「新型コロナ対策を完全撤廃」IT大手の決断…マスク着用を必須から任意へ、従業員の本音は?

「新型コロナ対策を完全撤廃しました!」――。IT大手「GMOインターネットグループ」(東京)の代表を務める熊谷正寿氏が自身のツイートで、新型コロナウイルス禍における社内の感染対策について、新たな決断を実行したことを発表し、話題を集めている。「パーテーション撤去」「社外との会食解禁」「マスク着用はすべての場所で任意」の3本柱だ。従業員7200人超を抱える同グループはそもそも、コロナ禍初期にあたる2020年1月に、全国で先駆けて在宅勤務体制に移行した。その“防御姿勢”から行動規制の緩和に踏み込んだ格好だ。日本政府が今年5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げるなど国内で各種規制の緩和が進む中で、企業内のコロナ対策はどうあるべきなのか。同社に聞いた。

IT大手「GMOインターネットグループ」の企業内新型コロナ対策が話題だ【写真:GMOインターネットグループ株式会社提供】
IT大手「GMOインターネットグループ」の企業内新型コロナ対策が話題だ【写真:GMOインターネットグループ株式会社提供】

「GMOインターネットグループ」熊谷正寿代表のツイートが話題 「社外との会食解禁」に

「新型コロナ対策を完全撤廃しました!」――。IT大手「GMOインターネットグループ」(東京)の代表を務める熊谷正寿氏が自身のツイートで、新型コロナウイルス禍における社内の感染対策について、新たな決断を実行したことを発表し、話題を集めている。「パーテーション撤去」「社外との会食解禁」「マスク着用はすべての場所で任意」の3本柱だ。従業員7200人超を抱える同グループはそもそも、コロナ禍初期にあたる2020年1月に、全国で先駆けて在宅勤務体制に移行した。その“防御姿勢”から行動規制の緩和に踏み込んだ格好だ。日本政府が今年5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げるなど国内で各種規制の緩和が進む中で、企業内のコロナ対策はどうあるべきなのか。同社に聞いた。

 同社が以前から段階的に緩和を進める中で、今回2月6日から新たに実施している「完全撤廃」は、「グループ全社に設置している社内パーテーションを順次撤去」、「従業員に対する行動規制の緩和=社外の人間との会食の解禁」、「パーテーションがある場所で任意としていたマスク着用をすべての場所で任意に変更」の3点だ。

 大きく舵を切った決断の背景について、同社は「昨年12月にグループパートナー(従業員)に調査した際に、さらなる緩和を求める声も多く見られたため。また、今年5月からではあるが政府の方針発表や、年明けから感染者数も減っていることを主としながら、全体的な状況を考慮してこのたび撤廃の判断をいたしました」と説明した。

 仕事中のマスク着用を巡っては、多くの働く人が何らかの思いを抱いているだろう。同社では昨年9月に、それまで「必須」としていた執務室内でのマスク着用について、パーテーションを設置した執務室内において「任意」とした。そのうえで、従業員を対象とした実態調査を実施し、今年1月4日に結果を発表した。61%の従業員がパーテーションのある執務室内であれば、何らかの形でマスクを外して業務をしていることが分かったという。

 また、さらなる緩和を求める声として、「閉鎖空間や会話を伴う場面での着用が徹底できれば、それ以外の場面については緩和してもよいのではと思う」「電車の中以外は外してもいいと思う」「相手に応じて対応すればいいので、特段ルールは不要なように思う。ルールではなくマナーだと思う」「パーテーションは声が聞きづらくなるため共用部でも不要にしてもよいと思う」との意見が寄せられた。

 マスクを外して業務している従業員からは、マスク着用任意で感じた変化・効果として、「息苦しさがなくなり、集中力が増して業務効率が上がった」「顔全体が見えるため感情が伝わりやすくなり、マスクをしている時よりも相互理解が深まった」「声が聞き取りやすくなった」「呼吸がしやすくなり、眼鏡の曇りも気にしなくてよくなったため、業務効率が上がった」といった具体的な声が挙がったとのことだ。

 コロナ禍の初期段階では、同社は防御を貫いた。「インターネットインフラを支える企業として、パートナー(従業員)の安全を守ることでサービスを継続することを優先」(担当者)し、いち早く在宅勤務に踏み切ったのだ。そこから緩和を進めることになった取り組みのこれまでの振り返りと自己評価についてはどう考えているのか。

「GMOインターネットグループ」の熊谷正寿代表【写真:GMOインターネットグループ株式会社提供】
「GMOインターネットグループ」の熊谷正寿代表【写真:GMOインターネットグループ株式会社提供】

「ビジネスが戦(いくさ)であるとしたら、オフィスは単なる職場ではなく武器」

「この間、政府の方針はもちろん、世の中の感染状況など、さまざまな状況を総合的に考慮したうえで、従業員の意見を聞きながら、その時々に応じた対応を取ってまいりました。一方で、在宅勤務はよい面もあるのですが、それが長く続いたり、マスク着用が長引くことで、従業員同士のコミュニケーションが円滑ではなくなるという弊害も出てきました。当グループは、コミュニケーションを大切にしているため、感染者数も少なくなり、政府も緩和策を出してきている中で、いち早く、撤廃という形をとることにしました。その結果、社内調査結果のようにコミュニケーションがとりやすくなってきたこと、また、マスクをしている時よりも職場の雰囲気が明るくなったという声も聞かれます」との見解を示した。

 他方で、「任意」についての考え方にも言及。「入館時の検温、アルコール消毒などの従来の感染症対策は引き続き実施することを前提としている中で、あくまでも『任意』であり、個人の意思を尊重しております。パートナー(従業員)ごとに置かれている事情も異なりますので、相手を思いやる気持ちでマスクの着脱を判断することが何よりも重要かと思います」。気遣いも大事であることを強調した。

 リモートワークが一般的に定着してきている中で、オフィスの移転・規模縮小に動く企業も多く見受けられる。同社は東京・渋谷のグループ本社を筆頭に、都内に計3か所、大阪、北九州、宮崎、仙台にもオフィス拠点を置いている。現在の在宅勤務などの状況はどうか。

「現状は、原則週2日の在宅勤務をグループ各社判断により認めています。GMOインターネットグループでは、人にはリアルな場と、リアルなコミュニケーションが必要不可欠であると考えており、ビジネスが戦(いくさ)であるとしたら、オフィスは単なる職場ではなく武器であると考えています。そのため、在宅勤務制に伴うオフィス規模の縮小は、現状考えておりません。一方で、在宅勤務における生産性の向上など良い部分もあるため、在宅勤務と出社のハイブリッドという出勤体制を現在はとっています」

 企業内の感染対策は各社非常に悩み、苦慮している側面があるだろう。参考になるメッセージとして、「個人によって事情が異なりますので、『任意』という形で相手を思いやる気持ちを持ちながら個人の意思で判断していくことが必要だと思います」としている。

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