旧車の高騰で業者のもうけは? 約2500台売った“旧車マスター”横田修氏「赤字になるリスクも」
新型コロナウイルス禍の中で、旧車ブームが到来している。車や家具、音楽など“古いもの”が大好きで、過去の販売店員時代に旧車約2500台を売った経験を持ち、旧車販売業を運営する横田修さん(48)は、1度目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に独立。厳しい船出になると思ったが、需要の高まりを実感しているという。そんな“旧車マスター”に、高騰化を続ける日本車の中古車・旧車の最新事情と、売り手の本音を聞いた。
独立してモットーに掲げるのは「欲しいと思っている人の手に届くように」
新型コロナウイルス禍の中で、旧車ブームが到来している。車や家具、音楽など“古いもの”が大好きで、過去の販売店員時代に旧車約2500台を売った経験を持ち、旧車販売業を運営する横田修さん(48)は、1度目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に独立。厳しい船出になると思ったが、需要の高まりを実感しているという。そんな“旧車マスター”に、高騰化を続ける日本車の中古車・旧車の最新事情と、売り手の本音を聞いた。(取材・文=吉原知也)
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もともと「古くていいもの」が好きで、吉祥寺の中古CD屋で店長をしたり、古着を売ったり、古い家具の販売に携わってきました。29歳の時に車販売の道に入り、それまで約17年間働いた旧車販売店から独立しました。以前勤めていた販売店では、営業担当者とチームを組んで、取り扱った国内外の旧車約2500台を売りました。
ドバイから来たアラブ首長国連邦(UAE)のスカイラインGT-R愛好家の案内をしたこともありますよ、「ケンメリ、ジャパンの部品を探しに来た」と言ってきて。ポーランド人に「トヨタ スポーツ800」(ヨタハチ)を売ったこともあります。いきなり見知らぬ番号から電話がかかってきて、表示が海外で「なんだこれは。大丈夫かな」と思って出たら、英語で話してきて。なんとか自分のメールアドレスを伝えたら、ポーランドのヨタハチファンが欲しいとのことだったので、メールのやりとりを重ねて無事に輸出できました。日本の旧車については海外人気の高まりを感じています。
僕が独立して目指していることにつながるのですが、今は国産車の旧車の相場がものすごく高くなっています。これはあくまで例として出しますが、70年代のスカイラインGT-R仕様の「GTX」ベースの改造車があるとして、昔は150万円ぐらいで売っていたものが、いまでは1000万円以上に値上がりしています。他にも、2000万円、3000万円を超え、さらには法外とも言える値段のものも見受けられます。王道の旧車を欲しいと思っている人が買えない状況になってしまっています。そこに疑問を感じていて、「欲しいと思っている人の手に届くように。旧車を楽しんでもらえるように」。そう強く思って、日々の仕事に取り組んでいます。
誰かを悪く言うつもりはまったくないですが、コロナ禍で旧車ブームになっている中で、「元々人気の旧車はいつまでも高いのか」ということを考えています。いまは主に70年代の国産スポーツタイプの旧車が高騰していますが、旧車に興味がある若者は、80~90年代の見た目がかわいい・かっこいい車に関心を持っているように感じています。世代によって人気の度合いが変化することがあるかもしれません。「高く売るため」だけではなく、後世に大事に残してもらえるよう、本当に欲しい人につながっていくようになれば。そう強く願っています。
若者による中古車選びの「新しい視点」が出てきていることを実感
いま高騰化が続いて言わば“釣り上げ”のような雰囲気もありますが、より高く売ってやろうとホールドするのではなく、その車を楽しんでもらえる人に引き継ぐ、という意識が大事になってくるんじゃないかなと思っています。
それによく、「旧車を高く売っている業者はもうかっているんじゃないか」と言われることも多いですが、言われるほどそうでもないんですよ。オーナーからの買い取り価格も高騰化していて、かなり高い値段で仕入れることになります。業者にとって綱渡りの要素もあり、逆に赤字になるリスクもあったりします。
高騰化に関することはここぐらいにします。いま個人的に注目しているのは、20代からの問い合わせが多いことです。いま人気の「マニュアル車でスポーツグレードの旧車」ではない車種でも興味を持ってもらえているんです。「見た目がかっこいい、かわいい、オートマでOK、エアコンが付いていると快適」。そのような観点です。ワンボックスが人気で、この間はトヨタのマスターエースサーフを売りました。5ドア・ハッチバックのトヨタ・スプリンターはおしゃれだと言ってもらえて。値段は100~150万円で、200万円は超えません。「200万円しないぐらいの値段なら、ちょっといい軽自動車の新車もいいけど、ちょっとおしゃれで個性的な中古車もいいよね」。そんな中古車選びの新しい視点が出てきていることを実感します。
それに、中古車・旧車は何度も壊すとか、やたら走行距離を増やすといったことがなければ、丁寧に乗っていれば、売る時にもだいたい買った時と同じ値段で売れるものです。古いものを大事に扱えば、また誰かに大事にしてもらえます。この間は、セリカを買った20代の男の子が、乗っていたらいろいろな人に声をかけてもらうようになって「買ってよかった」と言ってくれました。車は人と人を結び、縁をつなげてくれるものだと思っています。この気持ちを大事に、車を売っていきたいですね。
□横田修(よこた・おさむ)、神奈川県相模原市出身。成城大文芸学部国文学科卒業。旧車販売店「スウィンギンモータース」を運営。音楽活動もしており、ラスティック系バンド「金襴緞ス」のメンバーで、アコーディオンを担当。YouTubeチャンネル「スウィンギンモータース / SwingingMotors」に自ら出演し、旧車の魅力を発信している。愛車はマツダの「オートザムスクラム」とホンダの「エレメント」。