山田裕貴「この映画こそ代表作に」 「東リベ」ドラケンで脚光も「悔しさ感じる」理由
俳優の山田裕貴(32)が主演した映画「夜、鳥たちが啼く」(城定秀夫監督)が公開中だ。最近では、映画「東京リベンジャーズ」(2021年)のドラケン役が高く評価されたが、「この映画こそ代表作と言われたい」と力を込める。その理由は?
城定秀夫監督作品で見せた山田裕貴の真骨頂
俳優の山田裕貴(32)が主演した映画「夜、鳥たちが啼く」(城定秀夫監督)が公開中だ。最近では、映画「東京リベンジャーズ」(2021年)のドラケン役が高く評価されたが、「この映画こそ代表作と言われたい」と力を込める。その理由は?(取材・文=平辻哲也)
最新の主演映画「夜、鳥たちが啼く」は「そこのみにて光輝く」などで知られる作家・佐藤泰志さんの短編小説が原作。主人公は、若くしてデビューするも、その後は鳴かず飛ばず、恋人との生活もうまくいかない小説家の慎一(山田)。恋人との破局後、友人の元妻でシングルマザーの裕子(松本まりか)と幼い息子アキラ(森優理斗)との半同居生活をきっかけに新たに歩み始める物語だ。
「みなさんが持たれている僕のイメージは明るいキャラ、ヤンキー役だとは思うんですけど、自分の中では正直、こういう役柄の方が得意と感じています。相手が放ったものを受け取って、それをリアルに返すことが一番好き。こういう作品も代表作の一つとして並んでほしいです」と言い切る。
主人公の慎一は元恋人にはきつい言葉を投げかけ、時折、行き場のない怒りから暴力沙汰も起こすなど自分勝手な面もあるが、裕子やその息子との交流では優しさも見せる。人間の弱さ、やさしさを合わせ持っている人物で、山田の真骨頂といえる。
撮影は昨秋、フジテレビ「志村けんとドリフの大爆笑物語」の志村けん役を演じた後だった。
「ドラマを撮り終わって、完全燃焼していた後です。慎一というキャラクターに対してはとても理解ができました。汚い感情、嫉妬心があって、人間がよく表れている。それらは自分も持っている感情だったので、共感ばかりでした。僕の大好きな漫画『呪術廻戦』でも『愛ほど歪んだ呪いはないよ』という名ぜりふがありますけど、慎一自身は純粋に愛して欲しかったんだろうと思います」
元恋人は「慎一のために」と行動するが、結果、慎一には届かない。それどころか、慎一は情緒不安定になって、元恋人の浮気を疑ったり、暴力的な言動に出てしまう。
「それは、なんで分かってくれないんだ、なんで愛してくれないんだ、という心の叫びだったと思うんです。慎一がそういう(不安定な)状態だったなら、支えるのが愛じゃないか、と。元彼女も気づくべきだったんじゃないかな。ただ、自分が結婚したいということを相手にぶつけてしまうのは、愛なの? って思うわけですよ」と主人公の気持ちも代弁する。
23年もNHK大河ドラマ「どうする家康」やフジテレビ「女神の教室-リーガル青春白書-」など出演作が目白押しの山田。飛躍のきっかけになったのは「東京リベンジャーズ」だが、今ではそのドラケン役がひとつの壁にもなっているという。
「ありがたいことにお会いする方々がたくさんドラケンを褒めてくださるのですが、僕自身は、他にもいろんな役をやっているし、僕はもうその先のことを考えているから、少し悔しさも感じているんです。ただ、演じた後は『よかった』と言われないといけないですが、ある程度、時間がたったら、自分の中では一区切りなんです。俳優というのは、その繰り返しだと思っています」
演じる役は主役も脇役も関係ないという。
「どの立ち位置も一緒だと思っています。極端に言えば、誰でもいい。生きていれば、誰もが主役だと思っていますので。ただ、この映画は今までで一番、ちゃんと届けばいいなと思っているかもしれないですね。それは単純に自分のためでもあるし、興行のためでもあります。というのは、初めて公開初日に気になってしまって劇場情報をチェックしたんです。席が埋まっているかなって。こんなことをしたのは初めてでした」。その言葉に、この映画にかける強い思いを感じた。
□山田裕貴(やまだ・ゆうき)1990年9月18日、愛知県出身。2011年「海賊戦隊ゴーカイジャー」(テレビ朝日系)で俳優デビュー。22年エランドール賞新人賞を受賞。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ(16~19)、「あゝ、荒野 前篇・後篇」(17)、「あの頃、君を追いかけた」(18)、「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」(21)、「東京リベンジャーズ」(21)、「燃えよ剣」(21)、「余命10年」(22)、「耳をすませば」(22)。「東京リベンジャーズ2」(23)の公開が控えている。