渡辺徹さんを笑顔で偲んだ35分 郁恵、裕太の会見に感謝し、かつての「当たり前」を反省【記者コラム】
11月28日に敗血症のため、61歳で亡くなった渡辺徹さんの妻でタレントの榊原郁恵(63)と長男で俳優の渡辺裕太(33)が5日、東京・目黒のホリプロで会見した。2人は、渡辺さんの遺影を前に故人の思い出を語った。芸能人が冠婚葬祭で記者会見する機会は激減したが、この日は、笑い声、ツッコミありのほのぼのとした35分となった。取材歴30年の記者は、会見に至るまでの経緯も含め、あらためて取材する側とされる側の関係を考えた。
取材歴30年の記者が感じたこと
11月28日に敗血症のため、61歳で亡くなった渡辺徹さんの妻でタレントの榊原郁恵(63)と長男で俳優の渡辺裕太(33)が5日、東京・目黒のホリプロで会見した。2人は、渡辺さんの遺影を前に故人の思い出を語った。芸能人が冠婚葬祭で記者会見する機会は激減したが、この日は、笑い声、ツッコミありのほのぼのとした35分となった。取材歴30年の記者は、会見に至るまでの経緯も含め、あらためて取材する側とされる側の関係を考えた。(ENCOUNT編集部ディレクター・柳田通斉)
郁恵は会見の冒頭、50人以上の取材陣に感謝の意を示した。
「世の中はサッカーで盛り上がっている中、渡辺徹のことでこうやって皆さんにお集まりいただいたことが、家族としてすごくうれしいです。そして、渡辺徹のことを話題にしていただき、家族は『渡辺徹は偉大だったんだ』と思えるものですから、お集まりいただいたことをまずは感謝しております」
感謝しないといけないのは、メディア側だった。近年、こうした会見は滅多にないからだ。著名人の冠婚葬祭に関する情報は頻繁に発信されているが、文書やSNSでのコメント発表で終えるのが通常になった。
かつては訃報が入ると、記者はすぐに故人の自宅、もしくは遺体が安置されている病院に派遣された。私も新聞記者時代に、それを経験してきた。デスクとしては、「とりあえず、行ってこい」と記者に指示した。
だが、今は違う。2年前、有名俳優が突然亡くなったことに境に、「こんな時に自宅に押し掛けるべきではない」の声が高まった。結果、著名人の自宅を背にテレビのリポーターがマイクを持つことは減り、活字メディアも押しかけ取材を自重し始めた。
今回、訃報発表にあたり、渡辺が所属した文学座から「自宅へのご弔問、取材などはご家族の心中をお察し頂きご遠慮くださいますよう、切にお願い申し上げます」と要請があったが、もはや、「それは当然」の感覚もある。一方で、郁恵、裕太の渡辺さんへの思いは聞きたく、訃報の発表文に書かれていた「榊原郁恵、渡辺裕太は後日、会見を予定」と目にし、私は素直に「ありがたい」と思った。
会見が始まる前、郁恵が所属するホリプロの関係者は、「自宅などに取材に来られるメディアの方はおられず、お陰さまで家族葬も滞りなく行われました。感謝申し上げます」と話した。郁恵も、「通夜が終わってから帰るときに、不謹慎なんですけど、祭壇をバックにみんなで笑顔で写真を撮りました」と言った。家族で穏やかに渡辺さんを送り出せたようで、心から「良かった」「これでいいんだ」と思えた。
そして、押しかけ取材もしてきた過去の自分を反省し、時代の変化を再確認した。これからも事件、事故の場合は、現場に駆け付けて事実を確認することが重要になるだろうが、そこでも遺族の思いを大事にする。そんな人として当たり前のことを胸に刻み、今後も取材を続けていきたい。