自動車盗難発生率、全国ワースト1位は茨城県 15年連続のなぜ 原因を県警に聞いた
自動車の盗難が社会問題になる中、人口10万人あたりの自動車盗難発生率が15年連続全国ワースト1位なのが茨城県だ。もはや独走状態にある不名誉な記録だが、いったい、なぜこれほどまでに盗難が多いのか。茨城県警察本部生活安全総務課に聞いた。
犯人の国籍や特徴は? 「狙われる車」の車種も回答
自動車の盗難が社会問題になる中、人口10万人あたりの自動車盗難発生率が15年連続全国ワースト1位なのが茨城県だ。もはや独走状態にある不名誉な記録だが、いったい、なぜこれほどまでに盗難が多いのか。茨城県警察本部生活安全総務課に聞いた。(取材・文=水沼一夫)
茨城は人口10万人あたりの自動車盗認知件数が、2007年から21年まで15年連続で全国最多だ。
県警が提示したのは、直近の21年のデータ。それによると、自動車の盗難は633件(うち既遂581件、未遂52件)が発生し、検挙件数426件(全国1位)、検挙率67.3%(全国22位)だった。
また、最も盗難が多かったのはつくば市だった。およそ100件が発生したが、これは全国ワースト12位の三重県全体よりも高い。認知件数は、被害台数とは異なり、同じ家の敷地内から車両2台が同一機会に盗まれた場合、統計上の被害は1件として計上される。つくば市だけでかなりの被害が発生していることがうかがえる。
盗難車の種類は、乗用車が324件(55.8%)、貨物車が140件(24.1%)、トラクター等が64件(11.0%)、建設用重機等が53件(9.1%)となっている。高級車以外の特殊車両の盗難が多いのも茨城の特徴だ。最近では1998年以降に製造されたスポーツカーの盗難も増えているという。
具体的な車種では、乗用車がプリウス、ランドクルーザー、クラウン、レクサスRX、ヴェゼル、スカイライン、アルファードなど、貨物車がハイエース、エルフ、キャンター、フォワード、レンジャー、ハイゼット、ファイターなど、特殊車両はトラクターや油圧ショベル、フォークリフトの盗難が多発したという。
被害車両が返還される割合はどうか。21年に認知した自動車盗(581件)のうち、被害車両を返還した件数は22件(約3.7%)だった。一度盗まれると高確率で、元に戻って来ないことが実証されている。
気になるのは犯人の特徴だ。
これについて県警は「令和3年中の検挙人員を国籍別でみると、総数25人のうち日本人が18人、外国人が7人で、検挙件数(解決事件除く)414件のうち単独犯が154件、共犯が260件となっています」と説明した。外国人より日本人、単独犯より共犯が多い図式が浮かぶ。
犯行の手口については「近年の自動車盗は、犯行グループがCAN(キャン)インベーダーなど特殊な機器を使用してドアロックを解除し、エンジン始動を行うなど、犯行の組織化や手口の巧妙化が見られます。また、犯行グループが、一部の違法ヤードや倉庫等を盗難自動車の隠匿や解体場所に利用する例もあります」とした。
なぜ茨城で自動車盗難が多い? 県警が出した3つの答え
そして、茨城での犯行が多い理由については、次の3点を指摘した。
1)人口あたりの自動車保有台数が多い(1000人あたりの自動車保有台数全国第2位)
2)道路網が整備されているため、盗難車両を解体場所や港湾へ搬送することが短時間に行える環境にある(道路総延長距離全国第2位)
3)都心に比べて地価が安く平地が多いため、自動車を解体するための施設(ヤード)が構築されやすい環境にある(可住地面積全国第4位、ヤード把握数全国第2位)
自動車の保有率に加え、ヤードが豊富で湾港まで手早く到着できるなど複合的要因もあるようだ。なお、盗難は県南地区(つくば市、土浦市など)と県西地区(古河市、筑西市など)での発生が多く、全体の約7割を占めているという。
自動車の盗難を防止するための有効な対策はないのだろうか。
県警は車両への対策として「視覚的にも抑止効果のあるバー式ハンドルロック、タイヤロック等を使用した車両の物理的固定」を、駐車場所への対策として「門戸を強固なチェーンや鍵で施錠する、防犯カメラやセンサーライトの設置」を挙げた。犯行の手口は幅広く、新しい方法も出ているため、対策は一つではなく、複数を組み合わせることが効果的と話している。