ミュージカル女優・熊谷彩春のルーツは海外生活 「東京ラブストーリー」で魔性の女に挑戦
ミュージカル女優の熊谷彩春(22)が柴門ふみ原作のコミックを初ミュージカル化した「東京ラブストーリー」(11月27日~12月18日、東京建物 Brillia HALL、演出・豊田めぐみ)で、関口さとみを演じることになった。「レ・ミゼラブル」(2019年)では史上最年少の18歳でコゼット役を射止めた新鋭が、ドラマ版で有森也実(57)が演じた役をどう演じるか注目だ。
「東京ラブストーリー」で魔性の女に挑戦
ミュージカル女優の熊谷彩春(22)が柴門ふみ原作のコミックを初ミュージカル化した「東京ラブストーリー」(11月27日~12月18日、東京建物 Brillia HALL、演出・豊田めぐみ)で、関口さとみを演じることになった。「レ・ミゼラブル」(2019年)では史上最年少の18歳でコゼット役を射止めた新鋭が、ドラマ版で有森也実(57)が演じた役をどう演じるか注目だ。(取材・文=平辻哲也)
「東京ラブストーリー」は4人の若い男女が繰り広げるドラマ。1991年には、鈴木保奈美(赤名リカ)、織田裕二(永尾完治)、有森也実(関口)、江口洋介(三上健一)の配役で、90年代を代表するトレンディードラマになった。
「リアルタイムでドラマを見ていた母が一番興奮して、喜んだと同時に『ミュージカルになるんだ』とびっくりしていました。そこから一緒にドラマを見ましたが、すごく面白かったです。さとみにフォーカスしながら、最初に原作、次にドラマを見たのですが、共感できる部分もたくさんあって、舞台が楽しみになりました」
関口さとみは、帰国子女で奔放な性格の赤名リカとは対照的なもうひとりのヒロイン。高校時代の同級生の永尾完治、三上健一の間で気持ちが揺れ動く。ドラマ版では魔性ぶりが話題にもなった。
「さとみ自身はそういう自覚がなく、東京で生きていくためにすごく苦労して、それがゆえに背伸びしてしまう、恋愛をする中で本当の自分の居場所を探している。私自身も、本当の自分はまだ理解していないので、共感できました。ミュージカル版では群像劇として描かれいて、毎回違った視点で見ることもできるので、4回見てほしい。Wキャストなので、8回ですかね」と笑い。
音楽は、本年度トニー賞ベストスコア賞ノミネートのジェイソン・ハウランドが全編書き下ろしで、ドラマ版の主題歌「ラブストーリーは突然に」(小田和正)は使われない。「母からも聞かれましたが、ミュージカル版ではないんですよ。でも、音楽があるからこそ、4人それぞれの心情がお客さんにストレートにきっと届くだろうと感じています。4人の別々の感情を歌っている曲があるのですが、ミュージカルでしか表現できない強みだなと思っています」。
完治と三上のどちらを選ぶかと聞くと、「本当に永遠のテーマだと思います。結婚するなら、完治だけど、三上のような人にひかれちゃうのもわかります。だから、私はまんま、さとみなのかな。生い立ちは全然違うけども、共感ポイントがすごくあるんですよ」。
ミュージカルを志したきっかけは3歳で見た「ライオンキング」
熊谷がミュージカルを志したのは、父の仕事の関係で、2~4歳まで英ロンドンで過ごし、3歳のときに家族でミュージカル「ライオンキング」を見たのがきっかけ。
「しゃべる前から歌っていたんじゃないかと思うくらい歌うことが大好きでした。見たら、ビビッと来てしまって、将来はミュージカル女優以外を考えたことが1回もありません。母は高校までダンスをやっていて、父も音楽が好き。常に家ではみんなで歌ったりしていました」
帰国後は小5のときからジョイキッズ・ミュージカル「冒険者たち~この海の彼方へ~」(2011年、13年)、劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」などに出演。中学生のときにマレーシアで2年間暮らしたことが転機になった。
「私は『日本に残ってミュージカルをやりたい』と泣いていたんですが、当時のミュージカルの先生からは『役者になりたいんだったら、広い世界を見てきて、いろんな経験をすることが役者の糧になる』と背中を押されたんです。行ってみたら、本当に全く違う世界で楽しすぎて、日本に帰国するのが嫌になったくらいでした。マレーシアは多民族で宗教も言葉もごちゃ混ぜの国。外国人でもすごく住みやすい。公用語は英語ですが、みんな適当な英語を話しているので、恐れずにどんどんしゃべれたこともすごく良かったです。時間はアバウト。20分遅れて全員集まったら素晴らしいみたいなレベル。そんなおおらかな国民性もすごく合っていました」
高3のときに「レ・ミゼラブル」のコゼット役に抜てきされ、大きな注目を集めた。
「小さい頃から本当に大好きだった作品だったので、夢みたいでした。最初は信じられない思い。マネジャーさんからの電話を切ってから、だんだん実感が湧いてきた。キャスト解禁になって、周りの反応を見て、本当に私に決まったんだと思いました。コゼットの曲に、『私の人生が始まった』という歌詞があるんですが、まさにその通りの気持ちでした」と振り返る。
目標とするのは、ブロードウェイ俳優のローラ・オスネス、ケリー・オハラ。「声質が好きです。お2人のような声を自由に操れる女優さんになれたら。今はいろんな役を演じたいと思っていますし、映像でも演じてみたいし、得意な英語を生かして海外の舞台に出てみたい。たくさん夢はありますね」。若き実力派はさらなる飛躍を誓った。
□熊谷彩春(くまがい・いろは)2000年4月2日、千葉県出身。17年8月、バーグリー音楽大学夏期講習にて受講者100人の中からトップ5人に選ばれ、Christy Altomareより直接歌唱指導を受ける。17年1月、英語歌唱コンクール 全国大会 Advanced部門 最優秀賞受賞。16年、東京国際声楽コンクール ミュージカル部門にて史上最年少で第1位受賞。15年12月、Kate Sadler Award in Malaysia グランプリ受賞。163センチ。