「生身で到底できないことを可能に」 花譜、“バーチャルシンガー”として悩み、突き抜けた現在地

日本テレビサンバリュ枠にて、11月6日に放送された「歌のシン・トップテン」。番組内では、昭和ポップス売上ランキングの楽曲を、10~20代が改めて選びなおした「シン・トップテン」から、“新世代アーティスト”がカバー歌唱。そこで、山下達郎によるクリスマスソングの定番曲「クリスマス・イブ」のカバー楽曲を披露したのが、18歳のバーチャルシンガー「花譜(かふ)」だ。

花譜
花譜

バーチャルで活動している私に依頼してくれたのがうれしい

 日本テレビサンバリュ枠にて、11月6日に放送された「歌のシン・トップテン」。番組内では、昭和ポップス売上ランキングの楽曲を、10~20代が改めて選びなおした「シン・トップテン」から、“新世代アーティスト”がカバー歌唱。そこで、山下達郎によるクリスマスソングの定番曲「クリスマス・イブ」のカバー楽曲を披露したのが、18歳のバーチャルシンガー「花譜(かふ)」だ。

 2018年10月からYouTubeやインスタグラムを中心に活動をスタートさせ、オリジナル曲やカバー曲をコンスタントに発表。いまやYouTube登録者は74万人、ツイッターフォロワーは22万人(※12月23日現在)、そして8月にはバーチャルシンガー初の日本武道館公演と、比類なき道を切り拓いている。「クリスマス・イブ」という“国民的ソング”をカバーしたことの感想、このスタイルで活動をすることになったきっかけをインタビューした。(取材・文=東田俊介)

――先日、37年連続オリコンランキングトップ100に入るという快挙を達成した「クリスマス・イブ」ですが、カバーのお話を聞いたとき、どう思いましたか?

花譜「“日本のクリスマスソングと言えば……!”っていう曲じゃないですか。お話をいただいたのももちろんですが、バーチャルで活動している私に依頼してくれたのがうれしかったですね。雪が結構降るところで生まれたんですけど、子どもの時に見てた情景を浮かべながら、物悲しさとか切なさみたいなものを意識して歌わせていただきました」

――昭和~平成の“懐メロ”みたいなものは聴く機会はあるんですか?

花譜「母がすごいSMAPが好きで、初期の頃の曲を聴いていいなと思ったり、最近は、周りの方からいろいろ教えていただいたりとかして、関連曲を聴いたり……徐々に後追いしはじめているところですね」

――ミュージックビデオ(MV)も、世界中のクリスマスのリアルな光景越しに歌う花譜さんの組み合わせが幻想的でした。ツイッター応募で集まった200人が、ARアプリを使って撮影したとか。

花譜「そうなんです。みなさん撮影が上手ですし、私が本当にその場所にいるみたいな感じで、世界中いろいろなところに連れて行ってもらえて、すごくうれしかったです」

ただ歌うことが好きだった

――ENCOUNTでは初めてインタビューさせていただくので、順に活動経緯を振り返りたいのですが、もともと歌手、クリエイターなど「なりたいもの」の青写真はあったんですか?

花譜「将来については全然考えていなくて、ただ歌うことが好きだったのと、インターネットの『歌ってみた』でボーカロイドの存在を知ったことで、自分でも歌を投稿することはしていました。始めた当初は、自分が世界で1番歌がうまいと思っていたんですが(笑)、周りにはもっとうまい人がたくさんいて、負けじと投稿活動を続けていたら、プロデューサーさんから声をかけていただいて、いまにつながります」

――「バーチャルシンガー」への道に進んだのは、なにかきっかけがあったんですか?

花譜「そのプロデューサーさんが、バーチャルシンガーの存在を教えてくれて、それまで全然知らなかったんですけど、どんどん興味が湧いてきて、花譜として活動していこうと。音楽以外の世界を知ることもできるし、決断して良かったなって」

――音楽以外というのは?

花譜「なんて言うんでしょう……先ほどのMVの話のように、すぐ世界中に行けちゃうみたいな、生身の自分だと到底できないことが可能になるっていうのが魅力的ですよね。体がどんどん広がっていく感覚が味わえるというか」

――そういう意味では、「初めてバーチャルシンガーとして武道館に立った」っていうことも大きなトピックになったんじゃないですか。

花譜「そうですね。ただ、花譜としての活動を続けてきて、“何も起こらなかった期間”が私の中では全然なくて、武道館ももちろんすごいことですけど、まだ通過点のひとつなのかなと思っています」

「バーチャル」「リアル」どちらも“自分”だからこその悩み

――バーチャル上での活動は、基本刺激的なことのほうが多いと思うんですが、「世間の評価」と「自分がイメージしていた評価」に乖離(かいり)が生まれることもあるのではないかと。

花譜「それがつらかった時期もあったんですけど、印象って人それぞれのフィルターを通すと全然違うものだから、いろんな意見を楽しむべきだなって、いまは切り替えられていますね」

――今年、高校卒業という出来事もあって、卒業記念配信ライブ「僕らためいきひとつで大人になれるんだ。」も行っていました。環境が変わるとともに、マインド面で変化はありましたか?

花譜「いま大学に通ってるんですけど、勉強がすごく楽しくて、一人暮らしもはじめて、歌以外にしなければいけない時間が増えてきたんです。だからこそ、歌の時間に集中できるし、聴いている人たちにもっといい曲を届けたいっていう気持ちになります」

――前例というものが少ないジャンルだからこそ、今後どんな活動展開になっていくのか気になります。

花譜「自分でも想像がしにくいです(笑)。時代の最先端で、歌やライブでの表現だったり、伝え方みたいなものを探っていければいいなと思います」

○V.A.「シン・カバー produced by 歌のシン・トップテン」収録曲
01.恋のダイヤル6700 / MANON
02.青い珊瑚礁 / 上國料萌衣(アンジュルム)(Prod. yonkey)
03.さよなら / 井上苑子(Prod. yonkey)
04.クリスマス・イブ / 花譜

音楽ストリーミング版:https://linkco.re/PAQFsU77
ダウンロード版:https://linkco.re/GnQyqu5b

□花譜(かふ)次世代アーティストの最先端を走る18歳のバーチャルシンガー。2018年10月より素顔を明かさずに3Dモデリングされたアバターを使って活動している。YouTube総再生回数は1億5千万回を超え、国内外に熱狂的なファンコミュニティを持つ。

ホームページ:https://kamitsubaki.jp/artist/kaf/
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