全日本プロレスが熱い 「HARD ON FIGHT」野村直矢の殴り込みでさまざまな遺恨勃発

古巣の全日本プロレスに殴り込んだ「HARD ON FIGHT」野村直矢に注目が集まっている。実際には2019年末で全日本を退団していたものの、負傷により長期欠場。発表のタイミングを逃していた野村は、21年末に復帰し「けじめの退団マッチ」を行った。

Uターン参戦した全日本プロレスに爆弾を落とし続ける野村直矢【写真:柴田惣一】
Uターン参戦した全日本プロレスに爆弾を落とし続ける野村直矢【写真:柴田惣一】

柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.100】

 古巣の全日本プロレスに殴り込んだ「HARD ON FIGHT」野村直矢に注目が集まっている。実際には2019年末で全日本を退団していたものの、負傷により長期欠場。発表のタイミングを逃していた野村は、21年末に復帰し「けじめの退団マッチ」を行った。

 その半年後、かつてコンビを組んでいた青柳優馬に挑発され、最初は無視を決め込んでいたが、あまりの執拗さについに行動開始。6・6神奈川・新百合ヶ丘大会にユニット「REAL BLOOD」を組むガンバレ☆プロレスの渡瀬瑞基と共に乱入した。

 ところがケンもホロロに追い返され「お前が呼んだから来たんだろ! ふざけんな!」と怒り心頭。6・19東京・大田区大会での対戦を要求したが「もうカードが決まっている」と出鼻をくじかれてしまった。

 そこで、かみついてきた大森北斗とのシングルマッチに臨んだ。北斗はもう野村の知っている若手の北斗ではなかった。体も大きくなったが態度も大きくなっていた。ビッグマウスで生意気になっており「2年間もずーっと休んで、それで1試合だけして退団って何なんだ。ムカつく。お前なんかいらねーんだよ」などと、これまたかなりの“口撃”を仕掛けてきた。

 プロレスラーは誰でも怪我のリスクをかかえている。好きで休んでいた訳ではないのだが「のんびり過ごしていたかのような言い草をされた」と野村は激怒。野村が欠場中も続けていた携帯サイトの日記について、北斗は同じサイトの自分の日記で、おちょくるように小バカにしていた。

 野村が北斗のちょっかいを腹に据えかねたのは間違いない、ねじ伏せるような激しい試合で北斗を一蹴。「勝って当たり前。こんなの通過点。俺は覚悟を持って戻ってきた。もっと強いヤツ用意しろ! 俺が全員ぶっ潰してやる」と怒りは次のステップへ進んだ。

 青柳は19年、2人で保持していたアジアタッグのベルトを、野村が「返上する」と言い出したときから「頭おかしいんじゃないかと思う。邪魔してやる」などと公言し、陰湿の片りんを披露していた。

 その後も陰湿さがチラチラと見え隠れはしていたが、200%全開したのは20年の最強タッグに優勝した時だ。破ったジェイク・リーを、リング上で「ザマーみろ!」と罵倒したのだ。

 しかも選手本人のみならず「ジェイクのファン、ザマーみろ!」と客席のファンをもののしった。恥ずかしさからタオルやうちわなどの応援グッズで顔を隠すファンには「不細工な顔を見せてみろ」とまで、ためらいなく言い放った。まさにダメ押しの念押し。

 明るく楽しいハズの王道マットでの異例な発言。青柳のタッグパートナー、宮原健斗は困惑しきっていた。宮原が「青柳は陰湿」と口にして、陰湿レスラーが誕生した。

 野村には「地下室のチャンピオン、地上に出て来い」と「地下室」と連呼した。野村が王者となった北原光騎が主宰するキャプチャー・インターナショナルは、東京・王子のベースメントモンスターを“聖地”としている。

 確かに地下にある会場だが、雰囲気がある。ファンの支持も大きいのに、蔑んだような言い方を繰り返し、野村ファンの激しい怒りを集めている。また、他にもさまざまな団体が使用しており、その団体のファンの反感も買っている。

 だが、青柳の今までの言動は、きわどい陰湿発言を執拗に繰り返すことで、他者のファンにヒートされ、それを糧に自分自身を奮い立たせているのかも知れない。後戻りできないように自分で自分を追い込んでいるのだろうか。だとすれば、かなり高等な自己啓発だ。

 若手の頃から青柳は全日本のパンフレットに年に複数回、巻頭特集を組まれ、かなり期待されてきた。なかなか結果も出せずにいたが、陰湿全開にしたことで花開いた。今年のチャンピオンカーニバルに最年少での優勝も果たしている。

 ところが6・19決戦で、近藤修司に敗北。野村に「青柳優馬に興味がなくなった」と突き放され、ジェイク、宮原が次のターゲットだとフラれてしまった。しかし「何がREAL BLOODだ。こっちはREALなBLOODなんだよ」と強調。実弟の亮生と兄弟タッグを組み、急転直下、野村、渡瀬瑞基組VS青柳兄弟組が7・14東京・後楽園ホール大会で決定した。野村と兄の優馬は7か月ぶりの再会対決となる。また、奇襲攻撃を仕掛けたものの完敗してしまった大森北斗は、キャプチャー7・29王子大会へ乗り込む。今後の抗争の行方が気になるところ。

 旅立った者、残った者。それぞれの訳、それぞれの思惑が交錯する。残った選手には生え抜きの意地もあるだろう。だが、全日本は大量離脱で所属選手が渕正信と川田利明の2人にまで減ったことや、外から来た選手が社長まで務め、そして去って行った歴史もあり、出入りの激しい団体だ。「全日がドロドロして来た」という見方も強まっている。そのドロドロにもつれた感情がリング上で爆発すれば、きわめて激しい試合になるだろう。互いにモヤモヤしたモノを体にため込んでいる。決着は望むところ。主義主張は違えども「リング上で決着をつけよう!」。これは一致しているだろう。

 青柳、北斗、そしてその先へ。王道戦士が勝つのか、はたまた「直矢」の名前の通り、真っすぐな矢が古巣の全日本を射抜くのか。お互いの意地、覚悟、感情が大爆発する対戦が今から楽しみだ。

次のページへ (2/2) 【写真】キャプチャーを主宰する北原光騎と北原を慕う野村直矢の2ショット
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