年3月卒業の実就職率は93.1%と非常に高く、大規模大学(卒業生数4000人以上)のランキングで全国1位となった。主要な就職先は、富士通、日立製作所、ソニー、キヤノン、東京都職員などのほか、国家公務員採用試験、教員採用試験、薬剤師国家試験、弁理士試験など各種試験で多くの合格者を輩出したという。「理系の職種だけではなく総合商社やメーカーなど大手への就職も好調です。普段から教職員が企業の採用担当者と密接な関係を築いているためです」(同大教授)。

 理科大にとって大きなネックとなっているのが野田キャンパスの存在だ。東武野田線(東武アーバンパークライン)「運河」駅下車、徒歩5分の場所に広大で緑豊かな敷地が広がっている。都心からはかなり遠い印象があるが、東京・上野駅からは乗り継ぎが良ければ40分ほどで到着する。薬学部、理工学部のほか、大学院の薬学研究科、理工学研究科、生命科学研究科がある。キャンパスへは大きな橋を渡って行くことから“秘境”のような佇まいだ。駅前にはこれといった飲食店がないため、「教員同士が駅近くの店で飲むことはほとんどありません。お酒やつまみがなぜか研究室にたくさん集まってくるので、皆さん持ち寄って学内の適切な場所で飲み会をしています」(同)という。こうしたアットホームな雰囲気が教員と学生の距離を縮め、学生の研究に対する意欲を高めているようだ。

 大学院進学率は49.6%、学科によっては7~8割が大学院に進学するという。進学先は国立の東大か東工大が目立つ。もちろん学費の安さが大きな理由だが、大学受験の際は「第1志望」ではなかった理科大生が、大学院受験でステップアップを図るケースが多いようだ。東大・東工大の大学院に進学できれば将来の生活設計はぐんと確実なものになるはずだ。東京理科大から東大・東工大大学院へ。こういう現実的な戦略もあるのではないだろうか。

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