被災地静岡でラーメン無償提供、店長の心意気が話題 予想外の反響拡大に複雑な思いも
静岡県を中心に大きな被害をもたらした台風15号。依然として大変な状況が続くなか、被災した人のために無償でラーメンの提供を始めたラーメン店がSNS上で話題を呼んでいる。静岡市駿河区「麺処汐のや」の店主・寺田浩光さんに、被災地の現状と無償提供への思いを聞いた。
幸い店と自宅はあと数十センチの差で冠水を免れた
静岡県を中心に大きな被害をもたらした台風15号。依然として大変な状況が続くなか、被災した人のために無償でラーメンの提供を始めたラーメン店がSNS上で話題を呼んでいる。静岡市駿河区「麺処汐のや」の店主・寺田浩光さんに、被災地の現状と無償提供への思いを聞いた。
「拡散希望 この度は台風15号の被害に遭われた全て方に心よりお見舞い申し上げます 幸いな事に当店も、自宅もあと数十センチの差で冠水は魔逃れましたですが、30メートル先は大冠水 言葉になりませんでした」
「心のどこかにモヤモヤが残りどんどん自分の無力差を感じました 何も出来ないもどかしさだけが残りました 営業するのでさえ悩みましたですが、自分なりに考えた結果、僕ができる事は食を通して皆さんを笑顔にする、幸せにする、ほっとさせる事でした」
「本当に微力で情けないですが被害に遭われた全ての方々、少しばかりですが一日50食程度無償で、塩ラーメン提供させていただきます 本当に遠慮せず、来ていただきたいです」
「水はいくらでも差し上げます 寸胴で良ければお貸しします 紙の丼等もテイクアウト用で用意してあるものが多少ですがありますので、差し上げます いつまで無償提供出来るか、わかりませんが、しばらくは続けたいと思います 本当に遠慮なしに来てください」(投稿は原文ママ)
今月26日、「麺処汐のや」ではツイッターの投稿4回分の長文で被災地へのお見舞いと無償でのラーメン提供を呼びかけ。29日現在、約3万6000件のいいねを集めるなど、大きな話題となっている。
投稿を行った店主の寺田さんは「お店から100メートルくらいのところに自宅があって、店もうちも高台にあったためか、幸いがれきが散乱しているくらいだったんですが、その間の地域が本当に大変な状態で。何かしたくても何もできない。どうしていいかも分からなかった」と被災当時の状況を語る。
幸い店の被害は一時的な停電程度だったため、迷った末に営業を決意。「あったかいごはんも食べられない方がたくさんいる。自分にできるのはこれくらいしかないのかなと」と、1日50杯程度限定でラーメンの無償提供を始めた。
SNSでの反響はすさまじく「サッカーをやってたので仲間が全国にいるんですが、県外から知らない人が物資を届けてくれたり、うちではお断りしましたけど、募金の申し出もありました。どれくらい提供できるか分からないので1日50杯限定としましたが、毎日50~60人くらい、今のところは来ていただいた方全員に食べていただいています」と話す。
善意の行動は被災者にも届いている。27日、フェイスブックには「昨日は涙を流しながらラーメン食べてる方が何人かいました」と書き込んだ。極限の状況の中、満足な食事もままならない状態の被災者を見て、寺田さんはさらに支援の思いを強くした。
一方、これまでテレビ取材の依頼もあったが、反響が大きくなりすぎても困るとあえて取材を断ったケースもあるという。
「ありがたいことに、応援したいとわざわざ遠方から食べに来てくださる方もいる。本当にありがたいことなんですが、あまり拡散されすぎても、本当に困っている人にラーメンを届けられない。そうなってしまっては本末転倒で、できる限り被災した方にラーメンを提供したいと思っています。混み具合は土日に入ってみないと分かりませんが、続けられる限りは続けていこうと思います」
被災地の完全復旧を願う寺田さんのラーメン。身も心も温まるに違いない。