紅白歌合戦に感じた3つの特徴 テレビ離れ進む中での制作陣の工夫と努力とは
昨年大みそかに放送された第73回NHK紅白歌合戦に、これまでの紅白とのいくつかの違いを感じ、テレビ離れが進む中、制作陣の工夫と努力、挑戦を感じた。
関東地区の第2部の平均世帯視聴率は35.3%と前回から1ポイントアップ
昨年大みそかに放送された第73回NHK紅白歌合戦に、これまでの紅白とのいくつかの違いを感じ、テレビ離れが進む中、制作陣の工夫と努力、挑戦を感じた。(文=中野由喜)
まずはバランスのいい絶妙な曲の流れ。序盤から中盤過ぎまで若者に支持されるアーティストの次は中高年が好きであろう出場者というように交互に登場した。中高年には聴きなれない若い実力派アーティストの曲を知る機会にもなり、さらには魅力的に感じるようなバランスのよい配置。若者も中高年の視聴者もテレビの前から離れさせないという制作陣の工夫を感じた。
続いて、アーティストが歌唱する際、紅白を問わず他の出場者たちがバックで盛り上げるケースが例年よりもかなり多かった。コロナ禍のためか第73回はバックダンサーを使った演出はわずか数組で、ほとんどは出場者たちが、歌唱するアーティストをバックで盛り上げていた。その結果、ステージが一体感に包まれる温かな印象を得た。コロナ禍前はNHKホールのロビーや楽屋周辺に大勢のバックダンサーらが待機し、密の状態だった。
3つ目はさまざまな企画の内容自体がほぼ歌だったこと。例年はコントや芝居、VTRなどの映像が織り込まれるケースが多かったがシンプルに、かつ、しっかりと曲を聴かせていた。そもそもだが、特別企画に登場するアーティストたちがユーミン、桑田佳祐らと、とても豪華だった。11月の出場者発表では、初出場者の顔ぶれから若い視聴者を意識した紅白になる印象があったが、その後、続々と発表された特別企画の出場者は中高年が喜ぶ顔ぶれだった。結果的に幅広い世代がしっかり歌を楽しめる形だった。
ビデオリサーチによると、第2部の関東地区の平均世帯視聴率は前回を1ポイント上回る35.3%だった。テレビ離れが進む中、紅白歌合戦の形も変化していかないと、平均世帯視聴率40%の大台に届くのは難しい時代がくるかもしれない。ユーミンが自身と同じくデビュー50周年の郷ひろみに「60周年もここでお会いしたいですね」と語りかけていた。10年後、紅白がどう変わっているのか楽しみだ。