熱中症アラート時の部活は中止すべき? 「文科省も保護者も学校丸投げ」教員の本音
連日記録的な酷暑が続いている日本列島。「熱中症警戒アラート」も発表され、不要不急の外出を避ける、昼夜問わずエアコンを使用する、運動は原則中止または延期するなど、危険な暑さへの警戒が呼び掛けられている。一方、中学校、高校では盛んに部活動が行われ、高校野球では甲子園大会が開催されているという状況に、疑問の声も上がっている。酷暑での部活動問題をどう考えればいいのだろうか。
アラート発表中の運動は「原則中止または延期」とされている
連日記録的な酷暑が続いている日本列島。「熱中症警戒アラート」も発表され、不要不急の外出を避ける、昼夜問わずエアコンを使用する、運動は原則中止または延期するなど、危険な暑さへの警戒が呼び掛けられている。一方、中学校、高校では盛んに部活動が行われ、高校野球では甲子園大会が開催されているという状況に、疑問の声も上がっている。酷暑での部活動問題をどう考えればいいのだろうか。
「命の危険に繋がる暑さなのに、『今日は何人吐いた』なんて報告を笑いながら職員室でする顧問たち…本当に異常だと思います。さすがに部活は停止すべきかと…」「部活していい暑さじゃないて。これ。熱中症アラート出ててもやってるって上の方から先生怒られるべき」「熱中症警戒アラートを常時表示して、屋外での活動を控えろと呼びかけながら、炎天下の甲子園アルプススタンドで休みなく踊り続ける高校生たちを映し続ける高校野球放送。狂気だろ」「部活は命をかけなきゃいけないものですか?」
熱中症警戒アラートが発表されている中での部活動や甲子園大会に、ネット上では多くの疑問の声が上がっている。環境省のホームページにはアラート発表時の行動について「不要不急の外出は避け、昼夜を問わずエアコン等を使用する」「のどが渇く前にこまめに水分補給するなど、普段以上の熱中症予防を実践する」といった項目に加え「エアコン等が設置されていない屋内外での運動は、原則中止または延期する」と記されており、アラート発表中の部活動に疑問を持つのはもっともだ。
現場の指導者たちはアラート発表中の練習をどう捉えているのか。過去に甲子園出場経験のある関東の強豪校監督は「結局、レギュラーを取りたい、試合で勝ちたい、大会で優勝したいという子たちは、練習を中止しても勝手に自主練をしてしまうんです。監督者がいないぶん、むしろそっちの方が危険なこともある。ただ、勝ち負けやレギュラー争いがある競技では、これは本質的に仕方のないこと。自主練まで禁止にしろということはできませんし、くれぐれも気をつけろよと認めるしかありません」と部活を中止にすることの難しさを口にする。
東北地方の別の強豪校監督は「水分補給はもちろん、12時から14時くらいの一番暑い時間は避けて、朝や夕に練習時間を調整しています」と熱中症対策の取り組みを語りつつ、「ただ、地方大会を勝ち上がり甲子園で勝つには、暑さへの耐性ができているかも重要。6月頃の急に暑い日が危ないと言われるように、ある程度暑さに慣れておく方がむしろ安全な場合もあるんです。うちのようにそこまで暑くならない地方では、あえて締め切った体育館でジャンパーを着たまま練習したり、中にはストーブを入れるところもあります」とむしろ暑さへの耐性をつけておくことも重要だと語る。
もちろん、熱中症のリスクは野球部だけの問題ではない。九州地方でバスケットボール部の監督をしている中学校の教員は「もちろん学校にもよるでしょうが、部活は強制しているものじゃなく、生徒がやりたくてやっているもの。若い先生の中にはそもそも顧問をやりたくない、毎日中止にしたいという先生もいますが、子どもたちが『やらせてください』というので、手当もないなかつきあっている。そのうえ保護者から『中止にしろ』と言われたら、それこそ板挟みですよ」と本音を漏らす。
「文科省なり教育委員会なりが、『何度以上は部活禁止』という強制力を持った基準を示すか、保護者は保護者で学校に中止にしろというのでなく、自分の子に『今日は暑すぎるから休みなさい』と言えばいいだけだと思うのですが……。対応を現場に丸投げしている文科省も、中止にしろという保護者も、結局学校に責任を押し付けているだけではないでしょうか」(前出の中学校教員)
長く続いてきた部活動という慣習と、近年急激に高まっている熱中症リスク。教育現場だけでは解決できない構造的な問題があるようだ。