ダニのアレルギー、子どもに発症リスク…秋に要警戒の理由 専門医による“教えたい予防策”
家の中の日常生活にリスクが潜むアレルギーで、注意をしないといけないのは、ダニのフンや死骸(ダニアレルゲン)に触れたり、吸い込んだりすることで引き起こされる「ダニアレルギー」だ。エステー株式会社が発行するダニに関するガイドブックによると、ダニの数は8月、アレルゲン量は10月がピークになるという。実は秋に要警戒のダニアレルギー。子どもの発症は避けたいところだ。「なんぶ小児科アレルギー科」院長でアレルギー専門医・小児科医の南部光彦氏に、注意点や対策を解説してもらった。
ぜんそくやアレルギー性鼻炎をもつ小児の8割以上はダニが原因とされている 南部光彦氏に聞いた
家の中の日常生活にリスクが潜むアレルギーで、注意をしないといけないのは、ダニのフンや死骸(ダニアレルゲン)に触れたり、吸い込んだりすることで引き起こされる「ダニアレルギー」だ。エステー株式会社が発行するダニに関するガイドブックによると、ダニの数は8月、アレルゲン量は10月がピークになるという。実は秋に要警戒のダニアレルギー。子どもの発症は避けたいところだ。「なんぶ小児科アレルギー科」院長でアレルギー専門医・小児科医の南部光彦氏に、注意点や対策を解説してもらった。(取材・文=吉原知也)
気温25度前後で、湿度65%以上の高温多湿の室内環境を好むダニは、梅雨から夏にかけて数を増やし、約2か月の寿命もあって秋になって死んでいく。死骸やフンを吸い込むことでぜんそくやアレルギー性鼻炎、皮膚ではアトピー性皮膚炎などの健康被害を起こす原因になるという。南部氏によると、ぜんそくやアレルギー性鼻炎をもつ小児の8割以上はダニが原因とされている。「すべてのタンパク質はアレルギーの要因となり得ますが、ダニには特にアレルギーを起こしやすい2種類のタンパク質が含まれています。アレルギーのなりやすさには、遺伝的な体質とともに、日常生活でどれぐらいアレルゲンに接するかが影響します」と説明する。
アレルギーを理解するにはまず、どの部位にどんな症状が出たのか、次に、何が原因なのか、を考えることが重要だという。南部氏は「部位で言うと、目は結膜炎、鼻は鼻炎、肺だと気管支ぜんそく、お腹の場合はアレルギー性の胃腸炎、皮膚だとじんましんやアトピー性皮膚炎、全身症状になるとアナフィラキシーやアナフィラキシーショックです。次に何が原因なのかを探ります。ダニの場合は、アレルゲンは死骸やフンです。アレルギーを起こしやすいダニの一般的な大きさは0.3~0.4ミリ程度と言われますが、フンと死骸は乾燥してバラバラになると0.01ミリよりもっと小さくなります。この細かな粒子を吸い込んで気管支に直接入ってしまうとぜんそくの原因になります。スギ花粉は0.03~0.04ミリと言われており、粒子が大きいので目と鼻の中に引っかかり、結膜炎や鼻炎が起きます。いわゆる花粉症です。食物アレルギーだとじんましんの他に、重症の場合には全身にさまざまな症状が出ます」と話す。
一方で、ダニアレルギーは鼻炎やぜんそくだけというイメージかと言えばそうでもないという。「お好み焼き粉やホットケーキミックスなどの粉製品で、開封後に袋の中でダニが繁殖してしまい、それを食べることでじんましんやアナフィラキシーショックが起きることもあります。また、ペットの毛やフケもアレルゲンになりますが、ペットにかまれて、アレルゲンが血液を通して全身に回り、アナフィラキシーショックが引き起こされることもあり得ます。スギ花粉の場合は、先ほど述べたように目や鼻に症状が出ますが、干していたシャツにスギ花粉が付いて、それで背中が痒くなることもあります。アレルギーの仕組みを理解しておくといいでしょう」。
基本的なダニ対策は、ダニを殺すこと、ダニを増やさないことだ。「乾燥と熱がキーワードです。60度以上の高温で、布団に熱を与えるとダニを殺すことができますが、実際にはちょっと難しいかもしれません。一方、ダニを減らすのに有効なのは布団の天日干しです。乾燥するとダニは増えにくくなります。大事なのは両面をしっかり干すこと。布団を干しても内側の日陰の方は乾燥しにくく、またそちらにダニが移動してしまうからです。片面2~3時間ずつ、週1回は干したいですね。干した後は死骸やフンがパラパラになっているので、掃除機でしっかり吸い取ることも重要です。ダニが多く潜んでいるのは布団ですが、カーペット、マットレスなどにもしっかり掃除機をかけましょう。ポイントは掃除機のノズルを1メートル四方に20秒ぐらいの時間をかけて、ゆっくり動かすことです。サッと動かしただけでは、毛や繊維の奥にある死骸やフンを吸い取り切れません。また、ノズルの回転構造にもよりますが、前に押す時より、後ろに引く時の方が、死骸やフンを吸い込みやすくなります」と教えてくれた。
「『かくれんぼ』にも注意が必要です」 子ども向けの取り組みは?
そのほかは、寝具では布団乾燥機に加え、防ダニの布団や枕カバー、シーツも有効とのこと。ダニよけスプレーは毛足の長いカーペットなどには、奥まで染み込ませるようにするのがコツ。それに、“ダニスポット”として要注意なのがソファだ。「皮やビニール製のソファにはダニがあまり住み着きませんが、布製ソファは気を付けましょう。ソファでお菓子を食べながらゆっくり過ごすことは多いですよね。ダニは、人間の皮脂や食べかすが大好物なんです。ソファで食べるのを避け、ソファにもしっかり掃除機をかけていくことが大事ですよ」。
子どものダニアレルギーの発症リスクについては、「子どもは家の中を活発に動き回ります。布団やベッドの上で遊んだり暴れたりすると、アレルゲンであるダニの死骸・フンが舞い上がります。そこで大声を出したり、口呼吸したりするとアレルゲンを思い切り吸い込んでしまいます。子どもが好きなぬいぐるみは、顔に近づけて遊んだり、抱きながら寝たりすると、アレルゲンが顔に付いたり、吸い込みやすくなる可能性も高まります。ダニの多いカーテンの後ろや押し入れの中に隠れる『かくれんぼ』にも注意が必要です」と注意点を挙げた。
家庭での子どもに向けての取り組みもあるそうだ。「お子さんが幼稚園ぐらいの年頃になれば、片付けを教えることが大事になります。部屋が散らかっていると、掃除がやりづらくなります。常に身の回りを整理整頓しておくことを教えたいですね。ソファは要注意だと説明しましたが、子どもはソファが好きだと思いますので、『ソファでお菓子は食べちゃダメ、ダイニングで食べようね』といった具合に、遊ぶところと食べるところの区別をしっかり教えましょう。ソファやベッド、布団の上ではしゃいで遊ばないように言い聞かせることも大事です。毛足の長い素材のカーペットはダニの温床になりがちなので、子どもが過ごす部屋にはカーペットは敷かずに、ダニの少ないフローリングの部屋で遊ばせることも予防につながると思います」とのことだ。
また、根本的な治療としては、アレルゲンを含む治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」を挙げ、「ダニとスギ花粉に対してはアレルギー克服の効果は大きいです」と話している。
□南部光彦(なんぶ・みつひこ)1981年に京都大医学部を卒業、兵庫県立塚口病院(現・兵庫県立尼崎総合医療センター)に赴任。京都大医学部大学院で免疫・アレルギーの研究に従事、医学博士号を取得。米アイオワ大の病理学教室で3年間、免疫の研究を行う。帰国後、天理よろづ相談所病院で21年間、小児科医として勤務。現在はなんぶ小児科アレルギー科(奈良市)で院長を務める。著書に「アレルギーから子どもを守る ―ダニ対策24の秘訣」。