【週末は女子プロレス♯78】元アイドルレスラー・ひめか、恵まれた身体を活かして飛び込んだプロレス界
スターダムのひめかは、かつてアイドルグループに在籍していた。活動期間中、全日本プロレスの応援大使としてリングに上がることとなりパフォーマンス、そこで初めて、プロレスに触れた。最初は正直嫌々な気持ちでリングに立ったというのだが、リング下から試合を見ると、一瞬でプロレスに魅力に引き込まれた。「レスラーの人って人間じゃないと思いました。闘ってる姿を見て感動したし、すごいなというのが第一印象です」。すると、地方まで足を運びいろいろな団体を見るようになった。アイドルになる前、アイドルの追っかけをしていた頃のように――。
スターダム参戦でカルチャーショック「みんな意識が高い」
スターダムのひめかは、かつてアイドルグループに在籍していた。活動期間中、全日本プロレスの応援大使としてリングに上がることとなりパフォーマンス、そこで初めて、プロレスに触れた。最初は正直嫌々な気持ちでリングに立ったというのだが、リング下から試合を見ると、一瞬でプロレスに魅力に引き込まれた。「レスラーの人って人間じゃないと思いました。闘ってる姿を見て感動したし、すごいなというのが第一印象です」。すると、地方まで足を運びいろいろな団体を見るようになった。アイドルになる前、アイドルの追っかけをしていた頃のように――。
子どもの頃は「優等生タイプでしたね」と、ひめかは当時を振り返る。小学生のときから生徒会に参加し、高校では生徒会長もつとめた。「生徒からの苦情を先生に伝えたり、先生から言われたことで生徒を注意したり。嫌われ役でしたけど(笑)」。小学生時代からすでに身長は高く、男子を含めても、もっとも大きな方だった。そのため運動部からの誘いも多かったが、生徒会での役割を重視しスポーツはほとんどしてこなかった。そんな彼女の興味を引いたのは同性のアイドルグループである。
「チャオベッラチンクェッティの岡田ロビン翔子ちゃんが大好きで、地元の東北から関西、東京にまで遠征するくらい大好きでした。そのうち好きの限度を超えて近づきたいなと思い、自分もアイドルを目指したんです」
ただし、同じグループに入ろうとは思わなかった。これもまたファン心理。一緒になるのではなく、同じ空気を吸いたかった。「たとえば同じライブに参加するとか、同じ現場で働くとか」。地元と東京を往来し、スルースキルズというグループに加入した。念願の共演を実現させる幸運もあった。だからアイドルは20歳で卒業する、と決めていた。
ところが、その直前にグループが解散。自分の意志ではないところからもこの先どうしようかと考えた。そこで思い浮かんだのが、大好きになっていたプロレスだった。実際、リング上で歌って踊る長身の彼女は頭一つ飛びぬけて見えた。アイドルらしからぬ大きさから、レスラーと間違えられることもしばしばだった。
「会場でビラ配りとかしてると、『どこの団体の方ですか?』とか、『練習生ですか?』とかよく聞かれました。そのときは絶対にならないと思ってたんですけど、グループが解散となってセカンドキャリアを考えたときに、自分の道はこれなんじゃないかなと思って、秋山(準)さんにお願いしたんです」
しかし、秋山の反応は鈍かった。秋山のプロレスはジャイアント馬場さんを継承するガチガチの王道プロレス。女子プロレスと縁が薄いのはもちろん、秋山は父親目線で彼女のことを心配してくれたという。
「『やめな』と言われましたね。ただ、自分の気持ちは揺るがないので基礎から教えてくださいと意思を伝え続けました」
彼女の決意は揺るがず、結局は秋山が折れる形で全日本道場でのトレーニングが始まった。デビューは2017年12月24日、ビギニング新木場大会での青野未来戦。2戦目が翌18年1・25新木場での万喜なつみ(現なつぽい)戦だった。なつぽいとはのちにスターダムで再会、また、ひめかが女子プロレスにハマるきっかけになったひとりでもある。
アクトレスガールズで活躍していた彼女だが、「自分のやりたいプロレスとアクトレスのプロレスに違和感を覚えて」、20年3月に退団。スターダムの6・21新木場にジュリア率いるドンナ・デル・モンドの新メンバーとして姿を現し、リングネームも有田ひめかから「ひめか」へと改めた。また、大胆な肉体改造も成功させ、決意のほどを示してみせた。
引き締まったボディーは172センチの長身をよりいっそう引き立てた。ジュリアの指導でトレーニングに励み、コロナ禍で閉鎖されていた道場が使えるようになると朱里から実践訓練。そして、「スターダム参戦にあたり、道場でプロテスト的なものをやったんですよ。それを乗り越えてきたから、自分の中では再デビューのような感覚でしたね」。
目指すは優勝の栄冠
また、ひめかにとってスターダム参戦はある意味でカルチャーショックでもあったという。「みんな意識が高いです。自分はプロレスラー、自分はスターダムの選手だという意識が高くて、まわりにどう見られるかとか、自分がどうしなきゃいけないかとか、どうやったらこの立ち位置に行けるかとかを常に考えてる。常に頭をフル回転させて、そして体も使ってるなというのをすごく感じましたね」
まずは、ついていくのに必死だった。しかしながら、8月スタートのシングルリーグ戦「5★STAR GP」では初エントリーにして決勝進出。記憶にないくらいの必死さが、かえって原動力になったとひめかは苦笑する。優勝こそ逃したものの、このシリーズでひめかは大きなインパクトを残してみせた。また、スターダム参戦で出会ったのが、タッグパートナーとなる舞華である。舞華とは「舞ひめ」として活動。21年2・14後楽園では2度目のチャレンジにしてゴッデス・オブ・スターダム王座を奪取し、タッグのベルトでスターダム初戴冠を成し遂げた。10・3名古屋ではなつぽいを加えた「舞ひめぽい」で6人タッグ王座のアーティスト・スターダムを獲得。このタイトルは中野たむ&白川未奈&ウナギ・サヤカ組の7度と並ぶ最多防衛記録を樹立する。ひめかはチームプレーヤーとして、ユニット戦線の中心にいると言えるだろう。
しかしながら、シングル王座にはなかなか手が届かない。今年は4・29大田区で朱里のワールド・オブ・スターダム王座に挑戦、8・21名古屋ではハプニング的に上谷沙弥のワンダー・オブ・スターダム王座へ急きょ挑んだ。いずれも敗れたものの評価は高く、新日本が新設したIWGP女子王座決定トーナメントではDDM代表としてエントリー。林下詩美に敗れ初代王者の座は逃したが、IWGPとなるとIWGPヘビー級王座が思い浮かぶだけに、大型のひめかが王者になったらどうなるのだろうと想像せずにはいられない。
IWGPについては今後に期待するとして、今年の5★STAR GPでは舞華とのパートナー対決がシリーズのベストマッチと評された。それだけに、“ひめか待望論”が日に日に大きくなっているのだ。
そんな状況下で現在おこなわれているのが「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグ戦」。ひめかは3回目の出場で、舞華とのエントリーは意外にも初めてだ(20年は朱里、21年はなつぽいと組んで出場)。舞ひめのように定着しているタッグもあれば、団体の枠を超えたチームや即席タッグもある。バラエティーに富んだ陣容にあって、だからこそふだんから組んでいる舞ひめこそが優勝すべきとの思いは大きい。
「スターダムに来てからずっと舞ひめでやってきて、お客さんの中でも定着してるので、舞華とのタッグで出場すれば自然とやる気も入るし、楽しいなと思います。また、ゴッデス(のベルト)を巻いたことがあるからこそ、優勝以外にはないと思いますね」
開催中のタッグリーグ戦は終盤を迎え、あとは2大会(12・3高田馬場、12。4幕張)を残すのみ。さいわい、舞ひめは決勝進出を狙える位置につけている。ふたつの公式戦を連勝すれば、決勝へと駒を進めることができるのだ。12月24日にデビュー5周年を迎えるだけに、節目としても優勝の栄冠を手に入れたい。
「5周年の節目という意識はありますね。25歳で自分が満足するところまでいってたらやめると思ってたんですけど、あっという間だし、まだまだ満足はしてないです。自分的にはスターダムに来てからがスタートだなと思ってるので、プロレスラーひめかとしては、まだまだひよっこな気持ちです。自分って『欲がないね』とよく言われるので、ひめかというプロレスラーにもっと欲をもって、自分が何をしたいか、自分がどうしたいかというのを主張していきたいと思います。それができたら絶対に結果がついてくると思うんですよ。そうすれば、届かなかったシングルのベルトにも手が届くのかなって思います」