入社たった半年で新たな地図を開発 業界に旋風起こした“地図マニア”の仰天半生
地図アプリの開発企業で、入社後わずか半年で新たな地図を開発した大型新人がいる。株式会社ONE COMPATH(ワン・コンパス)の鹿野健人さんは、幼い頃から地図をこよなく愛する筋金入りの地図マニアだ。何をきっかけに地図に目覚め、どのようにして天職にたどり着いたのか。知られざる地図の世界の魅力を聞いた。
5歳で地図の世界に魅了され、大学で地理学を専攻した筋金入りの地図マニア
地図アプリの開発企業で、入社後わずか半年で新たな地図を開発した大型新人がいる。株式会社ONE COMPATH(ワン・コンパス)の鹿野健人さんは、幼い頃から地図をこよなく愛する筋金入りの地図マニアだ。何をきっかけに地図に目覚め、どのようにして天職にたどり着いたのか。知られざる地図の世界の魅力を聞いた。
鹿野さんが初めて地図に触れたのは5歳のとき。当時自宅のあった神奈川県伊勢原市全域の地図を手に、家や学校、父の勤め先などの位置を教えてもらい、現実世界と対応する平面世界の魅力にのめり込んだ。小学生のときに埼玉県の浦和に引っ越すと、今度は複数路線が乗り入れる浦和駅から鉄道趣味の世界へ。中学生になると初乗り料金で改札から出ずに在来線での移動を楽しむ「JR130円大回り乗車の旅」にいそしむなど、“乗り鉄”として趣味の世界を広げていった。
「行動範囲が広がって、それまで地図で見ていた世界と現実世界の重なりを実感できるのが楽しかったですね。伊豆諸島のすべての島が1枚でまとめられた地図に衝撃を受けて、“ねりけし”で作った島に航路などを描いて空想地図を作ったりしてました」
地図少年はその後、法政大学地理学科に進学。地理学、地形学、都市工学など、興味のある分野の知識を深めていった。就職活動では建設コンサルや測量系、ハザードマップ作成の会社などとともに、ONE COMPATHの前身である地図メディア企業「マピオン」を志望。2019年4月に新卒入社すると、OJT研修中にすべての地名がひらがなで表記されたひらがなの地図を企画として提案した。これがユニークだと上層部の目に留まり、いきなり地図開発を任されることになったという。
「地図の魅力が伝わる新しい地図が作れないかと考えて、ふと、子どものころに路線図の漢字の駅名が読めなくて覚えられなかったことを思い出したんです。地名には難読な読みも多く、それで敬遠してしまっている人も少なくない。会社が持っている検索データベース内のひらがなのデータを地図上に表示するので、技術的にも何とかなりそうで、地図開発自体は初めての経験でしたが、約2か月後の9月に行われたOJT研修の成果発表会には間に合いました」
会社側は当初、あくまで研修の一環なので世に出すことは想定していなかったというが、この発表会で注目を集め、翌年1月に全ての駅名をひらがなで表示する「えきのなまえマップ」としてラボサイト(試験サービスを公開するサイト)に公開すると、各種メディアでも話題に。地図業界の大御所からも太鼓判を押され、20年11月、アプリのアップデートのタイミングで正式な機能として追加された。その後、リニューアルの関係で一度は削除されるも、今年10月に「ひらがなマップ」としてパワーアップして再実装。駅名だけでなく、地名や建物名など全てをひらがなで表示し、さらにブラッシュアップされているという。
現在は法人向けの地図サービスとして店舗検索システムに関わる部署に異動している鹿野さん。カーナビに加え、グーグルマップやポケモンGOなど、GPSの位置情報を活用したサービスも10年前とは比較にならないほど進化しているが、地図アプリは今後どうなっていくのだろうか。
「直近では、国土交通省が持つ全国の建物の3Dデータ『PLATEAU(プラトー)』が無償公開されました。これからはメタバースやAR(拡張現実)など、地図表現にも現実で見たままと同じようなものが取り入れられていくと思います。また、地図から得られる情報の範囲も、例えば飲食店のレビューや検査エンジンにつながったりと、より広範囲になっています。地図は今後ますます面白くなっていくと思います」
知れば知るほど奥が深い地図の世界。今後もアイデア次第で、思いもよらないサービスが生まれるかもしれない。