ダイバーが海で見つけた買い物かご、“持ち主”を調べてみたら…壮大な海流ルートに「大冒険ですね」
ダイビングしている最中に見つけた買い物かご。どこから来たのか調べてみたら…。ひょんなことから漂流物の意外な出発点と海流のルートを知った投稿が話題になっている。プロダイバーのtakuya@城ヶ崎インディーズさん(@takuya_sea)が静岡・伊豆半島の海中で見つけた買い物かごは、はるばる南九州から流されてきたものだった。買い物かごを回収したtakuyaさんに当時の状況を聞いた。
動画が大反響 海中でゆらゆらと揺れる買い物かごに「ニシムタ」の文字
ダイビングしている最中に見つけた買い物かご。どこから来たのか調べてみたら…。ひょんなことから漂流物の意外な出発点と海流のルートを知った投稿が話題になっている。プロダイバーのtakuya@城ヶ崎インディーズさん(@takuya_sea)が静岡・伊豆半島の海中で見つけた買い物かごは、はるばる南九州から流されてきたものだった。買い物かごを回収したtakuyaさんに当時の状況を聞いた。
「昨日伊豆半島にてニシムタの買い物カゴ発見。
調べたところ南九州のホームセンターとの事。
風に吹かれ黒潮に乗りまた風に吹かれたどり着いたのでしょうか。
もちろん回収しましたが、流れ着く生物だけでは明確にイメージできない季節来遊魚のルートを感じさせてくれてありがとニシムタ」
takuyaさんが投稿した8秒ほどの動画には、美しい青い海の中を漂流する黒いかごの姿を捉えている。かごには長時間の漂流でコケのようなものが生えているが、破損はなく、「ニシムタ」の文字がはっきりと見える。
静岡・伊東市在住のtakuyaさんはダイビングショップを経営している父の影響で、12歳でダイビングを始めた。ダイバー歴は約20年のベテランだ。
動画を撮影したのは1月20日。
「いつも通り、お客様をお連れしてダイビングをしているときでした。風の向き的に漂着ゴミの多くなるコンディションの日でした。場所は静岡県伊東市富戸、ヨコバマというダイビングポイントです。発見時は水面付近を漂っており、撮影時は少し引っ張り下ろしたタイミングでした」
買い物かご自体は、珍しい漂流物ではないという。しかし、この買い物かごに特別な興味が湧いたのは、かごに記された「ニシムタ」の文字だ。
「ダイビングのコースや安全を逸脱しない程度に日々ゴミは回収していますが、買い物カゴという大きいものであったため見過ごせず、回収したところ、『ニシムタ、、? どこ?』という感じでした」
地元周辺では聞いたことのない名前だった。takuyaさんは海中からかごを回収すると、肘にひっかけて陸に引き揚げた。
南九州からの漂流物と分かると、驚いた。ニシムタは鹿児島を中心に離島でも店舗を展開しているホームセンターだった。伊豆までの正確な距離は分からないものの、たとえば静岡ー福岡間の直線距離は750キロほど。買い物かごが南九州を始点として北上すれば、同等かそれ以上の距離を漂流していたことになる。
takuyaさんは、「伊豆半島には毎年夏から秋にかけて、季節来遊魚と呼ばれる本来南方にいる魚の幼魚たちが台風や黒潮に乗り、流れ着きます。そのルートが九州など南方から来ているのは知っていましたが、生物にはもちろんどこが産地か、という明記はありません。今回ニシムタのおかげで、やはり南方の生き物は黒潮に乗って流れ着くんだ! というイメージが明確になり、感動しました」。自身の長年の知見も裏づけられ、胸がすく思いがした。
投稿には「びっくり!」「すごいな~奄美にもニシムタあるけど、かなり海から遠いけどどこから旅に出たんだろう」「どこから流れて来たのか調べるということが素晴らしいです」「時の流れ、潮の流れ。ロマンを感じます」「海流のスケールを感じました!」「ニシムタの大冒険ですね」「海の不思議&掃除 配信ありがとうございます」「こういう仕事をされている方は、やはり海を愛しているんだなと感心しました」など、大きな反響が寄せられた。
「何気ないツイートにここまでの反響があると思わず、配慮が足らなかった点や、場所名が珍しかったというだけで店名をあげてしまい、ご迷惑をおかけしてしまっていないか少し心配です。ただ、コメントを見る限り、ニシムタというお店が地域にとても愛されていることを知り、そして海のスケールや海流のつながりについて驚き、興味を持ってくれている方が多く、ほっこりしています」と受け止めている。
「綺麗に洗ってニシムタにお返ししようかな」 買い物かご“返却”を計画
takuyaさんは普段、伊東市にあるダイビングショップで店長を務め、ダイビングの指導や水中ガイドを行いながら、SNSやYoutubeで情報を発信している。また、公演を通じて人と海をつなぐ活動を精力的に行っている。また、日本初の水中撮影チーム「CONTRAST」のメンバーで、ダイビング業界の若い世代と「日本の海を世界に発信すること」をメインテーマに、世界的なフォトコンテスト受賞を目指して活動している。昨年は「TOKYO international Foto award」で金賞を受賞した。
「漂着ゴミの種類については多岐にわたり、時には海外からのゴミを回収することもあります。買い物かごや漁具のかご、貨物かごなどが打ち上がったり、水中を漂っていることも稀に見かけます」と、豊かな海を守るための清掃活動にも従事している。
今回の買い物かごは「綺麗に洗ってニシムタにお返ししようかな」との意向も持っており、漂流した買い物かごから新たな物語が生まれる可能性もありそうだ。