YamatoN×MOTHER3対談 REJECTの“まざとん”がeスポーツとゲーム配信を語り尽くす

プロeスポーツチーム「REJECT」のチーム運営部で部長を務めるYamatoNと、同チーム所属の人気ストリーマー・MOTHER3が、6月10日から12日にかけて、イベントスペース「note place」で開催された「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2」Playoffsのウォッチパーティ(パブリックビューイング)に出演した。ENCOUNTの取材で、日本eスポーツ界を黎明期から支えてきたYamatoN氏と、ストリーマーとして急速に人気を獲得しているMOTHER3氏の対談が実現。その様子をお届けする。

YamatoN氏(左)とMOTHER3氏の対談が実現【写真:ENCOUNT編集部】
YamatoN氏(左)とMOTHER3氏の対談が実現【写真:ENCOUNT編集部】

REJECT主催のウォッチパーティに出演したYamatoN氏とMOTHER3氏が対談

 プロeスポーツチーム「REJECT」のチーム運営部で部長を務めるYamatoNと、同チーム所属の人気ストリーマー・MOTHER3が、6月10日から12日にかけて、イベントスペース「note place」で開催された「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2」Playoffsのウォッチパーティ(パブリックビューイング)に出演した。ENCOUNTの取材で、日本eスポーツ界を黎明期から支えてきたYamatoN氏と、ストリーマーとして急速に人気を獲得しているMOTHER3氏の対談が実現。その様子をお届けする。(取材・構成=片村光博)

――今回はファンを集めてのイベント開催となりました。感想はいかがでしょうか。

YamatoN「こういった企画は以前から構想していて、将来的にREJECTに所属する僕たちとファンの方々が一体感を持って応援していく、そういう文化になってほしいという願いがあります。今は進捗で言うと、レベル2(2段階目)でしょうか。お客さんも入って、REJECTに所属している人たちが一緒に応援している。VALORANTシーンの盛り上がりとともに、たくさんの方に来ていただいてワクワクしています」

MOTHER3「YamatoN部長が企画してくださって、協力させてもらっています。前回の企画(VCT Stage1のオンラインウォッチパーティ)にも反響がありましたし、お客さんを入れてオフラインでやることには特別感があって、イベントして成立していくと思います。僕は何かを目指していたというよりも、部長の企画に乗る形で今に至るような感じですが(笑)、こうやってお客さんが入っているのを見ると欲が出てくるな、とは感じています」

――実際にファンと直接会えることについてはいかがですか。

MOTHER3「リスナーって実在するんだな、AIがコメント打ってるんじゃないんだなって感じです(笑)。たまに思うんですよ。良いコメントも悪いコメントもいっぱいある中で、どういう人がどんな気持ち、どんな表情で打っているのかなって。だから会えてうれしいという気持ちはありますね」

YamatoN「リスナーの表情が直接見えるのはうれしいですよね(笑)。リアルで『頑張ってください』と言われたり、『こういうことをやってほしい』と言われると、めちゃめちゃうれしいです。こうやって“オフラインで”“みんなで”応援するというところが、一つのいい体験になればいい。次に目指すところとしては、その体験をより良い思い出にするために、会場や演出を考えていく段階になるのかなと。そこがレベル3。今回はレベル2をちゃんと遂行できるように頑張っていきたいと思います」

――YamatoNさんはチーム運営部長を務めています。担当しているのはどのような業務になるのでしょうか。

YamatoN「REJECTという会社で『eスポーツ』と付くものは全て関わっています。営業もそうですし、こうした取材もそう。eスポーツにおける会社の方針、4年後までの運び方や、小さいところを詰めたり……。ビジネス側は代表(甲山翔也氏)が詳しいので、僕はeスポーツ側やストリーマーイベント企画、そういったところを動かしています。そして4年後に向けてどう上手く動かしていくか。これからどんどん面白い発表が出てくると思うので、期待していてください!」

――そうした企画の中で、MOTHER3さんはオフラインイベントに適任として呼ばれたんですね。

YamatoN「REJECTのスターですからね。MOTHER3さんを軸にして、いろいろ展開していくことは考えています。ただのストリーマーではなく、演劇をやられていて、面白さはもちろん、たくさんの長所を持っている方です。ゲームが上手いだけじゃなくて、2つ目、3つ目の武器を持っている人材は本当に貴重なので、そういったところを活かして上手くやっていけたらいいと思っています」

――MOTHER3さんは配信活動開始から1年ほどですが、すでに人気ストリーマーの仲間入りを果たしています。演劇活動の経験は活きていると感じますか?

MOTHER3「役に立っていると思います。共通するのは、お客さんが100人いたらみんな感覚も違うということ。特に配信で規模が大きくなると、僕が面白いと思って言った言葉でも、全員が面白いと感じてくれることはないんです。同じ人気商売ではあるので、自分が面白いと思うことを発言していけばいいという思いは持っています。

 僕は配信するようになってから、他の方の配信を見るようになったんですが、言い回しや『こうやって話題を展開していくんだ』という視点で見るのは面白いですよね。配信はそうした部分が見えやすいんです。ゲーム配信は長時間になるじゃないですか。イライラすることもあるだろうし、粗も出やすい。どこまでそうした感情を出していいのか、そのラインは難しいなとも思いますね」

YamatoN氏は日本でのeスポーツの盛り上がりについて熱く語った【写真:ENCOUNT編集部】
YamatoN氏は日本でのeスポーツの盛り上がりについて熱く語った【写真:ENCOUNT編集部】

VALORANTの魅力は「1チーム対1チームでドラマが生まれやすい」

――お2人はVALORANTの配信も精力的にされています。同タイトルを中心に「見るeスポーツ」が日本で一気に台頭してきた理由はどう捉えていますか?

YamatoN「VALORANT自体の魅力としては、1チーム対1チームでドラマが生まれやすいし、ゲームの内容が分かりやすいというのが大きい。あとは、派手なシーンがカメラで抜かれやすいですね。それと同時に、ゲームが有名になるきっかけが何度もあったというところでしょうか。この辺を紐解くと10時間くらいかかってしまうんですが(笑)、配信文化とともにゲームを見る文化が根付いていって、その文化がバトルロイヤルゲームの大会などで膨れ上がっていった。でも、バトルロイヤルは試合展開が分かりにくいから、『個人のストリーマーの方が面白くないか?』となっていたところに、分かりやすくて大会を見ても面白いVALORANTが出てきた、という流れです。

(VALORANTを運営する)ライアットゲームズもちゃんとインフルエンサーをベータ期から紐づけて、『配信=VALORANT』のイメージを上手く付けたことによって数字が大きくなり、きっかけを与えた。そして、きっかけを与えて中身もきちんと面白いから数字を維持できて、今の規模に至るということだと思います。やはりインフルエンサーの使い方がすごく上手かったのと、見て分かりやすいところの2つなのかなと。

 VALORANTの魅力に絞ると、魅力的なエージェント(プレイ可能なキャラクター)がいて、プレイヤーやチームによって使い方が全然違う。個性が出やすいのも、面白さにつながっているのかなと思います。“達人の技”のすごさが目に見えて分かりやすく、チーム同士の対立構造がドラマティックになるというのも、大きいと思っています」

MOTHER3「世界大会を見ていても、日本でもめっちゃ盛り上がったじゃないですか。個人的に思うのは、VALORANTは“色味”が見やすいのかなと。今まで出てきたタクティカルシューターはゴリゴリの軍人がヘルメットをかぶって、暗いところで……という感じでした。そこから色鮮やかな場所で、髪の色もいろいろ、特殊能力を持った状態でタクティカルシューターをやっている。そうした色味も含めて、とっつきやすいのかなという気はしました。マップにも同じことが言えますよね」

YamatoN「声優さんのせりふもあったりして、面白いですよね。大会の配信で『頭にきた!』(エージェント・ネオンのアルティメット発動時のせりふ)って流れると分かりやすいじゃないですか。そういうところも流行るきっかけになったのかなと思いますね」

――これまで長くFPSゲームをプレイしてきたお2人から見て、日本のFPS界の変化をどう感じていますか?

YamatoN「僕は2008年、『サドンアタック』というタイトルからやっているんですが、今はユーザーの数が全然違いますよね。『サドンアタック』は最初、200人くらいしかいなかった。当時から考えると、『RAGE VALORANT』に6000人も来るなんて……。昔は50人集まれば多い方。6000人なんて意味が分からないですよね(笑)。

 あと、声をかけられることが増えました。この前、MOTHER3さんと飲みに行ったときも『あれ、MOTHER3さん?』と声をかけられました。だいぶ一般層にも浸透したのかなと思います。テレビでも取り上げられたりしていますし、より一般的なものに近付いてきている感はあります。選手の待遇も良くなって、ゲームをやって生活できている。しかも、コーチもアナリストもいる。リアルスポーツと近い領域まで来ていますよね。いろいろな意味で規模が大きくなっていて、自分が2010年くらいに『こういうことやりたいな』と思っていたことが実現できるレベルにまで来ていると思います」

MOTHER3「僕は2008年か09年、『Counter-Strike: Global Offensive』(CSGO)のベータテストからやっていました。当時は中学生でしたが、周りに(CSGOをやっていると)言えなかったんですよね。やっている子が少なくて、僕も“オタク”という偏見をずっと持っていて、スポーツをやっている裏でゲームをやっていました。『ゲーマーだって言えないなぁ』と思っていたら、いつの間にかこんな感じになっちゃって(笑)。今では『やってる?』『知ってる?』くらいの感じじゃないですか。羨ましいと思いますね。

 ストリーマーとしては、これだけ母数が増えると面白い人、ゲームの上手さ以外の魅力を持っていて、ゲーム業界にいなかったような人も参入してくると思いますが、来られると困るなと(笑)。面白い人は配信やっても面白いから、ライバルが増えて困るなっていうのはありますね(笑)」

YamatoN「実際、競争力は高くなっていくと思います。そこを解決するチーム力、企画力というところで、一丸となって勝負していければいいのかなとは思っています」

配信活動を初めて1年ほどのMOTHER3氏だが、環境は劇的に変化したという【写真:ENCOUNT編集部】
配信活動を初めて1年ほどのMOTHER3氏だが、環境は劇的に変化したという【写真:ENCOUNT編集部】

MOTHER3氏「配信を始めたこの1年で全然違う環境になりました」

――配信者やeスポーツ選手の置かれている環境もかなり変化しています。

YamatoN「すごく大きく変わっています。2016年くらいには、そもそもチームに所属する配信者がいなかった。僕らはOverwatchのチームを作るとき、宣伝と競技に分けるつもりで、選手を終えても配信者として移行できる人たちを集めたんです。今は4万人集めたりするStylishNoob(現・関優太/ZETA DIVISION)も、当時の視聴者数は250人とかでした。今とは規模感が全然違っていて、当時は僕らが配信してもお金になっていませんでしたが、その1~2年後には『こんな契約、いいんですか?』というほどに数字が伸びていったんです。今は選手も環境が良くなってきましたね。

 ただ、選手も配信者も、マネタイズ方法が確立されていない。現状だとグッズを売るくらいでしょうか。その中で、マネタイズの部分は僕らが先駆けてもっとやっていきたい。やり方はまだ言えませんが、そこにもっと価値を付けていきたいと思っています。今は選手の実力に価値を付けようと思うと、大会での活躍や、それに伴う配信の収益、そしてグッズくらいしかない。そうではなく、スキルに価値をつける媒体などを考えています」

MOTHER3「今まで役者で劇団員だったので、本当に地獄のような生活を送っていましたが(笑)、配信を始めたこの1年で全然違う環境になりましたね。だから不思議な感じはあります。

 ただ、生活が変わったかといえば変わっていない。お金が貯まったら引っ越そうかと思っていたんですが、引っ越しをしようと思っていたタイミングで演劇の舞台が戻ってきて、めちゃくちゃ忙しくなったんです。その繰り返しで、いつの間にか引っ越しの時期を逃してしまって、結局今も変わってないです。あえて、変わらない方が面白いのかな、とも思います。でも、今は欲があれば叶えられる状況にはなりましたし、なんでもできるんだろうなと思います。REJECTからも『やりたいことあったら言ってくださいね』と言われていますし、どんどんやっていけたらなと思います」

――REJECTの一員として、今後の展望はいかがでしょうか。

MOTHER3「僕は人前に出たいというエゴを突き通して、お金がない中で進んできました。ストリーマーとしても役者としても、その場所がある以上、取り組んでいく以上は、全力で力を貸すつもりです。その中でいろいろと学んで、『こうした方がいいんだな』『こうなっていくんだな』ということに気付きながら、行けるところまで行けたらなと思います」

YamatoN「REJECTとしての話をすると、MOTHER3さんはREJECTのブランドカテゴリを越えるような存在になってほしい。むしろMOTHER3ブランドを僕らが上手く作り上げていきたいと思っていて、そのために一丸となり、より確固たるコミュニティーとして、ブランドとして作っていきたいと思っています。他にもそういったブランドを今後作っていく構想はあります。

 僕個人としては世界一のチームを日本から出すという最終目標が決まっているので、そこから逆算して考えています。“世界一のチーム”と言うとよく『競技のことしか興味ないんだ』と言われてしまうんですが、そうではないんです。世界一のチームが戦っているときに、ミラーリングしているタレントにどんな人がいて、どれだけの人が見ているかによってマネタイズができて、それによって選手たちはより良いコーチ、より良い練習環境、より良い対戦相手を得ることができる。チームを強くするというのは一つの側面だけじゃなくて、さまざまな事業がないといけないと考えているので、あまりシンプルには言いたくはないんですが、目標は『世界一のチームを作ることを考えています』となります。いつも誤解されてしまうんですが、世界一のチームになるためにはタレントマネジメントもやらないといけないし、イベント企画もしないといけないし、ファンも大切にしないといけないという感じですね。

 配信者としても影響力を持っていたほうがいいと思うので、今後も継続していきます。今は力になってくれる方々とのコネクションを築いて、自分のタイミングやチャンスが来たときに一気に動けるように準備しています」

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