16歳・中川翼の俳優挑戦を決断させた松坂桃李の存在 4年ぶりの共演

俳優の中川翼(16)が、1989年に少女漫画雑誌「りぼん」で連載され、スタジオジブリで1995年にはアニメーション映画化もされ、大ヒットした不朽の名作「耳をすませば」の10年後を描いた同名映画で、中学生時代の天沢聖司役を務めている。多くの人に愛されている天沢を演じることがプレッシャーだったと語るが、松本潤が“オレ様キャラ”を演じたドラマ「花より男子」を参考に、「学校の王子さま」をイメージして役作りをしたと吐露。「憧れの存在」という俳優の松坂桃李(33)の少年期を演じるにあたり、松坂ならではの動きを目で見て学び撮影に臨んだ。カメラマンから「『いま、桃李に見えたよ』と言われたときは、うれしかった」と顔をほころばせた。

映画「耳をすませば」で中学生時代の天沢聖司役を務めた中川翼【写真:ENCOUNT編集部】
映画「耳をすませば」で中学生時代の天沢聖司役を務めた中川翼【写真:ENCOUNT編集部】

将来の夢は「世間の人に認めていただけるよう」

 俳優の中川翼(16)が、1989年に少女漫画雑誌「りぼん」で連載され、スタジオジブリで1995年にはアニメーション映画化もされ、大ヒットした不朽の名作「耳をすませば」の10年後を描いた同名映画で、中学生時代の天沢聖司役を務めている。多くの人に愛されている天沢を演じることがプレッシャーだったと語るが、松本潤が“オレ様キャラ”を演じたドラマ「花より男子」を参考に、「学校の王子さま」をイメージして役作りをしたと吐露。「憧れの存在」という俳優の松坂桃李(33)の少年期を演じるにあたり、松坂ならではの動きを目で見て学び撮影に臨んだ。カメラマンから「『いま、桃李に見えたよ』と言われたときは、うれしかった」と顔をほころばせた。(取材・文=西村綾乃)

 映画は、柊あおいの同名マンガをベースに、本が好きな女の子・月島雫と、少女に思いを寄せる天沢聖司の出会いから、その10年後が描かれている。

「原作を知っていたので、天沢聖司を演じることが決まった時は、不思議な感じがしました。長く愛されている作品で、聖司のファンも多いので『失敗しちゃいけない』と思うと、不安の方が大きかったです。雫に対して、少し意地悪な一面もある聖司。細かな心情は、原作から読み取って行きました」

 役作りをしていく中では、平川雄一朗監督からのアドバイスも助けになった。

「平川監督の作品に出演させていただくのは、今回が3度目でした。撮影前に監督から『松本潤さんの、「花より男子」を参考にしなさい』。『木村拓哉さんのたたずまいを研究しなさい』などのヒントをいただき、研究を重ねて。最終的に、プライドが高くて人に弱みを見せない『学校の王子さま』のような聖司像を監督と一緒に作りました」

 原作では画家、アニメではバイオリン職人を目指していた聖司。実写化ではチェロ奏者になることを夢見てまい進している。撮影では、同じ役を務める俳優の松坂の動きにも目を配らせた。

「『天沢聖司だったらどうするか』ということを念頭に置きながら、松坂さんのエッセンスを取り入れて行きました。松坂さんはチェロを演奏中、下に向けていた視線を、クイッと上げて雫を見つめる姿が印象的で。僕も自然にできるように練習しました。カメラマンさんから『いま松坂桃李に見えたよ』と言われたときはうれしかったです」

 クランクイン当日、中学時代の聖司と雫、そして10年後の聖司と雫の4人で輪になってセッションする場面を撮影した。

「松坂さんの隣に座ったのですが、松坂さんがチェロを弾く姿に圧倒されて、思うように指を動かすことができませんでした。カチコチになった僕の緊張を解そうと、松坂さんが話しかけて下さって。僕は小さいときに桃李さんのデビュー作『侍戦隊シンケンジャー』を見ていたのですが、シンケンレッドそのままの優しさに癒やされました」

 クランクイン直後に、緊急事態宣言があり、撮影は5か月間休止に。通っていた中学校も休校になったことから、松坂に少しでも近づこうとチェロの練習を重ねたという。

「チェロは右手に持った弓を動かして演奏するのですが、鏡に映る自分の姿を見て、『出来ないかも』と弱気になった時期もありました。くじけそうになったときは松坂さんの演奏姿を思い出して。天沢聖司も努力をしている姿を表に見せないので、負けるわけには行かない! 松坂さんよりもうまくなりたい! と自分を励まし続けました」

 4歳で芸能界入りし、モデルとして活動していた中川が、「大人の俳優になろう」と決めたのも、松坂の存在が大きかったという。

「人見知りを直したいとモデルのお仕事を始めました。大人の俳優になりたいと決めたのは、小学6年生のとき。松坂さんが主演した連続ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』でご一緒して、松坂さんが所属している芸能事務所『トップコート』に入りたいと自分で履歴書を書きました。映画の中で、『子どものときにした決断が今につながっている』と大人になった杉村竜也(山田裕貴)が語る場面があるのですが、今の僕自身の状況に重なって。そうだなとうなずきました。松坂さんとは、約4年ぶりの共演だったのですが、僕が当時よりも30センチ以上身長が伸びていたので、最初は分からなかったみたいです。『第8話で白石昇一を演じた……』と伝えたら、『あ、あのときの!』と驚かれました」

 今年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に北条政範役で出演。少しずつ認知を広げている。

「時政役の坂東彌十郎さんから『刀のサヤを持つことは、攻撃を意味する。だからツカより上を持ちなさい』など、本当の父のようにご指導をいただきました。宮沢りえさんは、主演している『湯を沸かすほどの熱い愛』で病気を抱えた役を演じていたのですが、その演技に感動して繰り返し見ていたので、宮沢さんの子どもを演じられたことは光栄でした。大河の撮影では、台本に『笑』と書かれていた場面で、高笑いをしてみせたり。三谷幸喜さんが持っている笑いのセンスを、素晴らしいアドリブ力で表現されていてすごいなと。12歳で俳優になると決めて、今年で4年目。まだまだ勉強することばかりですが、良い演技をする役者だと世間の人に認めていただけるよう頑張りたいです。(優秀な日本映画や、その演者らを称える)『日本アカデミー賞』の授賞式に呼んでいただけるような役者になりたいです」

 映画は10月14日から全国で公開中。

□中川翼(なかがわ・つばさ)2005年12月6日、神奈川県生まれ。4歳のときにモデルとしてデビュー。15年にドラマ「ORANGE」で俳優としての活動をスタートした。映画「ヒロイン失格」(15年)、映画「僕だけがいない街」(16年)などに出演。「光を追いかけて」(21年)では初主演を務めた。「おんな城主 直虎」(17年)でNHK大河ドラマに初出演。放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22年)では、北条政範を演じた。サッカー、バスケットボールなどが特技。170センチ、B型。

次のページへ (2/2) 【写真】映画「耳をすませば」の1場面
1 2
あなたの“気になる”を教えてください