ウシガエル大量捕獲でバズった“生物採集系YouTuber”マーシー、知られざる素顔と原動力
河川の生き物を紹介したり、生態系に深刻な影響を与える外来種の駆除を行う“生物採集系YouTuber”が話題を呼んでいる。チャンネル登録者数23万人超を誇るマーシーだ。琵琶湖を中心に、生態系保全活動に尽力する28歳は、脱サラして動画配信の道へ。アクティブに動き回り、外来種数万匹を捕まえまくる原動力とは何か。知られざる素顔に迫った。
もともとは不動産の営業マン…“生物採集系YouTuber”として約20種類の外来種を捕獲、ヌートリア料理も
河川の生き物を紹介したり、生態系に深刻な影響を与える外来種の駆除を行う“生物採集系YouTuber”が話題を呼んでいる。チャンネル登録者数23万人超を誇るマーシーだ。琵琶湖を中心に、生態系保全活動に尽力する28歳は、脱サラして動画配信の道へ。アクティブに動き回り、外来種数万匹を捕まえまくる原動力とは何か。知られざる素顔に迫った。(取材・文=吉原知也)
2020年6月にYouTubeチャンネル「マーシーの獲ったり狩ったり」を開設。生物採集を「ガサガサ」と表現し、これまでウシガエルやザリガニ、ブルーギル、アカミミガメなど約20種類の外来種を捕獲。ペットのカメの餌や肥料に活用し、特定外来生物である南米原産のヌートリアを料理して食べるなど大胆な行動も注目を浴びている。そもそも生物に興味を持ったのは何がきっかけなのか。
「出身は岡山で、父が魚釣りが好きで小さい頃によく連れて行ってもらっていました。釣りをして楽しいと思ったのがきっかけです。小学校に入ると、近所の用水路や田んぼに網を持って魚を取りに行くようになったのが、いまの仕事の原点です。中学・高校はインドアでしたが、大学は、静岡にある東海大海洋学部で海について勉強しました。サークル活動で魚の数を調べたり海に潜ったり、それこそガサガサをしていました」
一方で、実際に就職したのは、自然とは無縁である不動産の営業マン。大学で学んだことが現在につながっていったという。
「就職を考えた際に、生き物系の仕事であまり稼げるとは思えず、趣味でいいかなと思ったんです。滋賀で不動産の営業を4年やったのですが、やっぱり捨てきれなかったと言いますか、自分の中でやりたいことができてないなと感じるようになり、26歳で『今のうちだ』と転職を決断しました。自営業に挑戦しようと思いました。
当初は琵琶湖でエコツアーガイドをやろうと考えていました。大学時代に、OBにエコツアーガイドの方がいて、小学生の子どもたちにエコツアーを企画する授業があって、それがすごく面白くて。そこから『未来の子どもたちに何か伝えたい』という気持ちをずっと持っていたんです。ただ、僕が琵琶湖の自然を伝えるにしても、全然知らなかった。まずは琵琶湖そのもの、生態系はどんなものかを知ろうと思いました。YouTubeにも関心があって、営業マン時代に『広告費を自分で出せればめちゃくちゃ強い』と考えていたので、ついでにYouTubeもやりながら学んでみようと。『琵琶湖ガサガサ探検記』と名付けて動画をアップしてみたんです。最初の動画は編集に12時間もかかって、苦労していました」
それがYouTuberにシフトすることに。ある動画が運命を決定付けた。
「仕事を辞めることを決めたものの、その後、新型コロナウイルス禍が本格化して予想外の状況になりました。失業手当をもらいながらハローワークに通って、YouTube動画を作りながら自営業の準備を進めていました。失業手当が切れるタイミングの昨年1月に、ウシガエルをオタマジャクシ含めて4時間で3452匹捕まえた動画がものすごくバズったんです。1日で100万回再生される勢いで、それまで登録者数が半年間で500人だったのが、その動画を出した瞬間に1万5000人、2万人と増えていったんです。実際に収益化ができるようになって、ある程度生活できるぐらいのお金をいただけました。巡り合わせなのか偶然なのか本当にそういう機会に恵まれて、生き物系YouTuberになりました」
「実は、妻はカメも魚も触れません」 ガサガサへのさらなる意欲
網ですくって大量のウシガエルを捕まえ、特定外来生物のあまりの多さを嘆く自撮り映像は、現在約454万回再生をマーク。生態系保全への決意を深めたきっかけにもなった。
「ウシガエルの動画がバズった時に、『外来種を駆除してくれてありがとう』といった感謝のコメントが非常に多かったです。これがきっかけで、外来種問題についてより本格的に取り組み始めました」
日本全国に出向くこともあるが、主に琵琶湖中心に外来種の駆除活動を行う。滋賀県立琵琶湖博物館と連携して在来種の保護活動にも取り組んでいる。自身が率先して体験し、学びながらのYouTube撮影。視聴者目線が特徴でもある。
「『場所バレ』と言って、採集場所の地域を詳細に紹介すると在来種を乱獲する人が出てきちゃうんで、なるべく画角や背景を工夫して映らないようにしています。僕自身、何が外来種かということぐらいは知っていましたが、どういった影響があるのかは詳しくは知りませんでした。それが自然の中で実際に見ていくにつれて、ミシシッピアカミミガメはどういうものを食べているのか、ウシガエルの胃袋の中を調査したらこんなに量を食べているのか、そういった発見から在来種が減る理由が少しずつ分かるようになりました。僕自身が生き物と触れ合うだけで楽しいという感覚でやっているので、見てくださる多くの人に共感してもらえているのかなと感じています」
豊かな自然、生態系を守るために、どのような思いでこれからも川に網を入れていくのか。
「やっぱり、僕はガサガサをするのが一番好き。ずっと生き物に触れていたいです。一方で、地球温暖化など環境がどんどん変わっています。生き物の数がどんどん減っていっているので、それは嫌です。外来種駆除やゴミ拾いなどを通して、将来の持続可能社会に向けて活動していきたいです。それに、自然への感謝の気持ちもあります。生き物に出会えてありがとうという思いです。こんなに素晴らしい自然が残っていて、それを体験できている。自然のおかげなので、良くなるよう、何か還元できるようなことをしたいです」
このほど、一般女性との結婚を動画内で発表した。新たな原動力の1つという。
「実は、妻はカメも魚も触れません。生物はあまり得意なタイプではないんです。家庭を持つことで、『食わせなあかん』という気持ちがものすごく強くなっています。今まではちょっと休むことも考えていましたが、今はとにかく休んでいる暇はないと、より気合が入っています」
□マーシー、東海大海洋学部卒。趣味は生物採集の他に、音楽鑑賞。イシガメが大好きで、ペットはカメや淡水魚・海水魚など60匹以上。