サンマが“激やせ”のナゼ、漁獲量も激減…異変の理由は? 30年研究する専門家が解説
秋が到来し、サンマが旬を迎えている。近年は漁獲量の減少から価格が高騰。都内デパートでは1匹2000円を超える値がつくこともある。大衆魚から高級魚になりつつあるが、一方で、今年は「細くて小ぶり」との声も相次ぐ。いったい、サンマに何が起こっているのか。サンマ研究30年の専門家を取材した。
秋の味覚“王者”に異変 「サイズがマイワシかってくらい華奢」
秋が到来し、サンマが旬を迎えている。近年は漁獲量の減少から価格が高騰。都内デパートでは1匹2000円を超える値がつくこともある。大衆魚から高級魚になりつつあるが、一方で、今年は「細くて小ぶり」との声も相次ぐ。いったい、サンマに何が起こっているのか。サンマ研究30年の専門家を取材した。(取材・文=水沼一夫)
都内デパートの鮮魚コーナー。脂ののったサンマがずらりと並ぶ。そこへ買い物に来た2人組の女性は、サンマを見るや「細いわね!」とひと言。大きさによって価格に違いがあるものの、3匹セットのサンマは確かに小ぶりだった。
ネット上でも「今年のサンマは特に小さいし細いねぇ…」「サイズがマイワシかってくらい華奢」「小ぶりなのが多くてちょっと悲しい」といった声が見られる。
実は今年のサンマは細身が特徴。全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)の担当者は「水揚げ量は昨年と同じくらいですね。ただ、魚体が小さいので、産地の市場での価格は下がっています。魚体が小さいからそんなに高い値段はつけられない。去年よりは安くなっています」と明かす。
浜値が安くなれば、通常スーパーなどで購入する消費者にも恩恵があるもの。ただ、かつては大衆魚として日本人の胃袋を満たしてきたサンマも、近年は漁獲量が激減し、価格が上昇している。
「去年が2万トン取れていないんですよ。最盛期には20万トン、30万トン取っていますので、10分の1以下ですね。去年はうちの組合が知っている範囲では最低だったんですけど、今年もそれと変わらないということですから、いい漁になっているわけではないです」と声を落とす。
農林水産省の海面漁業生産統計調査によると、1995年からの調査で、サンマの漁獲量は2008年の35万4727トンが最高。昨年は最も少なく1万9500トンまで減った。
サンマのサイズが小さくなったワケ エサのプランクトンも減少か
もともと水揚げが少ないところに、魚体まで小さいという今年のサンマ。漁師の嘆き節が聞こえてくるが、“ダブル異変”の原因は何なのだろうか。
学生時代を含め、サンマを30年にわたり研究している国立研究開発法人水産研究・教育機構広域性資源部の巣山哲さんはさまざまな要因があると指摘する。
漁獲量の減少について「簡単に言うと、海にいるサンマの量が少なくなっています。10年以上、サンマの資源は減少していますね。もう1つ原因を挙げるとすれば、サンマがいる海域が遠くなっているので、港からの往復に時間がかかり、取りに行くのに日数がかかっているというのがあります」と説明した。
また、魚体が小さいことについては、「今サンマで問題になっているのは(例年と)同じ年齢なのにやせているということです。サンマは5月から8月くらいに南の海から北の海に行ってエサをいっぱい食べるんですけど、そのときにエサをいっぱい食べれなかったのが原因と考えています」と話した。
北太平洋に広く分布しているサンマ。エサを求めて北上する際、陸に近い場所と沖合を通過する群れがいるが、最近は沖合に寄りつつあるという。エサとなるプランクトンは近海のほうが豊富で、「(沖合の)エサの少ないところを北上しているので、やせているんだろうと考えています」。また、今年の6~7月のプランクトンの量を調査したところ、正式な調査結果は出ていないものの、巣山さんは「調査している限りはそんなに多くなかったように感じております」との印象を受けた。これらのことが今年のサンマの成長に影響を与えた可能性がある。
食卓に並ぶのは1歳魚 4年前のサンマと比較した大きさは?
実際、過去のサンマと比較して、大きさはどれくらい違うのか。
サンマの寿命は約2年で、食卓に並ぶのは1歳魚だ。巣山さんも作成に携わり、水産庁が7月に発表したサンマ長期漁海況予報によると、2022年は6~7月の段階で、1歳魚は80グラム台のサンマが最も多い結果となった。しかし、18年は100グラム台が最多で、ひと回り小さいことになる。
「今取れているサンマは大きくても130グラムいくかいかないか。昔は160とか170グラムとか割と普通にいました」
塩焼きや刺身、炊き込みご飯にしてもおいしいサンマ。日本の食卓には欠かせない秋の味覚に非常ベルが鳴っている。