今井翼「僕でいいのかとずいぶん悩んだ」 感じた“hideの弟”を演じる重みと覚悟

芸能活動を再開してから約2年。俳優・今井翼(40)は、マイペースに歩んできた時間で「自分のサイズを知った」と振り返る。初の主演映画では、1998年5月に急逝したカリスマミュージシャン・hideの弟を熱演。クランクイン前にhideの墓参りをし、覚悟を決めて撮影に臨んだという。

覚悟を決めて撮影に臨んだと語った今井翼【写真:小黒冴夏】
覚悟を決めて撮影に臨んだと語った今井翼【写真:小黒冴夏】

病で止めた歩み、「立ち止まったことで自分のサイズを知った」

 芸能活動を再開してから約2年。俳優・今井翼(40)は、マイペースに歩んできた時間で「自分のサイズを知った」と振り返る。初の主演映画では、1998年5月に急逝したカリスマミュージシャン・hideの弟を熱演。クランクイン前にhideの墓参りをし、覚悟を決めて撮影に臨んだという。(取材・文=西村綾乃)

 7月8日に公開される映画「TELL ME ~hideと見た景色~」は、hideの弟でパーソナルマネージャーを務めた松本裕士氏が上梓した小説「兄弟 追憶のhide」(講談社文庫刊)が原作。映画では、ロックバンド「X JAPAN」のギタリストとして、ソロアーティストとして活躍したhideの生涯と、本人不在の中でアルバムを完成させようと奮起する仲間の姿を追いかけている。

「僕がXを知ったのは小学校の時。YOSHIKIさんが刻むドラムにロックの破壊力を感じ、奏でる美しいピアノの音に心をつかまれ、ロックに魅了されました。hideさんはファッションも魅力的で、かっこ良かった。中学の生徒手帳の中に、X JAPANの写真を忍ばせていたこともあったので、お話をいただいた時は、とてもうれしかったのですが、僕でいいのかなとずいぶん悩みました」

 hideが旅立った1998年5月2日は、16歳だった。当時の報道をどう見ていたのだろうか。

「hideさんの訃報は、驚きと悲しみで見つめていました。映画の中でも触れていますが、告別式まで連日報道されていて、社会現象として大きな注目を集めていましたよね。16歳だった僕は、素晴らしい才能を持っている人が旅立ってしまった。『何でだよ』という思いがありました」

 映画には幼少期の写真のほか、hideの愛車・ダイムラー ダブルシックスも登場。hide with Spread Beaverのメンバーが、本人不在の中でアルバム「Ja,Zoo」を制作していく過程ではhideの歌声が流れる場面もある。終盤はライブ映像も盛り込まれており、hideの息吹を感じることが出来る。

「hideさんの曲はスマートフォンに入れているので、今でもよく聴いています。撮影の前には改めて楽曲を振り返る時間がありました。Xの『Joker』や『SCARS』からも感じられるhideさんのサウンドは目を見張るものがありました。突然の別れから24年もの月日が経ったいまも、新しいファンが生まれている。色あせない音楽やファッションは、唯一無二のカリスマと感じます。映画を通してhideさんやその音楽の魅力を感じてもらえたらうれしいです」

 映画では、hideさんの弟・裕士を演じた今井。hideと一緒に楽曲を制作していた共同プロデューサー・I.N.A.(稲田)役の塚本高史と、二人三脚で撮影に臨んだという。

「海辺で稲田さんと語り合う場面があります。ここは幼い時に裕士さんがお兄ちゃんに連れて行ってもらった思い出の場所。お兄ちゃんから『海の向こうに何が見える?』と言われてキョトンとするのですが、大人になった裕士さんは、hideさんと同じ言葉を誇らしげに口にします。僕はこのシーンが大好き。役者としてたくさんの経験を持つ高史くんとは、hideさんと稲田さん、裕士さんと稲田さんの関係のように信頼し合って作品作りに取り組むことができました」

今井翼「hideさんが残したものを守りたい」【写真:小黒冴夏】
今井翼「hideさんが残したものを守りたい」【写真:小黒冴夏】

「その繊細な思いをどう表現するのかということ」

「hideさんが残したものを守りたい」。実在の人物を演じる中で、配慮したことはどのようなことだったのだろうか。

「亡くなる数時間前までhideさんと行動を共にしていた裕士さんは、『あの時こうしていれば……』などたくさんの後悔を抱えています。大切な存在を亡くしてどうすればいいか分からない、その繊細な思いをどう表現するのかということ、そして失ったことで気が付いたことに目を向けていきました。裕士さんは、お兄ちゃんという大切な存在を失い、残した音楽を大切に思った。兄が作った音楽、hideという存在を絶対に守り抜くんだという強い気持ちが、喪失から立ち上がる力になったんですよね」

 デビューから23年間。第一線で駆け抜けた今井は休養のために約1年半、その歩みを止めた。今井自身を立ち上がらせたものとは――。

「病なんて経験しない方がいいと思うけれど、一度立ち止まったことで、自分自身と向き合うことができました。僕はずっと自分に自信を持てずにいました。でもそんな自分にも、ファンの人など支えてくれる人がいて。つらい時期は、その声に支えられました。40歳のいまは、表現者としてバリバリやって行きたい。どの作品にも納得がいくコンディションで臨めるように、自分のサイズを知り、どう取り組んでいくのか、心の配分も大切だと考えています」

□今井翼(いまい・つばさ)1981年10月17日、神奈川県生まれ。歌手、俳優、タレントとしてテレビや舞台など多彩なジャンルで活躍している。休業期間を経て、20年2月にシスティーナ歌舞伎「NOBUNAGA」で活動を再開した。横浜DeNAベイスターズの大ファン。旅行や料理が趣味。特技はフラメンコで、12年にスペイン文化特使に就任している。173センチ、A型。

スタイリスト:渡邊奈央(Creative GUILD)
ヘアメイク:中谷圭子(AVGVST)

次のページへ (2/2) 【写真】初主演映画で演じたのは“hideの弟” 今井翼のインタビュー別カット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください