濃厚接触者の特定やめた保育園、感染増に保護者悲鳴 「無法地帯」「毎日のように感染者」

自治体によって、保育所が新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者の特定を取りやめたことに、保護者からは困惑の声が上がっている。

濃厚接触者の特定なしの保育園(写真はイメージ)【写真:写真AC】
濃厚接触者の特定なしの保育園(写真はイメージ)【写真:写真AC】

濃厚接触者カウントなしが波紋 SNSには保護者の悲鳴

 自治体によって、保育所が新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者の特定を取りやめたことに、保護者からは困惑の声が上がっている。

「本来だったら行動制限されるべき濃厚接触者が行動制限されない。発生した場所が保育園か会社かという違いだけで区別されるのはダブルスタンダード」

 東京都内の保育園に息子を預ける30代女性は取材に、こう思いを吐き出した。

 息子のクラスでは濃厚接触者の特定をやめてから感染者が急増し、クラスターが発生。16日にクラス閉鎖となった。

 保育園は都の方針に従い、7月から濃厚接触者の通知をやめた。女性はお盆の帰省を控えていた先週の時点で、息子のかかわりを告げられた。しかし、感染者がどのクラスで、接触具合がどの程度なのかの具体的な言及はなかった。「都の方針で濃厚接触者という言葉自体を使ってはいけないんですよ」と説明された。

 勤務先で陽性者の濃厚接触者となれば原則、5日間の自宅待機が必要だ。定義的には同じ濃厚接触者なのに、ルール的には帰省も可能な状況に首をかしげた。女性は祖父母への感染を恐れて、帰省をキャンセルしたが、すべての親子が同じ行動をするとは限らない。

「保育園内感染だからといって行動制限が免除されている。同じ立ち位置なのに制限されないのは、ウイルスをまん延させる可能性があるのではないか」と、女性は違和感を口にした。

「保育園濃厚接触者の特定なしになってから無法地帯」

 濃厚接触者をカウントしていれば、クラスター発生前に、まん延を防ぐことが可能だったかもしれない。そんな思いが女性によぎった。大人と比べ症状が弱い子どもは、発熱しても風邪と見分けがつかないケースもある。保育士が症状を訴えてから、初めてコロナと分かっては手遅れになってしまう。

 ネット上には連日、保護者の悲鳴が上がる。「保育園濃厚接触者の特定なしになってから無法地帯」「濃厚接触追わなくなって先生も園児もコロナに…1週間で20人」「保育園で濃厚接触者の特定をしなくなってから、毎日のように感染者の連絡がくる」「自分のクラスかどうかだけでも該当クラスの子に通知してほしい」と切実だ。

 濃厚接触者を特定しないのは、保健所などの負担を軽くし、社会活動を維持する狙いがある。

 ただ、結果的に陽性者が増えてしまえば、それは逆効果になる。

 保育所の負担も増える一方だ。基準が緩くなったその穴埋めとして、より一層の消毒や体調管理を求められ、保育士の確保に追われている。自治体の方針と感染対策を気にする親との間で板挟みになる一方で、子どもの多少の体調不良は気にせず登園させてくる親への対応にも苦慮している。

 複数の保育園を経営する60代の園長は、「何より親が仕事を休めないのが大きい気がします。子どもが『のど痛い』と泣いてるのに連れてきますし…。ギョッとしました」と、本音を打ち明けた。

「国のコロナ対応はどんどん緩くなっていますね。ウイルスは変異しているし、行動制限はもうしないし、感染者はこれからも増え続けると思います。園も丸投げされて相当な負担です。クラスターだけが心配」と不安そうな様子で話した。

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