開成高が東大“理三”合格者数を減らした理由 過剰な医学部ブームに転換期か

難関高校の大学合格者数の中で毎年注目を集めるのが東京大学理科三類(医学部医学科進学コース)の合格者数だ。国内最高難易度を誇る難関中の難関で、合格者は“天才”とも称される。しかし、今春の理三合格者数にある異変が起きていた。41年連続で東大合格者数トップに立った開成高。22年の合格者数は前年比34%増の193人と大躍進する一方で、最難関の東大理三合格者数は21年の10人から22年は6人と減少した。私学女子ナンバー1の桜蔭高の東大合格者数は全国6位の77人。そのうち理三は13人で、灘高の10人、筑波大学附属駒場の6人、開成の6人を抑えて圧倒的トップに立った。

東大理三合格者数を減らした開成高校【写真:ENCOUNT編集部】
東大理三合格者数を減らした開成高校【写真:ENCOUNT編集部】

早慶目指す受験生あ然 凄まじい“早慶蹴り”は相変わらず

 難関高校の大学合格者数の中で毎年注目を集めるのが東京大学理科三類(医学部医学科進学コース)の合格者数だ。国内最高難易度を誇る難関中の難関で、合格者は“天才”とも称される。しかし、今春の理三合格者数にある異変が起きていた。41年連続で東大合格者数トップに立った開成高。22年の合格者数は前年比34%増の193人と大躍進する一方で、最難関の東大理三合格者数は21年の10人から22年は6人と減少した。私学女子ナンバー1の桜蔭高の東大合格者数は全国6位の77人。そのうち理三は13人で、灘高の10人、筑波大学附属駒場の6人、開成の6人を抑えて圧倒的トップに立った。

 開成はなぜ東大理三合格者数を減らしたのか? 有名予備校講師がこう言う。「22年の開成高の卒業者数は約400人で、桜蔭高は約230人。合格率では桜蔭高が圧倒しています。この数字だけを見れば、桜蔭の“すごさ”が分かりますが、開成高の成績トップクラスが必ずしも理三を目指すわけではありません。大学入試模試のトップクラスの中には理三合格圏内に入っていても東大の理科一類(工学部、理学部進学コース)を志望する学生もいます。激務で薄給の医師になるよりAI(人口知能)の分野に進んで将来の起業を目指す学生も増えていると聞きます」。

 医学部離れが起きている理由の1つとして考えられているのが将来の医師余りだ。厚労省が今年1月に発表した「医師需給分科会第5次中間とりまとめ(案)」では、「令和11年頃に需給が均衡し、その後人口減少に伴い将来的には医師需要が減少局面になるため、今後の医師の増加のペースについては見直しが必要である」と報告している。こうしたことがこれまでの過剰なほどの医学部ブームに転換を迫っている。

 とは言え、難易度では東大理科一類、二類に並ぶ国公立大学の医学部志望者が一定数はいるようだ。開成進路委員会が5月に公開した大学入試結果によると、21年の東京医科歯科大医学部の合格者数は10人だったが、22年は13人に増えている。また、千葉大医学部も同様に10人から14人に増加。さらには21年は中国、九州地方の国立医学部合格者がいなかったが、22年は島根大医に2人、佐賀大医、熊本大医に1人ずつ合格者を出している。先の予備校講師は「22年の共通テストが難化したため、東大理三を目指していた層がランクを落とした可能性があります。共通テストで得点が思うように伸びなかった受験生が医学部合格を確実にするため地方の国公立大学医学部に回ったのでしょうが、島根大医学部の前期日程実質倍率は21年の5.4倍から22年は6.1倍へ、同じく熊本大は3.3倍から4.2倍とかえって狭き門になりました。選抜方法が複雑なので一概には言えませんが、当初の目標を変えない、という信念も大切かもしれません」

 一方、激しい“早慶蹴り”で知られる開成高だが、22年はどうだったのか。早稲田大は244人(21年213人)が合格して進学者数は34人。看板の政経学部は54人が合格し進学したのは10人。慶応大は209人(同173人)が合格して46人が進学。超難関の医学部は18人が合格したが、進学者数はわずか3人だった。同校OBがこう話す。「学校側から東大を目指しなさいと言われたことは1度もありませんが、それでも学校全体の雰囲気が東大進学という風向きになっているのは確か。私学最難関の早慶を蹴って再度、東大を目指すという学生も多いのでは」。実際、21年の東大合格者数に占める同校OB(浪人生)は39人だったが、22年は56人と増えている。来年の東大合格者数と理三合格者数の行方が注目される。

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