「THE MATCH」裏方が「カッコ良かった」と感じた武尊の姿とは? 「さっとシャツを脱いで…」

「世紀の一戦」と呼ばれた那須川天心VS武尊が行われた「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)が終わって、早くもひと月が経とうとしている。キックボクシングが生まれて45年あまりが経つが、ひとつの到達点であり集大成ともいえる大会で、リング上を彩ったK-1、RISE、シュートボクシング、新日本キックらの選手たち。そしてその調整役になったのがRIZINだった。そこで今回はRIZINの笹原圭一広報を直撃。注目の天心VS武尊における計量の舞台裏を聞いた。

前日計量での那須川天心(左)と武尊【写真:ENCOUNT編集部】
前日計量での那須川天心(左)と武尊【写真:ENCOUNT編集部】

キックボクシングを象徴する曲

「世紀の一戦」と呼ばれた那須川天心VS武尊が行われた「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)が終わって、早くもひと月が経とうとしている。キックボクシングが生まれて45年あまりが経つが、ひとつの到達点であり集大成ともいえる大会で、リング上を彩ったK-1、RISE、シュートボクシング、新日本キックらの選手たち。そしてその調整役になったのがRIZINだった。そこで今回はRIZINの笹原圭一広報を直撃。注目の天心VS武尊における計量の舞台裏を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

――「THE MATCH 2022」では全16試合が行われたんですけど、RIZIN側の意向みたいなものはあったんですか?

「全然なかったですね。K-1さん、RISEさんがお互いにアイデアを出し合って、すり合わせをしてあのカードになった感じですね」

――あの大会は、全16試合が行われていましたけど、印象に残った試合はありますか?

「あのなかでは、RIZIN的に羨ましかったのは、YA-MANvs.芦澤竜誠くらいですかね(笑)」

――当日、会場でかつてK-1で使われていた曲の「エンドルフィンマシーン」がかかったじゃないですか。

「カードにはこだわりはなかったですけど、そこはRIZINがこだわったところですね。ここはこの曲しかないだろうと。だって『THE MATCH』はキックボクシングの集大成で、キックボクシングという日本で生まれた文化、スポーツの到達点じゃないですか。だとすれば『エンドルフィンマシーン』はそれにピッタリじゃないかと僕は思ったんです。だから佐藤大輔のつくったオープニングのVが終わって、その曲がかかったら、間違いなく僕自身が興奮すると思ったし、何より自分がそれを見たかったんですよね(笑)」

――正直、反対は受けたんですか?

「いや、『絶対に反対だ!』みたいな感じではないですよ。ただRISEさんからすれば『K-1の曲ですよね?』ってなりますし、K-1さんからすれば『それは旧K-1の曲ですよね…』という思いはあったと思うんです。だからその気持ちをちゃんと汲んで説明をしなきゃいけないじゃないですか。『キックボクシングを象徴する曲として使いたいんです』って説明をしてご理解いただいたってことです」

――ネット上ではフジテレビへの当てつけじゃないかという声もありました。

「陰謀論ですね(笑)。そんな気は1ミリもないですよ。仮にそういう当てこすりをするんだったらもっと徹底的にやってますから(笑)」

――実際、そう思った方は多かったでしょうね。

「元々のアイデアは『エンドルフィンマシーン』が流れて、その後にTBSさんで『K-1MAX』が中継されていた頃に使われていた曲が流れて、もうひとつはK-1WGPで使われていた『戦車のテーマ』につなげようと」

――それもRISEからすると、「ちょっと…」ってなるし、新生K-1からすると、「それは旧K-1の…」ってなりますね(苦笑)。

「そうです。あとはそこにRIZINのテーマ曲も入れる案があったんですけど、僕は『THE MATCH』にはRIZINの曲を入れるのはあんまり、というか全然乗り気じゃなくて。RIZINの曲より断然『エンドルフィンマシーン』だろ!って、でもこれRIZINスタッフが言うセリフじゃないですね(笑)」

――キックボクシングは今から45年くらい前に野口修さんというボクシングのプロモーターをされていた方が立ち上げたとされていますけど、「THE MATCH」を見たらどう思うのか。興味がありますね。

「『THE MATCH』にはほぼ外国人も出ていないわけじゃないですか。決して大きくない階級の日本人を中心に大会をやって、東京ドームが満員にできた。それはキックボクシングに長い歴史があったからだし、天心選手にしろ、武尊選手にしろ、かつてのK-1を見て、そこからこれだけの熱を作り出せたわけです。キック関係者や選手は胸を張っていいと思いますし、もし僕がキックの人間だったら確実に威張りちらしてます(笑)」

――ワハハハハ。

「僕自身はやっぱりMMAの関係者で、キック関係者だと思っていないので、だからこそそういう見方になるのかもしれないですけども、今までやり続けて来たからその到達点があったんだと思います」

RIZIN的に唯一うらやんだ(?)、YA-MANVS芦澤竜誠
RIZIN的に唯一うらやんだ(?)、YA-MANVS芦澤竜誠

天心VS武尊をどこで見たのか

――笹原さんが、天心VS武尊で一番気になったことはなんでしょうか?

「体重ですね、一番僕が気になっていたのは。武尊選手があの体重(前日計量58キロ以下、当日試合3時間前に62キロ以下)を作れるのかどうか」

――ポイントはそこでしたね。

「もちろん、その都度、K-1の関係者に確認を入れていたんですけど、誰もが口を揃えて言うわけですよ」

――なんて答えるんですか?

「『絶対に大丈夫だ』って。そしたら、こっちとしては『なぜですか?』って聞くじゃないですか」

――根拠はあるのかと聞きたくなりますね。

「そうしたら『武尊は完璧主義者なので、体重が作れないなんてみっともないことは絶対にしてこないです。どんなことをしても、やると決めたからには絶対に合わせて来ますから』って、みなさんが口を揃えて言うんですよ。すごいなあと思いましたね」

――それは武尊選手のことを知っているからこそのセリフですね。

「実際、前日の計量の時には、最初、予備計量で体重計に乗った段階で、すでにアンダー100グラムだったんですよ。直前で水抜きをしたり、過度な減量をしたりするとフラフラになって体重計に乗ったりする選手がいるんですけど、武尊選手はささっとシャツを脱いで、普通に体重計に乗って簡単にクリアしたんで、カッコいいなあって思いましたね」

――翌日、当日の試合3時間前に再計量があったじゃないですか。

「ドキドキしましたよ。これ(規定の62キロを)オーバーしたらどうするの? って」

――不謹慎ながら、もし体重が規定以上になっていたら、それはそれで面白いかもしれないな、とは思ってしまう自分もいたんです。

「試合当日3時間前に戻しの計量をする試合なんて、少なくとも僕はそういう試合に立ち会ったことはないですからね。ただ、いつも思うのは、オーバーした時があった場合を考えて、想定して動いているのですけど、もしそうなった場合でも、規定では、その後、どの時間までにクリアすれば大丈夫という話にはしていましたけどね」

――結果、問題なく終わったと。

「戻しの計量も配信されていて、場内でも(大型スクリーンで)流されていたと思うんですけど、その前にふたりとも体重計に乗って。お互いに余裕な感じでしたね」

――その後、ついに天心VS武尊が行われるわけですけど、笹原さんはどこでご覧になったんですか?

「僕はあえて運営本部のモニターで見たんですけど、その場には僕しかいませんでしたね。一人っきりでこの試合を見ていました」

――みんな、リングサイドで見たかったんでしょうかね?

「会場内で見ていたんでしょうね。二人が入場するタイミングで、僕はK-1さんとRISEさんの控室にも行ったんですけど、そこにも誰もいなかったんですよ。だからさすがにみんな試合を見に行っているんだなと思いましたね」

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