「遭難一歩手前」「天気予報見てるのか」 登山者映した避難小屋の投稿が賛否両論

「ぞくぞく避難してきます、遭難一歩手前の登山者ばかりです」「これからぞくぞく来るでしょう。何日も前から情報を発信してますが、今山を歩いている方たちは天気予報を見ているのかと疑ってしまいます」。避難してきた登山者の画像とともに注意喚起を呼びかける避難小屋の投稿が、SNS上で議論を呼んでいる。

南アルプスの玄関口、甲斐駒ヶ岳の山頂から見た赤石岳方面【写真:ENCOUNT編集部】
南アルプスの玄関口、甲斐駒ヶ岳の山頂から見た赤石岳方面【写真:ENCOUNT編集部】

山梨方面から4~5日、静岡方面から3~4日かかる南アルプス最深部の赤石岳

「ぞくぞく避難してきます、遭難一歩手前の登山者ばかりです」「これからぞくぞく来るでしょう。何日も前から情報を発信してますが、今山を歩いている方たちは天気予報を見ているのかと疑ってしまいます」。避難してきた登山者の画像とともに注意喚起を呼びかける避難小屋の投稿が、SNS上で議論を呼んでいる。

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 投稿を行ったのは南アルプスの百名山、赤石岳山頂直下にある赤石岳避難小屋。夏季期間は管理人が常駐し、今シーズンからは事前の予約や宿泊料が必要となる実質的な山小屋だが、周囲に他の小屋がないこともあり、避難小屋としての役割も担っている。

 この投稿には「全くもってその通り」「危険回避が出来ない登山人は本当に情けない」「おそらく、ここまで来て山小屋を頼れば良いや! って浅はかな発想だろう。マトモな判断能力をもたない登山者は入山するな」と同意の声が上がる一方で、「避難小屋って避難するためにあるんじゃないですか?」「赤石岳って日帰りで登れるような山じゃないよね…連泊予定でしょ。装備を見ても。山の天気は変わりやすいし、こういう事はあるんじゃないの?」「登山者の安全目線であるのか避難小屋の受入態勢として困るのか、議論がわかれる情報提示のように思います」と疑問視する声も上がっている。

 南アルプス中央の最深部に位置する赤石岳は、標準的なコースタイムで山梨方面から4~5日、静岡方面からでも3~4日かかる山域にあるため、事前に天候の予測がしづらいという面もある。また、事前予約をしている場合、天候悪化によるキャンセルでもキャンセル料が発生するため、登山者が無理してでも登山を決行し、遭難のリスクを高めてしまうという構造的な問題もある。

 静岡県から赤石岳避難小屋の管理を委託されている運営会社の担当者は「投稿の意図については管理人の考えなので分かりかねますが、数日前から荒天の予報で、3日前まではキャンセル料もかからないので安全を優先してほしいという考えだったのではないでしょうか」と回答。その上で、「山小屋、避難小屋本来の目的として、緊急避難や遭難防止という目的もある。仮に予約していない場合でも緊急時は遠慮なく駆け込んでいただいて構いません。ただ、コロナ禍ということで密にならないようできるだけ事前に予約してほしいという思いもある。登山客の方にも、以前より慎重に計画をしていただきたいところではあります」と苦しい事情を説明する。

 今夏は山小屋のスタッフが新型コロナウイルスに感染し、急きょ営業停止となって予約していた登山客を受け入れられなくなるという問題も続出。場所によっては持ち込みのテント泊でも完全予約が必要となり、利用料を払わず勝手に山中にテントを張る「闇テン」も横行するなど、コロナ禍で山小屋の運営をめぐる問題が顕在化している。

 中には「日本の登山の問題の一つだと思うのですが、『スケジュールありき』ですよね。登山は『命優先』でなければならないと思う」「もう、南アルプスには行けませんね。コロナ禍で仕方がないけれど、完全予約になってしまって、自由が利かないから無理な山行にもなるんではないかと思います」と山小屋の在り方自体を問う声も。登山者と山小屋をめぐる関係も、コロナ禍で難しい局面を迎えている。

次のページへ (2/2) 【写真】内容を疑問視する声も…議論となっている赤石岳避難小屋の投稿
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