男性専用車両が限定運行 企画者に意図を聞いた 「本当の男女平等を実現するためのもの」

11月19日の国際男性デーに合わせ、東京さくらトラム(都電荒川線)で男性専用車両を運行するためのクラウドファンディングが行われている。すでに目標金額の200%を超える10万円以上が集まり、当日午後1時に三ノ輪橋駅を出発する車両を男性専用として運行することが決まっているが、どういった趣旨でこのような企画を行うことになったのか。企画を主催するNPO法人「日本弱者男性センター」を取材した。

国際男性デーの11月19日、東京さくらトラムで男性専用車両が運行される(写真はイメージ)【写真:写真AC】
国際男性デーの11月19日、東京さくらトラムで男性専用車両が運行される(写真はイメージ)【写真:写真AC】

11月19日の国際男性デーに合わせ、東京さくらトラムで男性専用車両を運行

 11月19日の国際男性デーに合わせ、東京さくらトラム(都電荒川線)で男性専用車両を運行するためのクラウドファンディングが行われている。すでに目標金額の200%を超える10万円以上が集まり、当日午後1時に三ノ輪橋駅を出発する車両を男性専用として運行することが決まっているが、どういった趣旨でこのような企画を行うことになったのか。企画を主催するNPO法人「日本弱者男性センター」を取材した。(取材・文=佐藤佑輔)

「弱者男性」とは、独身、貧困、障がいなど、社会的弱者となる要素を備えた男性を指すネットスラングのこと。2015年ごろからネットを中心に使われ始め、近年ではSNSでも度々トレンド入りするなど一般的な単語となっている。

 今回、男性専用車両のクラウドファンディングを立ち上げた日本弱者男性センター代表の平田智剛さんは「少し分かりづらいですが、『男性の幸福を願う男性の幸福』が当法人の目的です。女性差別やマイノリティーへの差別は大きな話題になっても、男性差別はそもそも話題にすらならない。私自身、発達障がいがありますが、なぜか世間には女性支援ばかりで社会的に弱い立場の男性を支援する団体はないのが現状です。本当の男女平等実現のため、男性差別をなくそうと声を上げる男性のよりどころとなりたいと考え当法人を立ち上げました」とNPO法人設立の経緯を語る。

 今年7月にNPO法人の認定を受けてからは、女性からDV被害を受けた男性向けのシェルター事業や生活保護の申請、フードバンクとの連携など、弱者男性に向けた福祉活動を行っており、今回、活動資金調達や知名度の向上、活動メンバー募集もかねて男性専用車両のクラウドファンディングを立ち上げた。企画の背景にあるのが、意外と知られていない女性から男性に対する性加害の実態だ。

「女性専用車両は盗撮や痴漢行為への対策として設けられていますが、男性に対する性犯罪、いわゆる痴女行為もないわけではありません。私自身、満員電車の中で女性に触られて怖い思いをしたことがありますが、もしそのとき周囲に助けを求めたら、周囲の人は私と女性どちらの言うことを信じるでしょうか。男性には仮に被害者であっても加害者にされかねないという冤罪(えんざい)の恐怖があり、男性専用車両があればそういった男性の恐怖を軽減できる。また、女性専用車両がある一方、男性専用車両がないことで『性犯罪は男性が行うもの』という偏見を助長することにもつながりかねません」

 東京さくらトラムを運営する東京都交通局からは、一度は企画を断られたものの、「女性専用車両を否定するものや差別的な意図はなく、むしろ本当の男女平等を実現するためのもの」と粘り強く説明をして理解を得た。東京さくらトラム1車両あたりの貸し切り利用料は1万3820円で、これに追加して車内のラッピングや諸経費などをクラウドファンディングの収益からまかなうという。男性専用車両乗車の条件は一般的な女性専用車両と同じで、女性でも障がい者やその介助者、小学生以下の子どもなどは乗車可能となっている。

「誤解を招きたくないのが、当法人は女性団体の活動に対抗する意図はありません。目的は弱者男性の救済で、男性の既得権益には反対ですし、女性専用車両も必要なものだと思っています。ただ、女性の不遇への支援が多くある一方、男性の不遇はなかったことにされている。女性への支援がある一方、男性への支援もあるのが本当の男女平等ではないでしょうか」

 今回、目標の2倍を超える金額が集まったことで、今後は年2回、国際男性デーと父の日に合わせて同様の企画を続けていく予定だという。世間的にはまだまだ耳なじみがない男性専用車両の試みは、本当の男女平等を象徴する企画として定着するだろうか。

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