サッカーのワールドカップカタール大会は20日に開幕を迎える。日本国内でもサッカー熱の高まりを見せる中、元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏が存在感を高めている。自身のYouTubeチャンネル「闘莉王TV」での忖度ゼロの発言が物議を醸したかと思いきや、元チームメート、阿部勇樹氏の引退試合でスーパーゴールを連発し、ツイッターのトレンド入りを果たすなど、現役選手ばりの注目度を高めている。現役時代から歯に衣着せぬ発言で有名だった闘将はなぜ炎上を恐れないのか――。鋼のメンタルの理由を本人に聞いてみた。

　史上初のベスト8入りが期待される日本代表で、愛ゆえに率直な意見を発信し続ける闘莉王氏は話題を振りまいている。最近では日本代表の3選手に「ヘボ」と評したことが、物議を醸した。当の本人は“炎上”についてどう感じているのだろうか。

「そもそも炎上ってなにか知らない、まず。炎上って何？　という感じです。自分の思っていることを発言して、そこに同意見の人もいれば、反対意見の人もいる。そんなことは気にしないです。自分が考えていることが大事だと思うし、人に言われたことを気にするタイプではない。現役時代も自分について書かれたものとか、自分が出た番組とか、あまり見ないタイプでしたね」

　昨今ではSNSの普及でYouTubeの視聴者やサポーターからの意見が直接本人に届きやすくなった。現役時代は試合後にスタンドのサポーターと拡声器片手に激論を交わすシーンもあった闘将だが、ネット上の声をどう捉えているのだろうか。

「あまり気にしないですね。ミスに対しては反省するだけ。自分のミスで失点したり、負けた試合もいっぱいある。過ぎたことで直さないといけないこともあるけど、別に引きずっても仕方ない。切り替えが早いんですよ」

　こう語った闘莉王氏だが、2001年のJ1サンフレッチェ広島でのプロ入り直後に周囲の評価に耳を傾け過ぎたことが、今の鋼のメンタルを生み出すきっかけになっているという。

「高校を卒業してサンフレッチェで過ごした2年間は、ミスを引きずってダメージを残しすぎて……。なかなか切り替えられなかった。振り返ると、試合のメンバーから外されたことで、『なんで出れないのかな』と気持ち的にブルーになっていた。いつもの自分の明るさとか、プラスな部分までマイナスになっていたのは、ミスをすごく引きずって、それが自分のメンタルにも影響していたから。“やれることはやる”“直せるところは直す”という切り替えができるようになったことが、その後のメンタル的な強さに変わった気がしますね」

　広島時代はチームメートや先輩の収入を左右する「勝利給」という存在がプレッシャーになっていたという。

「ルーキーの時期がメンタル的にはすごくいい勉強になりました。高校からプロ入り後、20歳くらいの頃は、正直な話、A契約でも給料はそんなに多くない。当時50万円だった勝利給がすごく大事になる。だから自分のミスで負けると、『みんなの勝利給を自分のミスで台無しにしてしまった』とトコトンまで凹みます。50万円のメンバー分ですからね。高卒直後ではメンタルがやられてしまう。みんなに合わせる顔がないくらい大変でした。でも、チームスポーツにおいてそういう考えはダメなんですよね。なんでもかんでも『自分のせいだ』と考えてしまっていたことがよくなかったと思います」

　しかし、自分のミスを正面から受け止めるのは簡単ではない。

「いや、自分で受け止めるのが一番大切だと思います。ミスは誰にでもあることだし、ミスを認めないと物事は始まらない。ミスをしたあとに何ができるかから、人の違いが出ると思う。ミスした人がまず認めること。そのあと何ができるのかということ。そういうところから考えていかないと、前進できないのではないでしょうか」

　話題を呼ぶYouTube「闘莉王TV」。元日本代表FW城彰二氏とのコラボ動画が急上昇ランキングに入るなど、さらに勢いを増しているが、このたびプライベートコミュニティ「闘莉王TVプロジェクト」をローンチした。

　11月27日のカタールW杯コスタリカ戦では東京・渋谷区でメンバー限定の同時観戦イベントも開催することも決まった。「みんなの顔をみながら話をしたい。日本代表にとってこの4年間で一番大事な試合。NGゼロで楽しい時間を過ごしたいですね」と話している。W杯期間中もオブラートに包まない発信で盛り上げてくれそうだ。

○話題沸騰「闘莉王TV」のプライベートコミュニティではリアルイベントも開催
https://community.camp-fire.jp/projects/view/638044