物価高騰などの影響で世知辛い世の中、日々の食事をリーズナブルにおいしく作れるなら大助かりだ。そんな悩みを解決する方法はあるのか？　2児の母で、9月9日に初の著書「ほとんど100円なのに絶品100レシピ」（ART NEXT）を出版する料理研究家のまいのごはん。さんに100円以下でできるとっておきの料理ベスト3を聞いた。（取材・文＝水沼一夫）

　まいのごはん。さんは、SNS上に投稿した料理が話題になった料理研究家だ。イタリアンレストラン勤務経験があり、調理師免許を取得している。夫もシェフの“料理一家”だが、まいのごはん。さんが手がける料理は、どれも材料費がかからないものばかり。庶民的で、手軽に作れると評判を呼んでいる。

　著書もタイトル通り、すべてのおかずが1人分100円以下か100円台で完成するというもの。

「もう本当に日ごろから作っているものがここに詰まったという感じですね。物価が高騰してきて食費を削れる部分が限られてしまっているんですけど、見た目が質素だとお子さんはなかなか食が進んでいかないのかなと思って、ボリュームがあってかつ栄養がある、そしてやっぱり見た目がきれいなメニューがたくさん入っている1冊になっています。主菜だけではなくて、主食や副菜、スープ、スイーツまで入っているので組み合わせて献立を作っていただけるのかなと思います」

　便利なのが、財布に優しい7つの“最強お助け食材”を使った料理だ。鶏むね肉、豚こま切れ肉、厚揚げ、ちくわ、もやし、小松菜、春雨と、どれもスーパーではリーズブルの代表格としておなじみ。自身がフルタイムの共働きで2児を育てていることから、慌ただしい中でも料理を作っている共働きの20代、30代の家庭を意識した。

「お値段もそうですし、一番は冷蔵庫にあるもので簡単にできるというのをテーマとして作っています。ちくわや厚揚げは一般的な主婦の方とか、一人暮らしをされている方でも手に入りやすいですし、コンビニでも売っているところもあります。ちくわとか結構脇役のイメージなんですけど、あえてメインにしたり、一般的な食材を一般的な調味料で作るということをもっとやりたいなと思ったので、そういった部分から選んでいます」

　そんなまいのごはんさん。が数あるレパートリーの中でも特にお勧めしたいのが以下の3品だ。「レシピ本って私、買ったことがなくて…」というだけに、どれもこれもオリジナリティーにあふれている。

1）鶏むね肉のニラねぎまみれ　1人分97円

「おつまみとしてもいいですし、子どもたちもすごいパクパク食べてくれて個人的にも好きなのと簡単というところが理由ですね。むね肉ってパサパサしているイメージが強いんですけど、お酒や砂糖などの下味でお肉をやわらかくして、もも肉のジューシーさに近い状態にしています。たんぱく質はむね肉のほうが多いので、満腹にもなるし、栄養価も高いですし、簡単という点からも これが一番いいかなと思いました。ニラとねぎも淡泊な鶏むね肉にぴったりで、レモンの塩だれがさっぱりしてプラス、スタミナもあるので、ありそうでなかったのかなという料理です」

2）厚揚げとキャベツのそぼろ炒め　1人分68円

「厚揚げがすごく好きなのでよく使うんですけど、これはお腹がいっぱいになるのと、ご飯にかけてもおいしく食べれます。キャベツもひき肉も厚揚げもリーズナブルなので抵抗なく買える食材。調味料も家にあるものを使っているので、合わせ調味料で合わせて混ぜて炒めるだけとシンプルにできますし、満腹感とお値段の面から2番目に好きだなと思いました。私、料理は割とその日に考えちゃっているものが多くて、これもある日、スーパーに行って、安いからこれとこれとこれにしようという形で作っただけですね。たまたま思いついた料理です」

3）辛くないよだれ鶏　1人分79円

「これもむね肉なんですけど、割と自分がこういうタレ系を作るのが得意なんですよ。辛くないのでお子さんも食べられますし、大人の方はラー油をかけて食べられます。タレは何回か味見して、お砂糖を少し入れてまろやかにしてあげるのが好きですね。あと、ごま油を少し加えるだけで風味もグッとよくなるので、よく使います。ほかに鶏ガラスープの素を少し入れてあげると、このレシピでは本当に小さじ2分の1だけなんですけど、コクが出ますね。タレにねぎを浸しておくとさらにねぎのうまみも出るので、冷蔵庫に10分ぐらい置いておくのもおいしくするコツです」

　最後にもう1品。今回ベスト3には入らなかったものの、インスタで3万超の「いいね！」を集めた絶品料理を紹介してくれた。著書の表紙にもなった「鶏肉のてりたま炒め」（1人分156円）だ。

「これこそまさに冷蔵庫にあるものだけで作っていて、自分のランチ用に作っただけだったんですけど、見た目も良かったのかインスタでもすごく人気で、どんぶりにして食べていただく方も結構いらっしゃいました。親子丼だと煮込むのが面倒くさかったりするじゃないですか。卵が硬くなっちゃったりとか。これだと肉を炒めて、時間かかっても5分10分ぐらい煮詰めて、卵をあとでふわふわっと載せるだけなので、親子丼より楽かなって思いました。仕上げに七味をかけたらおいしかったので、手抜き親子丼みたいな感じです（笑い）」

　夫が大食漢のため、ひと皿ごとのボリュームにもこだわったという。安いだけではなく、満足感たっぷりのメニュー、ぜひ作ってみては。

□まいのごはん。　料理研究家、調理師、食生活アドバイザー。イタリアンレストランのシェフからキャリアをスタートさせ、その後、調理師として保育園で幼児食や離乳食を担当。現在は、インスタグラムでレシピを発信するほか、食品メーカーや農家のレシピ開発・撮影なども手がける。2人の娘、シェフの夫、犬の5人家族。

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