“M-1決勝最下位”はおいしい? ダイヤモンドが明かす仕事の変化、TV出演は「昨年の10倍以上」

“漫才日本一”を決める年間最大のお笑い賞レース『M-1グランプリ』。2022年は過去最高の7261組が出場した。そんな中で17年結成の若手ながら決勝まで駒を進めたのがダイヤモンドの小野竜輔と野澤輸出だった。決勝では10位となってしまった2人に最下位という結果はおいしいのか、仕事量の変化などについて話を聞いた。

M-1出場後の変化について語ったダイヤモンドの小野竜輔(左)と野澤輸出【写真:ENCOUNT編集部】
M-1出場後の変化について語ったダイヤモンドの小野竜輔(左)と野澤輸出【写真:ENCOUNT編集部】

M-1決勝の漫才中に「どうにかしようって焦っていた」

“漫才日本一”を決める年間最大のお笑い賞レース『M-1グランプリ』。2022年は過去最高の7261組が出場した。そんな中で17年結成の若手ながら決勝まで駒を進めたのがダイヤモンドの小野竜輔と野澤輸出だった。決勝では10位となってしまった2人に最下位という結果はおいしいのか、仕事量の変化などについて話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 めっちゃ嫌でした――。笑顔でこの言葉を発した小野の目は決して笑っていなかった。

 東京・渋谷にある劇場のヨシモト∞ホールを中心に活躍しているダイヤモンド。22年『M-1』制覇を目標にダイヤモンド、シシガシラ、チェリー大作戦、黒帯の4組で漫才至上主義という名のライブをスタートしていた。そしてダイヤモンドはその年に決勝進出を果たした。2人は1年を振り返った。

「漫才至上主義とか毎月やっているツーマンライブがM-1に向けて行っていたライブだったので大事でした」(小野)

「M-1を意識したライブは、M-1向けのお客さんが多いと思うのでウケ方とかは意識しやすかったですね」(野澤)

 決勝の舞台でダイヤモンドは10位、最下位だった。あれから約1か月がたつが話を振ると2人は明らかに渋い顔をする。ネタ終わり後、審査が出ると野澤は口を開けたまま静止してしまっていた。

「緊張しましたね。すべってたし……。なんかどうにかしようって焦っていた感はありましたね。ウケると思ってやっちゃってたから。だからパフォーマンスは良くなかったですよね」(野澤)

「ネタをやってる時点から、これは絶対に伸びないって分かっていました。点数が出たときは逆に悔しくなかったです。それよりもどうしてネタが伝わらなかったんだろうというのが大きかったです」(小野)

 ダイヤモンドの決勝を巡ってはネタ順番も影響していた。それまで6組がネタを披露し、完全に温まっていた会場だったが、7番目はCM明けのタイミング。ダイヤモンドが登場した頃には静まりかえっていた。

「今までのM-1、10組ともウケるにはウケるんですけれど、10組ずっと最高潮というのはないんですよ。絶対に1回沈んで、また跳ねるんですよ。4、5、6番目が跳ねたときは絶対沈むぞと思ってはいました。良くないときに出ちゃったなというのはありますよね。実力はもちろん必要ですけれど、それ以外の要素も大事になってくるのが決勝なんだなと」(小野)

 そんな2人には心を動かした言葉があった。小野はマヂカルラブリーの村上、野澤は笑い飯の哲夫の名を挙げ、かみしめるように口にした。

「決勝が決まったときもダメだったときも1番最初に村上さんに連絡をしました。そこで『お疲れさま。でも、これでマヂラブルートに入っただけだから大丈夫』って言ってもらえたのが1番うれしかったですね。じゃあ優勝できるなって」(小野)

「後から聞いたんですけれど、(哲夫が)『俺が審査員だったら98点つけてた』ってすごい褒めてくれていたみたいで。M-1後に(審査を聞いている際の)顔が面白いってよく言われていたんですけれど、ネタについては誰も言ってくれなかった。それがうれしかったです」(野澤)

 自分たちの結果を決して悲観しているわけではない。コンビ結成5年で立った決勝の舞台をすでに思い出ではなく、経験としていた。

「もっとやりようはあったのかなと思いますね。結局はツメが甘かったです。決勝に行ったことで満足しちゃってた感じはあります。決勝がゴールになってしまった。ネタの余白がなかった。すべったときに取り返しのつかないネタだったので、もう少し余裕があれば良かったのかなと思います。それが分かっただけでも収穫ですよね」(小野)

2023年の目標は「M-1優勝」【写真:ENCOUNT編集部】
2023年の目標は「M-1優勝」【写真:ENCOUNT編集部】

“M-1決勝最下位”は武器になっているのか

 突き付けられた“M-1決勝最下位”。当日は悔しさを抑えることで必死だったというが、現在はコンビの武器のひとつにもなっていると笑顔を見せた。

「自分たちでも本当に困ったときは使っています(笑)。使える場面は多いんですよね。最下位の動きをしすぎても負けゲーになってしまうのでやりすぎないように今年の春くらいまではしがみついていこうかなと思います」(小野)

 仕事には変化はあったのか。最近では日本テレビ系バラエティー番組『有吉の壁』やTBS系『ラヴィット!』などにも出演。M-1決勝後の実感を口にした。

「劇場の仕事だけだったら去年も仕事をいただいていたので、忙しくなったかと言われるとそうでもないんです。でも今までの仕事にプラスしてやってこなかったテレビ、ラジオの仕事が増えました。テレビは1月の時点で去年よりも出させてもらっていますね」(小野)

「このまま出たら昨年の10倍以上にはなりますね。この前、松屋に行って声をかけられましたね。松屋でおじさんと握手しました」(野澤)

 さらに小野は「とりあえず自分に何が向いていて、何が向いていないかも今は分からない。だからとりあえずいただいた仕事を何でもやって、精査していきたいです。結局、自分たちがどういう人たちなのか、見ている人に分かってもらうことが大事だなと思いましたね。最初の1回が肝心だったりします」と分析。

 野澤も「どんな人か分かるのがやっぱりタレントじゃないですか。特徴があってこういう考え方をする人なんだと視聴者に伝わる。どうにか人間が出せたらいいなと思いますよね」と力強くうなずいた。

 そんな2人が今年の目標を宣言した。

「M-1優勝ですかね。今年行かないと逆にまずいなと、空いてしまうとね。それこそ決勝でウエストランドの井口(浩之)さんが『返り咲きの方がすごいからな』ってずっと言ってました。なので2年連続で行って返り咲きしたい。今年も決勝にいるってなると世間の認知も上がる。そうするともっと仕事の幅が広がってやりたいことができるんだろうなと思います」(小野)

「決勝を目標にすると決勝で終わっちゃう。決勝はもう経験したのでそれ以上ですかね。昨年は決勝で良くないパフォーマンスだったので、今年は自分の満足のいくパフォーマンスができたら。ウケたなと思えるようになりたいっすね」(野澤)

 お笑いの審査には明確な答えはない。だからこそ芸人は自分の芸に対して、悩み、もがく。しかし、頂点に立つ者の共通点は「間違いなく誰よりもウケている」ということ。突き付けられた最下位という結果に対し「めっちゃ嫌でした」と唇をかんだ男たちは虎視眈々と次の玉座を狙っていた。

□ダイヤモンド 野澤輸出(36)と小野竜輔(32)からなる吉本興業所属のお笑いコンビ。2017年コンビ結成。18年から4年連続で『M-1グランプリ』準々決勝進出、22年に決勝初進出し10位。21年に『おもしろ荘』優勝。

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