厚切りジェイソン、投資よりも“支出の見直し”の重要性力説「意識を変えた方がいい」

タレントの厚切りジェイソン(36)が、昨年11月に著書「ジェイソン流お金の増やし方」(ぴあ)を発売し、累計50万部(電子書籍を含む)を突破。オリコンBOOKランキング上半期1位を獲得した。

厚切りジェイソン【写真:ENCOUNT編集部】
厚切りジェイソン【写真:ENCOUNT編集部】

著書「ジェイソン流お金の増やし方」で50万部を突破

 タレントの厚切りジェイソン(36)が、昨年11月に著書「ジェイソン流お金の増やし方」(ぴあ)を発売し、累計50万部(電子書籍を含む)を突破。オリコンBOOKランキング上半期1位を獲得した。(取材・文=梶原誠司)

 同書は、芸人兼IT企業役員として活躍しているジェイソンが書いたお金にまつわる書籍。15年に渡る投資経験を元に、投資初心者に向けて“ジェイソン流のお金の増やし方”をつづっている。そんなジェイソンにお金の哲学や今後の活動について聞いた。

 NHK-Eテレなどでレギュラー番組を持ちながら、企業役員としての仕事もこなすジェイソン。「お忙しいんじゃないですか?」と聞くと、「でも、こういう仕事は待つ時間が長いですからね。リモートワークですと、例えば電車乗りながらとか、楽屋で待ちながらとか、ササッとなにか一つの作業を終わらす。時間を無駄遣いしないようにしています」と答えが返 ってきた。

 以前から、IT会社の役員という肩書きもあって、その経験則から先輩芸人から投資について聞かれることも多かったそうだ。さらにコロナ禍になったことで、より取材などで聞かれることが増えたという。ならば、一気に本にまとめてしまった方が効率がいい。これが同書を出版するきっかけとなった。その本が重版を重ね、50万部を越えたのだが、ジェイソンは「うれしいというか、将来にその人たちにいい影響が与えられたのなら、世の中に役立ったのかな」とあっさりとした感想を述べる。

 本が売れた理由はどこにあるのだろうか。ジェイソンは「分かりやすさが結構評価されているポイントだと思いますね」と分析する。同書ではジェイソンの日々の収入や日々の買い物など、お金に対する考え方を全体的に分かりやすく説明。ジェイソンから見た安定した成長性のある長期的な投資など、お金を増やすための具体的な方法論を解説している。

 来日して11年。アメリカ人から見た日本人の金融リテラシーをどう感じているのだろうか。ジェイソンは「何も考えていないアメリカ人の方が多いかもしれませんからね。日本人に限らず、考えている人と考えてない人は、どこにでもいるんじゃないですか」と話す。日本では今年度から2022年度高校家庭科(対象は1年生)にて、新しい指導要領に基づいた「資産形成」の授業がスタートする。ところが、アメリカでは決まった金融リテラシーの授業というのは特にない。ジェイソンは「アメリカはより先生の自由が与えられていて、教えたい先生がいればそういう授業もやることはある。それより学校ではなくて家庭内で補足している人が多いと思う。僕が感じているのは、日本では学校教育以外のものを補足していない。お父さんたちも毎晩夜遅くまで仕事していて、子どもと会話する時間も少ないですよね」と家庭教育の重要性を説く。

30代中盤でFIRE達成も…「ただの計算です」

 ジェイソンは“FIRE”(経済的自立と早期リタイア)を19年に達成している。30代中盤にして家族全員が安心して一生暮らせるだけの資産を手にしたのだ。しかし、ジェイソンは「それはただの計算上のことですけどね」。続けて、「年間支出の25倍の財産があればFIRE達成と言える。それ以上の意味は何もない。ただの計算です。計算上のFIRE。支出が低ければ、そんなに財産がなくてもできるんですよ。年間100万しか使わない人が2500万円貯めれば達成できる」と淡々と説明する。一応、FIRE達成の感想を聞いてみたが、ジェイソンは「全く何も感じてないです。無です。興味がないですよ」とかぶりを振る。

 ここでジェイソンは体を前に乗り出す。「そこじゃなくて、支出を意識した方がいいですよということが一番大事。多くの人が投資の輝きに惹かれているみたいで、それが注目されていますが、それよりも大事なのは、お金が入ってきてそれを無駄遣いしている人は、いくら投資で稼いでもお金が増えないですね。まずは自分のお金とどう付き合っているのか見つめ直した方がよくて、そこからは収入を増やすとか投資で資産運用とかでいろんなことができるんですけど、一番大事なのは第一歩、支出の見直しですね。ただそれは地味すぎてあまり興味が湧かない人が多いというか、当たり前のことではありますけど、それが非常に大事で一番意識を変えた方が、考え直した方がいいというのが僕の言いたかったところなんです」。

 同書では投資だけでなく節約についても詳しく説明している。ジェイソンは「節約は稼ぐよりも力があるんですよ。例えば時給1000円のところで1時間働いたら、そのお金で100均で何個のものが買えるでしょうか。10個と計算上は言いたくなるんですけど、所得税とか住民税とか引かれたら残る700円となるかというと、そうではない。消費税とかも引かれて残るのは600円。600円節約するのは1000円稼ぐのと同じ価値になるんですよ。お金を使わない方が将来の財産になるという考え方ですね」と強調している。

 ジェイソンは、米国株ETF(上場投資信託)に積立投資をして資産を作りあげた。なぜ米国株なのだろうか。ジェイソンは「あくまでも利益を出しやすい。一番、お金が増えるという基準で考えたときに、アメリカ株がいいと思うんですよ。アメリカは福利厚生があまり整ってないし、言い方が悪いですけど社員を犠牲にしてでも企業の利益を増やそうとする。日本は社員を大事にするので、その分の利益が株主に還元されないんですよね。単純に自分のリターンが欲しいのならば、福利厚生を考えないでいい企業の方が有利ですよね」と説明する。さらに、「報酬や待遇がアメリカはものすごい高いんですよね。そうすると世界の一番有力な人たちがアメリカに流れていく。アメリカは一番強いと思うんですよ。お金を増やすという意味ではね。日本に投資する場合は他の目的があると思うんですよね。自分が参加しているコミュニティーを支援したいとかね。ただ単純にお金を増やすという意味ではアメリカを越えることはないと思います」と断言していた。

「Why Japanese people!?」のフレーズで一世を風靡したネタは5、6年やってない。ジェイソンは「もう10年以上、こっちで生活してるからさ。魚が水のことを考えないのと一緒で、日本人に対して思うことはもうないよ」と笑う。しかし年間50回は講演会を実施。ジェイソンは「ニーズがあれば講演会はいくらでもやります。いくつかの映画とか俳優的なこともやっているんですけど。できればそれも楽しくやりたいですね」と語る。投資も生き方もソツがなくマイペースなジェイソンの人柄が垣間見えた気がした。

□厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)1986年4月9日、アメリカ・ミシガン州生まれ。17歳でミシガン州立大学に飛び級で入学。卒業後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校へ進み、エンジニアリング学部コンピューターサイエンス学科修士過程修了。現在は3姉妹のイクメンパパながらIT企業の役員も務める二刀流芸人であり、NHK「えいごであそぼ with Orton」にレギュラー出演するほか、情報番組でコメンテーターを務め、ドラマや映画に出演するなど幅広く活動している。186cm。

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