アーティストの西川貴教（51）がバーチャル知事として、地方都市が抱える課題の解決法を議論する番組「西川貴教のバーチャル知事」（毎週月曜日、午後9時）が3月に開局した無料のBS放送局「BSJapanext」で放送されている。有識者を招き、過去の成功例を交えながら行う議論は毎回白熱。現地視察を行うなど、本気で地域創生を目指している西川に聞いた。（取材・文＝西村綾乃）

　滋賀県にフォーカスを当て、バーチャル知事として、地元民が抱えている課題解決を模索していく。エッジが効いた番組は、西川の発案だったという。

「放送局の方から、『好きなことをしてください』と言われ、浮かんだのが地元のことでした。かれこれ14年間『イナズマロック フェス』や、ふるさと観光大使をやらせてもらっていますが、考えたら地元を離れてからずいぶんたっている。滋賀県のことを改めて勉強させていただく場になればと思いました。識者の方をゲストに招くこともあるのですが、『こんなに真面目にやっていると思わなかった』と驚かれます」

　番組では毎回1つの議題について、地域の担当者を招き課題を挙げていく。西川と共に耳を傾ける有識者は、過去の成功例などを紹介しながら具体的に解決策を提案。「近江舞子中浜水泳場バーベキューエリア」を「地元住民も利用者も安全で快適に過ごせる場所に」しようと議論した回では、「地元学生に、景観に合うゴミ箱をデザインしてもらう」などの案を自ら出すなど、地元のために頭をひねっている。

「番組で話しているのは、滋賀県で暮らしている人たちが抱えている課題ですが、滋賀県だけで起きていることではないと考えています。海水浴場やバーベキュー施設などは全国にありますし、各地でご苦労をされていらっしゃる方がおられるはず。取り上げたことを、我がこととしてとらえて下さる方が増えれば。番組の中で取り組んだことが、日本の別の地域の課題を解決できる一役になればありがたいです」

　8月に放送された番組では、世界文化遺産の比叡山延暦寺への足として活用される交通施設「坂本ケーブル」や、161号線にある道の駅「藤樹の里あどがわ」など、過去に取り上げた課題が、有用に実行されているかを視察。訪れた道の駅では、1年間に2週間しか生で味わうことができないフルーツ「アドベリー」を活用したイベントを行ったことを報告された。

「先日も（滋賀の）三日月大造知事にお目にかかったのですが、医療や、教育、福祉などに関しては、知事や政治家の方々が丁寧に務めて下さっています。僕が滋賀県のためにできることは目立つことをして、注目されること。番組の中で出た課題の解決策について、活用していただくことができなければ意味がないので、目立つことで話題にしていただきたい。『あの人に頼んでみようか』という存在になることができていればうれしいです」

　故郷・滋賀県から、2008年に初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌年から同県で初めての大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」をスタート。行政や地域住民と模索を続けながら歩み続けている。

「今年の『イナズマロック フェス 2022』では、カーボンオフセットを導入することを決めました。最寄り駅から会場までをつなぐシャトルバス、会場で使用する電気など、開催する3日間（9月17～19日）で、30トンの二酸化炭素が排出されると聞き、滋賀県の林業を守るために何かできればと思いまして、今回は滋賀銀行様が滋賀県や森林組合から購入したこの『びわ湖カーボンクレジット』の排出権を、『イナズマロック フェス』のために拠出いただけることになりました。環境と経済活動。両輪を回していくことは簡単なことではありませんが、今回のような取り組みを通じて向き合っていきたいです」

□西川貴教（にしかわ・たかのり）1970年9月19日、滋賀県生まれ。96年にT.M.Revolutionとして活動をスタート。97年にリリースしたシングル「WHITE BREATH」は、自身初のミリオン突破作。ほか「HIGH PRESSURE」、「HOT LIMIT」などのヒット曲を持つ。2018年からは、西川貴教名義でも活動。俳優としての代表作はNHK連続テレビ小説「スカーレット」など。声優、ラジオパーソナリティー、MCなど多彩に活躍している。08年に故郷である滋賀県から、初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌年から同県で初めてとなる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催。20年度の滋賀県文化功労賞受賞した。