【電波生活】「探偵!ナイトスクープ」愛され続ける理由 調査依頼は週に約600本、番組Pのこだわり
注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回は1988年にスタートして放送35年目に入った朝日放送テレビ「探偵!ナイトスクープ」(関西地区は金曜午後11時17分、他の地区は公式HP参照)。視聴者から寄せられた謎や疑問を、松本人志局長のもと探偵が調査するバラエティー。近藤真広プロデューサーに番組で取り上げる依頼がどんな仕組みで選ばれているのか、また、近年の依頼の特徴や番組が長く愛されてきた要因、制作のこだわりを取材した。
放送35年目、プロデューサーが明かす長く愛されてきた要因とこだわり
注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回は1988年にスタートして放送35年目に入った朝日放送テレビ「探偵!ナイトスクープ」(関西地区は金曜午後11時17分、他の地区は公式HP参照)。視聴者から寄せられた謎や疑問を、松本人志局長のもと探偵が調査するバラエティー。近藤真広プロデューサーに番組で取り上げる依頼がどんな仕組みで選ばれているのか、また、近年の依頼の特徴や番組が長く愛されてきた要因、制作のこだわりを取材した。(取材・文=中野由喜)
「まず『ナイトスクープ』という番組が他の番組と大きく違うのは、調査の依頼が来ないと動きようがないこと。本当に受け身の番組ですが、週に500~600本の依頼がきます。すべてスタッフ全員で目を通します。基本的に1回の放送で3本の依頼に応えていますが、3本それぞれにディレクターがいて、各ディレクターが、どの依頼が面白くなりそうかを考えて選んでいます。取り上げるのは、面白くなりそうとか、興味深そうとか、何とかしてあげたいとか、そういう思いをディレクターが依頼文から読み取ったからです。番組としてこういう依頼をやるべきという話はしていません」
各ディレクターの考え、思いで調査する依頼が決まっていた。その影響や効果はどうなのか。
「ディレクターの好みが大きく出ます。虫や動物が好きなディレクターはそういう依頼を選びますし、会議室などでコンパクトにやるのが得意なディレクターはそういう依頼を、大がかりなことをしようとするディレクターはそうした依頼を選んでいます。子どものネタを扱うのが上手な人、人の心の部分を触らせたらうまい人など、いろんなディレクターがいます。それぞれの個性が依頼選びの多様性につながっていると思います」
依頼が毎週500~600本。取り上げられなかった依頼はどうなるのか。
「どんどんたまっていきます。取り上げたい依頼が無ければ前の週に届いた依頼からとか、極端な話、1年前、2年前と遡って選びます。逆に、今、届いたばかりの依頼ということもあります」
自分の依頼は採用されなかったとあきらめていたら突然、採用されることもあるようだ。続いて放送では分からない舞台裏の苦労を聞いてみた。
「1つの依頼のVTRは11分ほどですが、当然、その約11分のVTRを作るために撮影に出かけますが、実はこちらが思っている以上に早く依頼が解決してしまうことがあるんです。過去に何度もありました。現場に到着した瞬間に解決したこともあります。エスカレーターにうまく乗れない子どもを乗れるようにしてほしいというお母さんの依頼で、現場に行き、1回、乗れないところを見せてほしいとお願いしたら乗れちゃったんです。その後はディレクターの腕の見せどころ。どうVTRを作るか。そのときのVTRは子どもたちのエスカレーターの工場見学になりました(笑)」
最もエネルギーを注いでいること、こだわりも聞いてみた。
「一番は依頼をどう解決するかを考えること。こだわりはスタッフと探偵が、依頼にどれだけ真剣に向き合えるかということだと思います。この番組は依頼者がいないと成立しない依頼者が一番の番組。依頼者にとってはテレビ出演が一生に1度かもしれません。一生に1度のテレビがいい思い出、一生の記念になるようにとディレクターと探偵は一般の依頼者の方々と接しています。依頼者のいい思い出、一生の記念になるために何ができるかを考えることが30年以上、『ナイトスクープ』がやり続けていること。それをちゃんとやっているからこそ今も依頼がたくさん届くのだと思います。今、困ったことがあったら『ナイトスクープ』に相談しよう、みたいになっているのはありがたいです」
番組の冒頭の「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れさまざまな謎や疑問を徹底的に究明する『探偵!ナイトスクープ』。私が局長の松本人志です」という探偵局長のあいさつは初代の局長から現在の3代目まで受け継がれている恒例のあいさつ。この言葉が受け継がれる意味も尋ねてみた。
「この番組の信念です。番組の最後で局長が言う『この番組は皆さんからのご依頼で成り立っています』も、この番組の大事なところです」
今後の番組への思いも聞いた。
「来年35周年。僕自身が携わったのは10年弱ですが、35年もやっていると同じような依頼や人の心の部分など変わらないこともありますし、その時代、その時代で変わっている部分もあります。今後について言うと、35年やっている番組はなかなかないです。知らない人がほとんどいない番組になっています。だからこそテレビ離れと言われている中、テレビでしかできないことが『ナイトスクープ』ならできる、というようになっていけたらと思います」
最後に時代により変化する依頼が気になり、近年の依頼の特徴を聞いてみた。
「コロナ禍の影響が大きくて、具体的な数字を調べたわけではなく感覚としてですが、家族についての依頼が多くなった気がします。コロナ禍で外に出ないので内々というか家族との接触時間が長くなり、依頼内容は家族の問題などが増えた感覚があります。それが番組にとっては時代に合ったものになっていくようなイメージをもっています」
新型コロナウイルスが「ナイトスクープ」の依頼内容にも影響を与えていたのは意外だった。あらためて時代を見つめ、映し出す番組と感じる。