偏差値29だった東大卒ママの子育て 「勉強しなさい」はNG、誰でも実践できるテクニックは?
高校3年から本格的に受験勉強をスタートし、数学の偏差値29から1浪して東大理科Ⅱ類に合格した杉山奈津子さん。現在は作家、イラストレーター、杉山塾代表として活躍し、小3年男子の母でもある。やはり息子にも東大を目指してほしいのか。息子にどんな教育をしているのか。偏差値29だった東大卒ママの子育てを取材した。
小3男児の母で作家の杉山奈津子さん 息子にも「東大を目指してほしい」
高校3年から本格的に受験勉強をスタートし、数学の偏差値29から1浪して東大理科Ⅱ類に合格した杉山奈津子さん。現在は作家、イラストレーター、杉山塾代表として活躍し、小3年男子の母でもある。やはり息子にも東大を目指してほしいのか。息子にどんな教育をしているのか。偏差値29だった東大卒ママの子育てを取材した。(取材・文=中野由喜)
「個人的には東大を目指してほしいと思っています。自分が東大に行って良かったという思いがありますから。東大は人数が多く、いろんな学部があり、いろんな友人ができます。今、つながっている友人もいろんな職業の人がいて、得意分野で参考になる話を聞かせてほしいと頼んだりしています。たとえば病気の時には医学部の友人に、法律については法学部出身の友人に。友人を作るにも仕事に就くにもいろんな分野に可能性が広がります。東大はクラスを作ってくれるので親しい友だちができやすく、入学間もなくオリエンテーション合宿と称してクラスで遊びに行く機会も。とにかく横のつながりができやすいです」
まだ8歳の子どもには東大を目指す土台として、まずはモチベーションが必要かと思う。
「息子には、お母さんは東大に行き、こういう勉強をしたよと教えました。常にいろんな大学名を教えていて、こういう仕事があると話しています。子どもが仕事について自分で知るには限度があります。親が情報を教えて可能性を広げることが大事。可能性をつぶさないことが親の役割。そうすると言葉の使い方が大事になってくるんです」
言葉の使い方が大事とは。
「『勉強しなさい』と子どもに言うと、勉強したくなくなるし、勉強が嫌いになります。人間は自分の行動は自分で決めたいという本能があるからです。どうするかと言うと『国語からやる? 算数から?』と勉強すると決めつけて選択肢を出すんです。すると子どもは『じゃあ、こっちから』と自分で選択することができて、『心理的リアクタンス』がはたらかないんです。強引にやれと言うのではなく、もう決まっているという雰囲気にして習慣づけてしまうことが大事」
もう一つテクニックがあるという。
「自分はできると思わせる。『お母さんは小学時代、そういうテスト得意だったよ。足も速かった』と、実際はそうでもなかったのですが『遺伝的に自分はできるんだ』と思わせています。たまに自分は理系だったから文系は苦手と言うお母さんがいますが、言ってはいけないこと。生まれつき自分は国語が苦手だと思ってしまう可能性があります」
子育てに偏差値29から東大に合格した経験が生かされていることはあるだろうか。
「勉強の習慣作りもそうですが、小学生なので今はとにかく、たくさん失敗しなさいと言うことと、自己肯定感を高めること、たとえば自分が周りから認められているという気持ちにすることを大事にしています。自分はできる。失敗しても大丈夫。失敗しても、またやれば能力は伸びると思わせる。それを積み重ねていくことが大事。1回の失敗で親が落胆するのはよくないです。挑戦することを恐れないようにしてあげることを心掛けています」
中学受験をするか、しないかで悩む親もいるかと思う。
「した方がいいと思っています。高校受験では内申点が重要で、内申点で足切りされることも。私の息子はきっと内申点が低いと思います(笑)。ですから、どこに行けるか分からない不安がある。あとは、中学受験をしておくと自信がつきやすいかなと思います。中学受験のためには学校では教わらない勉強をするので、受験しない子が解けない問題を自分は解ける、できるという自信につながり、自己肯定感を満たすことができます。内申点と自己肯定感を高める意味でも中学受験は挑戦する意味があると考えます。不合格という結果もあるかもしれませんが失敗してもいいという価値観を持たせることも親の大事な役割」
塾以外に習い事を小学時代にやっていた方がいいと思うか。
「夫がそろばんを習っていたので計算がすごく速いです。息子にやらせています。指を動かすと脳がよく働くらしいです。そのせいか東大時代、周りにピアノをやっている人が多かったんです。小さいうちから指をはたらかせるのは脳の働きを良くするにはいいようです」
算数が苦手な子供はどうしたらいいのか。
「算数は暗記科目だと思っています。出る問題がほぼ決まっているので、解き方のパターンをすべて覚えてしまう。まず解き方を覚えてからそれを応用する感じです。実は塾でしか手に入らない問題集というのが何冊かありますが、書いてある問題のパターンはどの塾も大体一緒。この問題はあのパターンだと思い出せばいい。高校受験では、特に過去問をやることは重要。難しい問題の分野、簡単な問題の分野の傾向を把握して効率的な勉強、準備をする。私も東大受験で過去問をすごく研究し、大きな問題の1~3問目を解くために何分かけるか時間も決めていました」
最後に杉山さんは「子どもは自分ではない。親の思うようには動かない」と語った。自身も子育ての難しさを感じている。7月5日には、子どもを動かすうまい言葉の言い回しを書いた著書「東大ママの子どもを伸ばす言葉事典」を発売。子育てに奮闘する親に少しでも役立ちたいという思いを感じる。
□杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、厚生労働省管轄医療財団勤務を経て講演・執筆など医療の啓発活動に努める。主な著書に「鬱姫なっちゃんの闘鬱記」「うつ卒業レシピ」。1児の母。静岡市で「杉山塾」経営。