ジョシュ・バーネットが見た大みそかの対抗戦 RIZIN5連敗に異論「日米で求められるものが違う」
「INOKI BOM-BA-YE×巌流島」(2022年12月28日、両国国技館)に合わせて年末に来日し、年始まで久々の日本での生活を満喫したのがジョシュ・バーネットだった。ジョシュは大みそかには「RIZIN.40」(さいたまスーパーアリーナ)を観戦したが、年明けに話を聞くと、非常に興味深いコメントが数多く飛び出した。
ポイントは二つある
「INOKI BOM-BA-YE×巌流島」(2022年12月28日、両国国技館)に合わせて年末に来日し、年始まで久々の日本での生活を満喫したのがジョシュ・バーネットだった。ジョシュは大みそかには「RIZIN.40」(さいたまスーパーアリーナ)を観戦したが、年明けに話を聞くと、非常に興味深いコメントが数多く飛び出した。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
まずRIZINがベラトールとの対抗戦に5連敗を喫したことについて聞くと、対抗戦の3試合目にベラトール代表として参戦した堀口恭司が、扇久保博正に勝利したことに触れ、「ホリグチは日本人だし、ベラトールではなくRIZINの選手」と答え、持論を述べた。
興味深いのは、ジョシュが「ポイントが二つある」と話したことだろう。
「ホリグチはRIZINだとKOや一本勝ちが多い。ベラトールの選手は勝っても判定になることが多い。それは何を表しているのか」
ジョシュの分析はこうだ。
「日本では完全決着が、アメリカでは勝利が求められる。あなたはどちらが好きですか? どちらを見ますか?」
この視点は、非常に日米のニーズや文化の違いを表現しているし、「白黒つける」の意味が日本とアメリカで異なっていると思えば良いだろうか? いや、そもそも論の話として、本当に最終目標が違うファイター同士が闘っているのだとしたら、その試合にどこまでの意味があるのか。もしくは、違うからこそ面白いと考えるべきなのか。
「見る側」にそれを求めるのは難しいが、少なくとも運営側は、そこを理解した上で試合を組んでいかないと、最初の時点でボタンのかけ違いが起こってしまう危険性があるのではないか。そんなことが脳裏をかすめた。
その後、ジョシュは対抗戦の残り4試合をひとつずつ振り返ったが、「対抗戦の1試合目、日本人のグレコローマンレスラーの……」と武田光司とロシアの選手(ガジ・ラバダノフ)について語り始めた。
「1Rに(ガジが)ダウンを取ったのは確かだが……、1R目のダウンがなければタケダが勝っていた」
ジョシュの見解では、「1Rは相手、2Rはイーブン、3Rはタケダ。1Rは相手が取ったけど、その後、彼はタケダにタコのように組み付き、守りに入っていた。対してタケダは一本を取りにいこうとしていた。私は守りに入る試合は好きじゃない」。
この時、ジョシュは小バカにしたように「タコホールド」と口にした。本当に好きではない闘い方なのだということが伝わってきた。
「タケダは決着をつけようとしていた。もちろんロシアンも強かったよ。パンチもよかった。ただ、(ラバダノフは)強いスキルは持っていたけど、私の見たい試合ではなかったと思っています」
AJ・マッキーを絶賛するジョシュ
また、対抗戦の2試合目で敗れたキム・スーチョルに関しても、ジョシュの採点では「キム・スーチョルは負けていなかったと思うけどね」と振り返った。
さらに対抗戦の副将戦として実施されたクレベル・コイケVSパトリシオ・ピットブルに関しては「あの試合もドローといってもよかったと思います。クレベルのほうが積極的に一本を狙いに行き、ピットブルは点数を取るゲームに行っていた。やっぱりそこは日本とアメリカにおけるMMAの考え方の違いだと思います」と独自の見解を崩さない。
そして、最大級の賛辞を送っていたのがメインで行われた、ホベルト・サトシ・ソウザとAJ・マッキーの一戦だった。
「AJ・マッキーは素晴らしいファイターだよ。サトシ戦はベストバウトだった。AJは他の選手と違って、判定狙いではなく一本を取りに行っていた。サトシもそうだった。二人とも好きな選手です。あの試合はAJの判定勝ちで良いと思う。ベストファイトでした。接戦だったけどね。AJは日本で闘えば、また、今後もベラトールとRIZIN両方で闘えば、日本で人気が出るファイターになると思う。仮にAJが負けていたとしても凄い試合をしたという私の評価は変わっていないと思う。とにかくAJは素晴らしいファイターだよ。ベラトールの中でもNo.1だと思う」
そういってAJを褒め称えたジョシュ。もちろんサトシへの労いも忘れてはいない。
「と同時にホベルト・サトシ・ソウザもこの世界ではトップにいることを改めて証明したと思います」
以上、ジョシュの総評を書き記したが、ジョシュの見立てではRIZINの5連敗といってもそこまで大きな差はなかったの意図が汲み取れる。
1997年にデビューし、23歳で史上最年少のUFC王者に輝いたことを含め、四半世紀にわたって日米のリングを肌で体感してきたジョシュだけに、この持論は素通りしてしまうのはあまりにも惜しい。
いずれにせよ、先にも述べたが、本当に日米でのニーズや最終目標が違うのであれば、今後のRIZINを見ていく上で大きな指標ともなり得る問題提起だった。皆さんはどう思いますか?