結成20周年も肩書は「伝説の2位」「本当は面白い芸人」 “崖から落ちた”三拍子の本音

結成20周年を迎えたお笑いコンビ「三拍子」が8月5日に有楽町よみうりホールで単独ライブを開催する。テレビ番組の企画で芸人1000人が選ぶ「売れてないけど本当は面白い芸人ベスト10」の第1位に選ばれるなど、ボケ担当の高倉陵とツッコミ担当の久保孝真の漫才技術やネタのレパートリーは折り紙つきだ。しかし20年やってもなかなか浮上のきっかけがつかめない。そんな崖っぷちに立ち続ける2人がこれまでやったことのない1000人規模の会場を押さえて大勝負に出た。ライブのタイトルは「ラストチャンスと言わないで」。2人に勝算はあるのか? それとも本当にラストチャンスになってしまうのか?

単独ライブの意気込みを語った「三拍子」の高倉陵(左)と久保孝真【写真:ENCOUNT編集部】
単独ライブの意気込みを語った「三拍子」の高倉陵(左)と久保孝真【写真:ENCOUNT編集部】

「売れてないけど本当は面白い芸人」三拍子が20年目の大舞台へ

 結成20周年を迎えたお笑いコンビ「三拍子」が8月5日に有楽町よみうりホールで単独ライブを開催する。テレビ番組の企画で芸人1000人が選ぶ「売れてないけど本当は面白い芸人ベスト10」の第1位に選ばれるなど、ボケ担当の高倉陵とツッコミ担当の久保孝真の漫才技術やネタのレパートリーは折り紙つきだ。しかし20年やってもなかなか浮上のきっかけがつかめない。そんな崖っぷちに立ち続ける2人がこれまでやったことのない1000人規模の会場を押さえて大勝負に出た。ライブのタイトルは「ラストチャンスと言わないで」。2人に勝算はあるのか? それとも本当にラストチャンスになってしまうのか?(取材・文=福嶋剛))

――三拍子といえば「ラストチャンス」がキャッチコピーになっていますが、今回のタイトルも「ラストチャンスと言わないで」。

高倉「自分たちからラストチャンスって言ったことは1度もないんですけどね(笑)。今年開催された芸歴15年以上の芸人が争う『G-1グランプリ』でドキュメンタリー映像を撮ってもらったんですけど、そこでまた『ラストチャンス』って言われたんでね。『そんなふうに言わないでください』って(笑)。そんな気持ちを込めてタイトルにしました」

――「ラストチャンス」で思い出すのは2008年の「爆笑オンエアバトル・第10回チャンピオン大会ファイナル」(NHK)です。三拍子史上最高得点をたたき出したのにも関わらずトータルテンボスにその上を行かれて優勝を逃し、オンバトを卒業した「伝説の2位」です。

高倉「史上最強の第2位ですよ」

久保「高倉さんと当時のマネジャーが勝手に伝説って言っていただけですから」

――さらに「ENGEIグランドスラム」(フジテレビ系、18年)の番組内の芸人1000人のアンケートで「売れてないけど本当は面白い芸人ベスト10」の第1位にも選ばれて、今はこちらが肩書になっています。

高倉「もうそれも4年前ですからね。そろそろ肩書を更新したいけれど話題がない(笑)。だからラストチャンスぐらいは言っておかないとお客さんを1000人も呼べないですから」

――今まで200人規模の会場が上限だった三拍子がなぜ1000人規模の有楽町よみうりホールの単独ライブに売って出たんでしょう?

高倉「僕はもともとスターになりたくて北海道から出てきましたから、コンビを結成して20周年のタイミングで今度こそスターになって大きな会場でやってやると思って会場を探していたら、ありがたいことに『よみうりホール』さんが貸してくれることになって。それから『G-1グランプリ』のネット動画投票で1位を獲らせてもらったのでその賞金の100万円をさっそく会場費用に当てたんです。でもまだまだ全然足りないんですけどね」

――崖っぷちの大勝負でしょうか?

久保「違いますよ! 基本的にはもう崖から落ちてます」

――崖から落っこちたんだけどケガ一つなく元気だったと(笑)。

久保「その通りです。僕たち体が強いんでしょうね。落ちて終わりじゃなくて『なんとか上に登らなきゃ』って考える方なんで」

高倉「毎回、崖の上にもう1度戻れるかどうかのチャレンジですよ」

――今回単独ライブに向けて200万円のクラウドファンディングを実施したところすぐに目標を達成できました。

高倉「ありがたいですよ。でもその200万円でもまだ赤字ですから(笑)。やっぱりお客さんを1000人入れないと」

久保「僕はクラファンさえ届かないと思っていたから本当にありがたいんです。こんなにたくさんの人に支えてもらって本当にみなさんに感謝しています。って久保の方が言ってたってちゃんと書いてくださいね」

――もちろんです(笑)。やっぱりYouTubeの生配信で定期的に新ネタを見せてくれるところがファンを増やしている大きな理由の1つなのかなと思いますが?

高倉「生配信を毎週やり始めてからファンの人たちが目に見えて増えていったのは確かですね。それ以前は単独ライブでしかお客さんの数を知ることができなかったので。YouTubeをやってみたら『こんなに全国で応援してくれる人たちがいるんだ』って分かったことが大きいですね。やっぱり自分から動いていかないとダメですね」

――三拍子の過去の漫才を見たいときに見られるのも大きいですよね?

高倉「それも大きいみたいですね。でもYouTubeをやってみて分かったんですけど、ライブで受けるネタとYouTubeで受けるネタはまた違うんですよ」

「8月5日はぜひとも三拍子の単独ライブをご検討ください!」【写真:ENCOUNT編集部】
「8月5日はぜひとも三拍子の単独ライブをご検討ください!」【写真:ENCOUNT編集部】

20年で培った三拍子の「あうんの呼吸」

――有名なのは「自己紹介漫才」ですが、ほかにも「つっこみ間違い漫才」は、高倉さんのボケに久保さんがボケのツッコミを返して、最後に高倉さんがツッコミで返すという漫才で。後半はエスカレートして何度もお互いにツッコミ間違いを繰り返すというものすごいスピード感のあるネタで大好きなんですが。

高倉「あの漫才はかなり練習しました。何も決めてないところで何が来るのか分からないからお互いに面白いんですよ。だけど、あれこそテンポが早すぎるから僕らのことを知らないお客さんの前でやると付いてこれなくてあんまり受けなかったんです」

久保「丁寧ではないですからね」

高倉「YouTubeではすごく人気があって再生数も1番でしたから。こんなに面白いって思ってもらえるならともう1度ライブでやってみたら、やっぱり手応えがなかった」

久保「だからYouTubeは1回では理解できない漫才を何度も見られるからいいんでしょうね」

高倉「だけどやっぱりライブの反応が良いネタをやるのが僕らにとっては1番気持ち良いですし面白いですね」

久保「基本的に僕はアウェーが好きなんですよ。たとえばメイプル超合金と一緒に地方とかに営業に行くと明らかに彼らを見たいお客さんが来るじゃないですか。逆にそっちの方が『今日は俺の仕事があるぞ』って燃えるんですよ」

――三拍子ってJ-POPの曲など、音楽キーワードが時々出てきますが、音楽に置き換えると作詞作曲が高倉さんでアレンジャーとかリズム隊が久保さんみたいな。そんな2人の関係に見えるのですが実際はいかがですか?

高倉「そうですね。僕は演技力が皆無なので演出的な部分も久保が担当するときもあります」

――久保さんのツッコミは作品自体にリズムを与えてくれますよね。

久保「急に崇高な仕事をしてるような勘違いをしてしまいますが(笑)。それで言ったら僕はベーシストに憧れているんで、漫才でファンキーなベースを弾いているようなイメージですよ」

――ネタ自体もスタンダードなものから「予定調和が嫌だから漫才」は完全にフリージャズですよね。

久保「そう! フリージャズですよ(笑)。あれは難しかった」

――その辺りも20年という時間で培った“あうんの呼吸”みたいなものも感じますが。

高倉「僕は結構、やりたいことや思いついたことをやらせてもらっているので、たぶん相方の方が大縄跳びの中に入る瞬間みたいにうまくこっちに入ってバランスをとってくれているんですよ」

久保「高倉さんが気持ちよくしゃべっていたり、お客さんに受けているときはあまりしゃべらないって決めていて、時間が来たら『黙れ』って言うくらいで。むしろ僕は高倉さんが手こずる現場の方がやる気が出るんですよ」

――20年という時間で変化したことはありますか? 久保さんは20年の間に家族ができてお子さんも大きくなって。

久保「長女は小学生で父親が何をやっているのかも良く分かっていますよ。それこそ毎週配信やっている漫才をとりあえず1分ぐらいは見るらしいです」

高倉「短いなあ(笑)」

久保「父親を確認してすぐに離脱します(笑)。やっぱり家族を持ってから高倉さんにツッコミを入れたり、叱るときの口調が『ちゃんとしなさい』みたいな子どもを叱る口調になってしまいますよね。あとは高倉さんが離婚してから優しくなりました(笑)」

高倉「たしかに久保の言葉使いは優しくなった(笑)。ステージ上ではあまり変わらないけれど、どこかで自然に20年という時間がにじみ出てくるところはあるのかもしれないです」

――では21年目以降の三拍子の抱負は?

久保「健康に気をつけるってことくらいじゃないですか(笑)」

――そんなおふたりの20年の集大成となる単独ライブまであと1か月を切りました。

高倉「めちゃくちゃ怖いですよ」

久保「ほんと(笑)。皆さんの力をお借りして」

高倉「まずは三拍子の20年の集大成になるような漫才をしっかり披露して、チャレンジ的なものも新たに見せたいと思っています。見に来ていただけたら面白いのは間違いないですから、迷っている人は安心してチケットを買ってください」

久保「早めにチケットを買っていただくという方向でぜひともご検討ください」

高倉「僕たちに安心感を!」

□三拍子(さんびょうし)2001年結成のお笑いコンビ。高倉陵(たかくら・りょう)1981年2月16日生まれ。北海道出身。久保孝真(くぼ・たかまさ)1981年10月8日生まれ。東京都出身。2008年「爆笑オンエアバトル第10回チャンピオン大会」準優勝。2011年「第10回漫才新人大賞」優秀賞、「第6回決戦!お笑い有楽城」優勝。12年「第3回お笑いハーベスト大賞」大賞。14年「THE MANZAI 2014」決勝進出。22年8月5日、有楽町よみうりホールにて三拍子20周年単独ライブ「ラストチャンスと言わないで」を開催。

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