麗澤大学長が語る工学部新設の狙い「日本は27位」 デジタル競争力の低下に危機感
少子化が深刻化する中、大学教育の現場では優秀な学生の獲得のためさまざまな取り組みが行われている。麗澤大学(千葉・柏市)はグローバル教育や国際性の向上のほか、共通テスト利用型入試の無料化、課題プレゼン型入試の導入、さらには工学部新設による総合大学化など多彩でユニークな取り組みを次々と進めている。徳永澄憲学長に改革の理由と手ごたえを聞いた。3回連載で今回は第2回。
総合型選抜の割合を全体の7割ぐらいに引き上げ
少子化が深刻化する中、大学教育の現場では優秀な学生の獲得のためさまざまな取り組みが行われている。麗澤大学(千葉・柏市)はグローバル教育や国際性の向上のほか、共通テスト利用型入試の無料化、課題プレゼン型入試の導入、さらには工学部新設による総合大学化など多彩でユニークな取り組みを次々と進めている。徳永澄憲学長に改革の理由と手ごたえを聞いた。3回連載で今回は第2回。(取材・文=鄭孝俊)
――2024年4月に「工学部(仮称)」と「経営学部(仮称)」を設置構想中と聞きました。
「まず背景にあるのが世界的に見て我が国のデジタル競争力の低下が顕著であることです。国際経営開発研究所(IMD)のデジタル競争力ランキングによると、2020年では、1位米国、2位シンガポール、3位デンマーク、4位スウェーデン、5位香港と続きますが、日本は13年20位、20年27位と低下傾向を示しています。大学はこうした問題に取り組むことが必要ですし、こうした問題があるからこそ工学部や理学部などの理系が学生の間で堅調な人気を集めています。工学部には情報システム工学専攻とロボティクス専攻、この2つの専攻を設けます。工学的知識とリベラルアーツ的素養をあわせ持ちデータに基づく個別教育や社会課題を解決することができる人材の育成を目指します。モットーは『テクノロジーに愛を。』です。例えばドローンの利用。ドローンがあれば山間部の僻地に物資を輸送できますが、戦争に利用されると殺人に加担することになります。テクノロジーが本当に人を幸せにするのか、社会の貢献になるのかはしつこいぐらいに教育する必要があると思います。麗澤大の特徴である知徳一体の道徳教育はチーム学習やプロジェクトでの倫理的行動の基盤となります。一方、経営学部は第4次産業の台頭や少子高齢化によって生じてきた社会やビジネスの課題解決、企業価値を創り出すことができる人材を育てることを目標にしています。また、日本初のファミリービジネスに特化した専攻を開設する予定です」
――これで文理5学部が同一キャンパスにそろうことになりますね。
「24年度に国際学部、外国語学部、経済学部、経営学部(仮称)、工学部(仮称)の5学部が同じキャンパスにあることのメリットはとても大きいです。先ほどのドローンの事例でもそうですが、工学部の学生にも道徳教育が必要ですし、経営学部の学生にも文理融合型の企業経営を考えてもらいたい。また各学部ともに幅広い歴史哲学を学んでほしい。文系・理系学部を横断・融合する教育が可能となり、文理融合型総合大学として世界と地域に貢献することができます。総合大学を築くことでアジアからの留学生の増加も期待できそうです」
――少子化が進む中、受験生の確保が気になります。
「麗澤大の国際性と少人数教育をうまくアピールできれば、と思っています。本学は多様な人材を求めているので入学試験も多様です。ただ、少子化で受験生自体が減少しているので早くから高校と大学の関係性を強化する高大連携に力を入れています。今年3月には国際理解教育と語学教育を強みとする松戸国際高等学校と連携協定を締結しました。松戸国際高等学校の生徒を本学の授業に受け入れて単位を認定するほか、出張講義や高大連携プログラムの開発、進学相談会など進路に関わる教育連携などで一層の交流を深めていきます。こうした高大連携の取り組みをさらに拡大していくことで本学への進学を希望する学生を増やしていきたいと考えています。年内入試となる総合型選抜の割合を全体の7割ぐらいに引き上げていくのが目標です」
□徳永澄憲(とくなが・すみのり)1952年(昭和27年)1月5日、愛媛県出身。東京教育大学農学部農村経済学科卒業(農学士)。筑波大学大学院博士課程社会科学研究科単位取得満期退学(経済学修士)。ペンシルベニア大学大学院博士課程地域科学研究科修了(Ph.D.)。麗澤大学外国語学部助手・専任講師、ペンシルベニア大学経済学部客員研究員併任。麗澤大学国際経済学部助教授・教授、インドネシア共和国・国家開発企画庁経済開発専門家(JICA併任)、名古屋市立大学経済学部教授、筑波大学大学院生命環境科学研究科教授、麗澤大学経済学部教授、麗澤大学経済学部学部長を経て現職。専門はマクロ経済学、応用計量経済学、都市・地域経済学、開発経済学。