夏到来。あなたは、蚊に刺されやすいタイプだろうか？ちなみに、人間を刺すのはもっぱらメスで、オスは花の蜜やら草の汁などを吸っているそうだ。メスは卵を産むために栄養を取らなければならないので、哺乳類からの吸血が必要らしい。かつて「レスラーは蚊に刺されない」という都市伝説があった。「レスラーは毎日、硬いマットで受け身を取るから、皮膚が厚く硬くなるので、蚊に刺されない」というものだった。

　現代のように、虫よけスプレーや携帯用蚊取り線香などもない時代、夏には「田園コロシアム」「○○スーパー駐車場特設リング」など、屋外大会が多かった。女性や子どもなど、肌のやわらかい人は狙われやすく、また、蚊はアルコール分に吸い寄せられるので、ビールを飲みながら観戦している男性陣もチクリとやられていた。

　ファンはだいたいが、じっと座って観戦しているのだから、蚊にまとわりつかれやすい。一方で、レスラーは無事。だからなのか「レスラーは蚊に刺されない」という都市伝説が、まことしやかに広まったのだろう。

　しかし、レスラーは蚊と無縁というわけではなく、リング上で動き回っているから、襲われないというのが真相ではないか。新日本プロレス道場は、東京・世田谷区野毛にある。多摩川の土手近くで、自然豊か。緑に囲まれている。当然、蚊も多かった。合宿所でくつろいでいるときには、蚊の餌食になることもある。

　ところが「レスラーは蚊に刺されない」という都市伝説があるのだから「蚊にやられた」と、ポリポリ掻いているのは恥ずかしいというわけか、蚊に血を吸われても、知らん顔を決め込んだ。ただ、かゆみを我慢するのは辛い。昔は、かゆみを与えるという拷問もあったというから、かゆみを我慢するのは、かなりの苦行だ。

　そういうときには「キンカン」の出番。古今東西、虫刺され治療の薬はたくさんあるが、レスラーの間ではキンカンが人気だった。あの独特の匂いでスーッとすることもあったが、キンカンは肩こりや腰痛、筋肉痛などの痛みにも効くからだ。

　本当は蚊に襲撃され、かゆいのに、キンカンであれば「かゆみではなく痛みに対して塗っている」風を装える。「あ～、練習で痛めちゃったなぁ」「昨日の試合はキツかったからなぁ」などと、言い訳のようなひとり言をブツブツ言いながら、キンカンを塗るレスラーが続出していた。

「あくまで虫刺されの薬ではない」とのスタンスを貫くレスラー軍団。そんなこんなでキンカンの消費量はすさまじかった。

　令和のレスラーたちはどうなのか。全日本プロレスの大巨人・石川修司は「めちゃくちゃ刺される」と即答。蚊が大木と間違え、とまったついでに刺すのだろうか。

　デスマッチファイターの宮本裕向は「いつもやられる。今年はまだだけど」とニヤリ。流血で刺されやすいのかと思いきや、ヤンキー二丁拳銃でタッグを組む木高イサミは「蚊は寄って来ない」と真逆だった。

　DDTのHARASHIMAは「あまり刺されない」とニコニコ。花を愛し自然を熟知したHARASHIMAは、おのずと蚊に刺されないような行動を取っているのだろうか。

　大日本プロレスの岡林裕二は蚊に刺されてしまったときは、腕なら腕にグッと力を入れるのだそうだ。そうすると刺した針が抜けなくなって、蚊が飛び立てなくなる。そこを一撃で仕留めるのだという。追い払うだけではなく「やられたらやり返す」というレスラーの意地も発揮していた。

　ノア・金剛の征矢学は「汗かきなので刺されやすいもかも。刺されない金剛のように硬い体を作るようにもっと鍛える」と武骨に答えた。いつ何時でも、そういうところでも「レスラーであろう」というプロ根性は素晴らしい。

　そう言えば、アフリカ出身のレスラーは蚊をとても怖がっていた。「伝染病の危険がある」と、小さな蚊を必死に追い払っていた。

　刺されやすいかどうかは、老若男女の差なのか、血液型なのか、汗っかきなどの体質によるものなのか、人によってかなり異なるようだ。もちろん刺されない越したことはない。

　屋外での試合もある夏。熱中症対策と共に、虫さされ対策も万全にし、楽しく観戦したいものだ。