「日本はeスポーツ後進国ではない」 “仕掛け人”RAGE総合Pが確信持った「VCT」での熱気

タクティカルFPSゲーム「VALORANT」の国内大会「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2」Playoff Finalsが26日、さいたまスーパーアリーナで開催され、「NORTHEPTION」がStage2優勝と世界大会進出を決めた。2日間で約2万6000人を動員する盛り上がりを見せた本大会を主催者側はどう見たのか。「RAGE」(レイジ)総合プロデューサーも務める株式会社CyberZ 執行役員の大友真吾氏に話を聞いた。

RAGEの強みは「総合力」だと語った大友真吾氏【写真:ENCOUNT編集部】
RAGEの強みは「総合力」だと語った大友真吾氏【写真:ENCOUNT編集部】

「RAGE」総合プロデューサー・大友真吾氏インタビュー

 タクティカルFPSゲーム「VALORANT」の国内大会「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2」Playoff Finalsが26日、さいたまスーパーアリーナで開催され、「NORTHEPTION」がStage2優勝と世界大会進出を決めた。2日間で約2万6000人を動員する盛り上がりを見せた本大会を主催者側はどう見たのか。「RAGE」(レイジ)総合プロデューサーも務める株式会社CyberZ 執行役員の大友真吾氏に話を聞いた。(取材・文=石井宗一朗)

 2日間の合計で約2万6000人の動員、ライブ配信の同時接続者数50万人超を記録。数字上でも日本eスポーツ界の歴史に残る記録を残した本大会に、大友氏は「やると決めてからかなり短期間での実施だった」と明かす。

 eスポーツの大会を見るために駆けつけた観客で、25日、26日と2日間続けて満員となったさいたまスーパーアリーナの光景には「本当に数年前だったら考えられない」と驚きつつも、「日本はeスポーツ後進国だと良く言われますが、決してそんなことはないっていうのは、見ていただいた方には伝わったのではないでしょうか。日本のeスポーツの力、すさまじい熱気を、日本のみならず世界に対しても発信できたイベントになったんじゃないかなと思います」と成功への実感を語った。

 大友氏自身、一ユーザーとして観客席からも観戦し、そのすさまじい熱気を肌で感じた。「地鳴りが起こるようなスティックバルーンの音だったり、時折もれる歓声みたいなところは本当に感動しました」。

 本大会を含め、さまざまイベント開催してきた「RAGE」。もともとは2015年に、日本eスポーツの発展のため、eスポーツ大会ブランド(大会名)として誕生した。当時からeスポーツの大会、「RAGE」のような団体は存在していたが、今ほどeスポーツがメジャーではなかった。

 しかし、大友氏は海外での盛り上がり、日本のゲームユーザーの多さから国内におけるeスポーツのポテンシャルを十分に感じていた。「今からしっかりとしたeスポーツの大会ブランドを作っておけば、今後の市場拡大が間違いなくできるんじゃないかと考え、立ち上げたのが背景です」。

「RAGE」はCyberZ、エイベックス・エンタテインメント、テレビ朝日の3社による協業事業。各社の強みを生かしながら運営されている。「エイベックスさんは、いろんな興行イベント、演出周りが得意なライブエンタメの長とも言える企業さん。テレビ朝日さんはもちろんテレビという大きな出面をお持ちで、PR力といったところでお力添えいただいています。それを我々CyberZが、15年からやってきた基盤というか、ブラッシュアップしていく形で、eスポーツの大会やイベントを開催させていただいています」。

 しかし、「RAGE」はゲームメーカーではないため、タイトルホルダーの協力も必要不可欠となる。「基本的にはタイトルホルダーさんからタイトルをお借りして、許諾をもらって興行ビジネスをやらせていただいています」。15年から活動していることもあり、扱ってきた累計タイトル数は30ほどにものぼる。本大会の「VALORANT」も、リリース直後から開発元の「Riot Games」とはパートナーとしてともに歩んできた。

 そんな「RAGE」の強みは、3社の特性を結集させた「総合力」にある。「それぞれ異なる強みを持っていて、僕らで言うと15年からやっているので、業界の中では比較的、実績を積んできている自負もあります。スポンサー企業さんへの営業だったり、基本的な機能は全て我々の方にある状態。そこにエイベックスさんのPR・制作力、テレビ朝日さんの地上波の力、そのあたりの総合力がほかにはない強みかなと思います」。

2日間で約2万6000人を動員した「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2」Playoff Finals【写真:ENCOUNT編集部】
2日間で約2万6000人を動員した「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2」Playoff Finals【写真:ENCOUNT編集部】

プロ選手の「一握りしか十分な収入が得られていない」と課題も

 ここ数年、eスポーツの急激な発展も実感している。「eスポーツに触れる機会だったり、それを見る機会がこの2年ぐらいですごく増えた」といい、要因の1つとしてYouTuberやストリーマーといったインフルエンサーの存在を挙げた。

「もしかしたら自分がeスポーツをやっているという自覚はないかもしれないですけど、タレントさんも含め、そういった方々が、今はやっているコンテンツのゲーム実況だったり、配信をやっていることが、この2年で急激に増えました。それがきっかけで今までeスポーツの大会を見たことがない方が競技シーンを知ったり、大会とかを見に行くようになったり……そこが急速に拡大したのがここ2年ぐらいだと思います」

 今や国内eスポーツを語る上で欠かせない存在となった「RAGE」。今後さらなる成長をとげるためには「ゲームメーカーさんと一蓮托生でeスポーツの大会だったり、興行イベントをやっていくことがすごく重要」と明かす。

「5月のRAGE VAROLANT、今回のVCT(VALORANT Champions Tour)というイベントを開催させていただけたというのは、もちろんタイトルホルダーさんありき。ご協力なくしてはできないので、そこの関係性だったり、同じ方向を向きながらやっていくことが、すごく大事なんじゃないかなと思います」

 また、eスポーツ業界全体の課題として「現状プロ選手、プロシーンの方々の一握りしか十分な収入が得られていない」ことを挙げ、この状況を打破するためにはeスポーツにおける大きな経済圏を作っていくことが重要だと語った。

「eスポーツを見る人、会場に足を運んでくれる人が増えることによって、ほかのエンタメ産業、スポーツ産業と同じように、健全にお金が回る状態をしっかり作っていきたい。プロ選手のセカンドキャリアを担保するという意味でもそうですし、今後、このような大会が各地でいろんなタイトルで行われる、そういった経済圏を作ることが必要だと思っています」

 eスポーツ史に残る大成功を収めた今大会。大友氏は「RAGE」の今後について「引き続き大規模なeスポーツのイベントを行っていく」と明言。競技寄りの大会はもちろんのこと、さまざまな人に楽しんでもらえるよう、いろいろな形式のリアルイベント開催に意欲を示した。

「日本発で、世界に対してもインパクトのあるようなイベントを仕掛けていきたい」。急激な成長を見せているeスポーツ業界。今後も最前線を走る「RAGE」の“仕掛け”に注目したい。

□RAGE(レイジ) オフラインイベント、プロリーグを運営するeスポーツブランド。2015年にスタートし、次世代スポーツ競技「eスポーツ」にさまざまなエンターテインメント性を掛け合わせた、株式会社CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社と株式会社テレビ朝日の3社で協業し運営するeスポーツイベントおよび、eスポーツリーグの総称。来場数・視聴数ともに日本最大級のeスポーツイベントとなっている。

□大友真吾(おおとも・しんご) 中央大学卒業後、2007年度サイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部配属となり、翌年マネジャーに昇格。2009年より株式会社CyberZ立ち上げメンバーとして、執行役員に就任し、営業担当役員を経て、現在はeスポーツ事業管轄 取締役として、RAGE総合プロデューサーや「PLAYHERA JAPAN」代表取締役社長を務める。

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