デビューから23年目を迎えた「花＊花」が、10月にミニアルバム「5B2H」をリリースした。「帰る場所」（＝ゴー・バック・トゥ・エイチ）をテーマにした今作には“おのまきこ”と“こじまいづみ”にとっての大切な故郷（＝ルーツ）が曲として描かれている。そんな作品から見えてくる2人の今とは？（取材・構成＝福嶋剛）

――メジャーレーベルに復帰して2作目となるミニアルバム「5B2H」が完成しました。

おの（まきこ）「昨年2021年にコロナ禍で思うように全国ツアーができない状況だったので旅に出かけたいという気持ちを曲にしてミニアルバム『52R45』(ゴー・トゥー・アール・フォーティーファイブ)をリリースしました。今は、気を付けながらですが、少し旅ができるようになって今度は、今まで旅先で出会ったあの場所、あの人のところに戻りたいとか、そういった気持ちが強くなっていて『戻る』とか『帰る』というのをテーマにしたアルバムを作りました」

――「5B2H」のHは“Home”などの意味も含まれているそうですね？

おの「そうですね。あと“Here”（この場所）とか“Heart”（心）、“Hana＊Hana”（花＊花）とか（笑）。いろんな故郷に戻りたいという曲を集めました」

――それではおのさん、こじまさん、それぞれの「故郷」が入っている収録曲についてお聞きしていきます。1曲目「Shenandoah」は19世紀から歌われているアメリカ民謡のカバーですね。

こじま（いづみ）「これは私が20歳の頃、知り合いのミュージシャンが住んでいたアメリカにホームステイして、いろんなところに行って音楽を聴いていた時期があるんですが、そこに流れているシェナンドー川という大きな川を眺めていたら急に私の故郷の兵庫県の加古川と重なって。この曲を聴くといつも故郷っていいなって思い出すんです。きっとみなさんにもそんな景色があるだろうなって。まるで映画のプロローグみたいですし1曲目にしたんです」

――こじまさんの20歳の頃の「故郷」なんですね。当時からこういったルーツミュージックがお好きでしたか？

こじま「当時はルーツ音楽に対してそんなに強い思いはなかったんですが、いろんな音楽と出会う中でこういったアメリカンフォークみたいな音楽が好きなんだなって気が付いて、4曲目の『Pigeon blood』はまさにそんなルーツを掘り下げてアイリッシュとかケルト音楽とか私の好きな音楽を奏でたいと思って、今回いろんな楽器を使ってレコーディングしたんです。楽しかったですよ」

――そしておのさんが書いた3曲目の「またいつか」。簡単なひと言ですけど、「また逢いたい」という希望だったり、「幸せでいてね」という願い。そして「これが最後かもしれない」という別れなど、年齢を重ねれば重ねるほど、その思いの数は増えていきますよね。

おの「何気ない言葉なんですけど、いろんな意味が含まれていますよね。私たちも学生時代は当たり前のように『また明日ね』って使っていましたけど、こうやってツアーに出ていろんな人と知り合いになって、でも、コロナ禍も含めて、いつ会えるか分からないから『じゃあ、またいつか』って言うことも多くなってきました。実際にもう2度と会えなくなってしまった人もいたりして。そういった別れについて書いた曲です」

――5曲目の「旅の終わり」もおのさんの作品です。歩んできた道を振り返りながら自分の中の記憶（＝故郷）に戻る、そんな印象を曲から感じました。

おの「今までしてきたたくさんの旅を人生に置き換えたとき、大切な人や美味しいもの、美しい景色……今までそういった旅先の記憶をどれくらい覚えているのかな？とか、旅の終わりが訪れたときにどんなふうに回想するんだろうって想像しながら歌詞を書いていったんです」

――改めてお二人にとっての旅とは？

こじま「旅に出ると時間の縮尺がだいぶ変わるんです。朝起きて夜寝るまでの普段の生活配分とはまったく違って、たとえば初めて行く場所なんて行きはとっても長く感じるんです。島国に行くと都会とは違い、ゆったりとした時間が流れていますし、ライブの時間はどこでもすごく濃密な時間になりますし、反対に帰りはものすごく早いんです。『ええ？　もうお別れですか？』って。だから同じ距離でも体感が違って、そこが面白くてツアーはやめられないんです」

――ここ数年はコロナ禍で旅ができませんでしたね。

おの「2020年は私たちのデビュー20周年だったんです。ずっと前から20周年はなにをやろうっていろいろ計画をしていたんですがすべてなくなってしまい、代わりに配信ライブをさせてもらったんです。それはそれで工夫して面白かったんですけど、昨年ようやくお客さんの前でライブを再開した時にやっぱり私たちのライブってお客さんの拍手や笑顔、泣いてる姿とか、そういうすべてが目の前で起こってこそ成立するんだなってすごく実感しました」

――6曲目の「最後の散歩」は家族にとって大切なペットについての歌でしょうか？

こじま「去年の春に大切な犬が亡くなって息子と一緒に15年ずっと犬を散歩させていたコースを歩いたときの歌なんです。今回のアルバムテーマが決まった時に『これは入れなあかん』と思って。最初はもうちょっとぼやかして歌おうかと考えたんですが、ペットを飼っている人ならこの喪失感は分かってもらえるかなと思ってストレートな気持ちを書きました」

――息子さんは現在中学生とお聞きしました。

こじま「今3年生でヒップホップばかり聴いてます。トラヴィス・スコットとかカニエ・ウエストとかものすごく詳しくて刺激になりますね。サブスクのプレイリストを共有しているので息子と車に乗るとブンブン響かせて音楽流してます（笑）」

――「花＊花」のYouTubeチャンネルで息子さんから「もっとこうした方がいいよ！」ってツッコミを入れられたり？

こじま「めちゃくちゃ言われます（笑）。でもかえって分からないことばかりなんで学ぶことが多いんです。息子の友達もチャンネル登録をしてくれているみたい（笑）」

――おのさんはYouTubeで猫ちゃんとの生活を紹介していますね？

おの「『ねここ』という名前なんですが、名付け親はいづみさんです。5年前に知り合いの方が『まきちゃん猫飼いたいって言ってたでしょ』って言って、生後2か月ぐらいの保護猫を紹介してくれたんです。さっそく保護されている警察署で逢って『うちに来るかい？』って尋ねたら『ニャア！』って言ったんで（笑）。そっから一緒の生活がはじまりました」

――“ねここ”ちゃんのかわいいところは……もちろん全部ですよね（笑）。

おの「もちろんです（笑）。でもYouTubeで『おのさんちのねここさん』というコーナーをやっているんですけど、なかなか言うことをきいてくれなくて。追いかけ回しながら撮っているんです。静かにしているところはだいたい寝ているところばかりなので動物って大変ですよね」

――さて、現在はツアー中ということで今後の予定をお聞きしたいのですが？

こじま「ここ3、4年ほど映画の曲作りの話や劇伴の依頼もいただいたり、変わったところだと演芸とか寄席と一緒にライブをやりませんかというお話をいただいたりしていて、別のジャンルとのコラボは私たちにとってもすごく新鮮ですね」

おの「実はいま学校の校歌を作ることが決まりまして」

――それはすごいですね！

おの「加古川市の2つの小学校と1つの中学校が統合されることになって、再来年開校予定の小中一貫の公立学校の校歌を作るお話をいただいたんです。それで今は学校に視察に行かせていただいたり、卒業生や在校生にどんな言葉を入れてほしいか募集をしていて、そこから校歌を作るっていうプロジェクトに参加させていただいています」

こじま「責任重大です！」

――「花＊花」としての旅を2人のペースで続けているからこその出会いがあるんでしょうね？

おの「そうですね。これからも面白いことをやっていきたいなって思ってます」

□花＊花（ハナハナ）ともにボーカル＆キーボードのおのまきことこじまいづみが1995年に結成。2000年7月、ワーナーミュージックジャパンより「あ～よかった-setagaya mix-」でメジャーデビュー。同年末には「第51回NHK紅白歌合戦」に異例のスピードで出場。「さよなら大好きな人」などシングル7枚、アルバム7枚をリリースし、全国各地でライブ・レギュラーラジオなどで活躍するも、03年活動を休止。09年3月、「花＊花」誕生10周年を機に再始動を発表。20年にはメジャーデビュー20周年を迎え、ベストアルバム「2×20（ニカケルニジュウ）」をユニバーサルミュージックよりリリース。22年10月ミニアルバム「5B2H」リリース。

花＊花公式HP：https://office-hanataba.com/hanahana/
ユニバーサルミュージックHP：https://www.universal-music.co.jp/hanahana/

【ライブ情報】花＊花「5B2H」Release Tour 2022
11月19日京都「someno kyoto」
11月27日福岡「border -live music&drinks」
12月01日名古屋「TOKUZO-得三-」
12月03日岡山「MO:GLA」
12月16日大阪「吹田市文化会館メイシアター小ホール」（ファイナル）

詳しくは公式HPへ：https://office-hanataba.com/hanahana/