斎藤工に陰ながら出資する超大物アーティスト「6年前から。そんなことは一切言わない」

斎藤工(41)は俳優のみならず、監督としても製作ラッシュだ。今年は短編、長編合わせて4本の作品のメガホンを取る。しかし、今、最も重要だと思っているのは、移動式映画館での活動だと語る。今の映画界への思いを正直に語りつつ、意外な交友と支援を明かしてくれた。

映画界への思いを語った斎藤工【写真:舛元清香】
映画界への思いを語った斎藤工【写真:舛元清香】

伊藤沙莉主演の監督作「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」が公開中

 斎藤工(41)は俳優のみならず、監督としても製作ラッシュだ。今年は短編、長編合わせて4本の作品のメガホンを取る。しかし、今、最も重要だと思っているのは、移動式映画館での活動だと語る。今の映画界への思いを正直に語りつつ、意外な交友と支援を明かしてくれた。(取材・文=平辻哲也)

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 コンプラ一辺倒の世情に疑問を投げかけた監督作「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」で参加したオムニバス映画「MIRRORLIAR FILMS Season4」が公開中の斎藤。監督としてのプロジェクトは計4本進行している。5月には大分・別府を舞台にした短編映画プロジェクト第3弾「縁石」を撮影。来年には小説現代新人賞受賞作を原作にした窪田正孝主演のホラー「スイート・マイホーム」の公開を控える。俳優業と監督業のバランスをどう取っているのか。

「年に何回か、民放のドラマに出たほうがいいなとか、こうした方がいいんじゃないかというスタンスは一切ないんです。僕は今までみたいな感覚でいることが一番怖いなと思っています。表の仕事、監督業も含めて、なにかしないといけないという必然性もない。むしろライフワークとしてやっている移動映画館の活動が一番大事だと思っています」

 映画館のない地域に出向き、映画を上映する「cinema bird」は子供たちに映画を届けようというプロジェクトだ。2019年には、この活動に対して、日本映画ペンクラブ奨励賞も受賞した。

「3年ぐらい経ちますが、児童養護施設の彼らとアートを繋げることをやっています。これは収益には繋がらないんですが、自分の生かし方として間違ってはいないのかな、って。映画体験したことないお子さんに初めて映画館体験してもらう。今は医療従事者の方たちに向けて、映画上映ということもやっていて、本当に光が当たるべきところに光を当てられる。きれいごとじゃなくて、そっちにシフトしていきたいんですよね」

 今年は主演を務めた大作映画「シン・ウルトラマン」が公開され、大きな話題になったが、今年は自分の生き方そのものを見直す年だという。

「誰かにどう見られているのか、とかバランスを気にすることにも価値を感じない。惰性でなんとなく生きてしまうと、人生を無駄使いしてしまう。だから変化を恐れず進みたい。それこそ10年後に良い選択をしたなと思える確証はあります」

 この時代に、コンプラ一辺倒の世の中に問いかけた「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」を発表した理由もそこにある。「時代は変わっていて、根こそぎ変わるべきタイミングに来ている。多分、今の時期にちゃんと変化をしていけるかが大事。僕は好きで、この道を選びましたが、映画って何だろう、お金を頂いて、足を運んでもらうモノって、何だろうと本当に考えています」。

意外な交友と支援について明かした斎藤工【写真:舛元清香】
意外な交友と支援について明かした斎藤工【写真:舛元清香】

「ドライブ・マイ・カー」の急な称賛に疑問「手のひら返しだと思うんです」

 映画に対する業界内の評価にも疑問を持っている。それは米アカデミー賞国際映画賞を始め、数多くの映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」をめぐるものだ。

「この映画が世界で評価された時、日本の映画業界が『日本を代表するものだ』と急に称賛したじゃないですか。これって、手のひら返しだと思うんです。メジャーから、そういう作品が生まれてこない自体を決して見ていない」

 同じく「MIRRORLIAR FILMS Season4」に参加した福永壮志監督への評価にも不満がある。北海道出身の福永監督は2007年にニューヨーク市立大学ブルックリン校映画学部を卒業。ニューヨークとアフリカを舞台に移民の姿を描いた初監督作「リベリアの白い血」(2017年)がベルリン国際映画祭などに選ばれた新鋭だ。斉藤はその才能に惚れ込み、アイヌの少年の姿をドキュメンタリータッチで描いた第2作「アイヌモシリ」(21年)ではボランティアでスチールを担当した。

「福永さんは骨太な作品を撮る、大好きなクリエイターです。2作目の『アイヌモシリ』は日本映画にとっても超大事な作品だと思っていますが、その福永さんも日本には身を置いていないですし、(『37セカンズ』)のhikari監督もアメリカを拠点にしている。分かっている人は外に出てしまう。日本はクリエイターが育つ業態にはなっていないんです」

 それでも、斎藤自身は優秀な映画人への支援を惜しまない。「ただ、僕がやると、タレント的に見えてしまうところもあるんじゃないかと思っているので、(福永監督へは)新たな出資をすることでいいのかなとは思っているんです。そんなふうに僕のことを支援してくれているのが、福山雅治さんです。福山さんは、僕の長編映画に出資してくれているんですが、そんなことは一切言わない。6年前ぐらいに、初めてお会いして、ずっと支援を続けてくれています。そういう先輩がいるのだから、僕ももっと水面下でできることはたくさんあるんじゃないかなと思うんですよね」。斎藤が提起した言葉は映画界のトップには届くか。

□斎藤工(さいとう・たくみ)1981年8月22日、東京都出身。長編初監督作「blank13」では国内外の映画祭にて8冠受賞。HBO asiaのプロジェクトで日本代表監督を務めたFOODLORE「Life in a box」が、Asian Academ Creative Award2020にて、日本人初の最優秀監督賞を受賞。今年は主演映画「シン・ウルトラマン」が大ヒット。出演映画「グッバイ・クルエル・ワールド」(9月9日)の公開も控える。

・スタイリスト:yoppy(juice)
・ヘアメイク:KAZUOMI(メーキャップルーム)

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